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第06話 風の帝国・防衛譚 後編

 純粋な闇は征服者・フヴェルゲルミルにの体に命中、敵のあらゆる部位を破壊し、圧殺しかけたが――。



小癪(こしゃく)なァ!! むぅぅぅん!!!!!』



 気合と根性だけで俺の闇を振り払い、なんと、あのアーマーの破損だけで済んでいた。……クソ、悪趣味な鎧だけか。なんて防御力だよ。ふざけてる!


『……フフフフフ、お前の闇は極上だった。

 我が最高の防具、エクサダイトアーマーを一撃で破壊したのだからな。だが、それだけのこと。鎧の破壊だけに留まったのは、貴様に恐れがあったからだ』


「恐れだと……」


『……そうだ、この国を破壊してしまうかもという恐れだ。だから貴様は100%の力は出せなかった。やはり、邪魔(・・)なのだよ。このつまらぬ国も、そのか弱き聖女もな。つまり、貴様の最高の力を引き出すには全てを消し去る必要があるということだ。……さァ、となると……その聖女ごと国を消す必要がありそうだな』


 フヴェルゲルミルは、その恐ろしい赤い眼でゼファを(にら)んだ。


「………………ぁ」


 すると、ゼファは苦しそうに――いや、呼吸困難に(おちい)っている。


「ゼファ!! ま、まさか……これは魔眼(・・)か!!」


『そうだ。今更気づいたのか勇者よ。我が魔眼は『死の呪い』……数多(あまた)の死が聖女を呪い、苦しませたうえで絶命させよう。……実に人道的だと思わぬか』



「…………フヴェルゲルミル、お前はそうやって他の国も襲ったのか」



『そうだ、余にとって懊悩煩悶(おうのうはんもん)こそがこそ最高の糧となるのだ。人間は必ず苦痛を感じ、苦悩する生物。(おろ)かよ、そんな負の感情が余という存在を作り上げ、これだけの最強にしたのだ。そして、もう間もなく聖女も死ぬ』



「それはどうかな」

『なんだと……』



 俺は瞬時に、ヤツの背後に立った。



『貴様、いつの間に……!!!』



 敵の後頭部を指先の握力だけで締め上げ、逃げられないようにした。



「よく見てみろよ」

『…………がぁぁ、貴様にこんな力が…………む!?』



 あんなに苦しんでいたゼファは『死の呪い』を克服(こくふく)し、今は堂々(どうどう)としていた。



『な、なぜだ!! なぜ死なぬ!! 普通の人間なら三秒と持ちまい!!!』

「俺は()だからな……いつだって辛かった。でも、そんな痛みを彼女が理解し、癒して、支えてくれた。だから、俺にとってかげないのない存在だ。ゼファがいなかったら俺は今頃闇に飲まれていただろう」


『そ、それがどうしたというのだ! なんの関係がある!!』


「まあ分からねぇだろな。他人の痛みを理解できないお前ではな……!」


 フヴェルゲルミルの頭をそのまま地面へ押し付け、大地を(えぐ)った。そこから巨体を空へ投げ飛ばし――魔剣・エクスカイザーを生成、超強力なダークエンチャントを付与したうえで投擲(とうてき)した。



『おのれぇ――――――――――ッ!!!!!』



 宙で藻掻(もが)きながらも、フヴェルゲルミルは俺の魔剣を素手で受け止めた。なんてヤツ……だが、付与した闇が広がって急速に膨張(ぼうちょう)。剣が大爆発を起こした。


『バカな……剣が爆発を……ォ!? ふはは、面白い。実に面白い仕掛けだったが、所詮(しょせん)はそれだけのことだ……!!』

「くっ、あれでもダメか!」



『お遊びはここまでだ勇者。……ハァッ!!!』



 グンっと、ヤツの周囲に七つのエネルギーの塊が浮かんだ。

 なんだ、あれは。


『この七つは苦痛(くつう)辛酸(しんさん)困窮(こんきゅう)苦悶(くもん)倒懸(とうけん)悩乱(のうらん)苦患(くげん)の苦しみよ。さあ、受けるがいい……最大の苦しみを!!』


「なっ……! もう目の前に……!」



『――――――――ファントムペイン!!!!!!』



「ぐああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!」



 なんて痛みだ。

 今までで感じたことのない肉体的・精神的ダメージ。両方のすべての苦しみが襲い掛かってきた。



「…………がぁっ……うあぁぁぁぁ、ぎゃあああああああ!!!!」



 こ、これが……ヤツの力。

 た、耐えきれない…………!!



『勇者もこの苦痛には耐えられまい。そう、例えそれが闇だとしてもだ……む!? 聖女、貴様……なにをする気だ』


「……ユメ様の苦しみは、わたくしが取り除いて差し上げます」


『余計な真似をするな、邪魔者がッ!!!! ぬわああああああああああああ!! ……なんだと、この余が人間に触れられぬだと!?』


「グロリアスアブソリュート。この力は人々の苦痛が最大限に高まった時に発動できる、聖なる癒しを(もたら)す力です。悪しき心を持つ者には神の裁きを――」



『ふざけるな、たかが女がああああああああああッ!!!』



「グロリアスホーリークロス……!」



『なっ…………どわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッッ!!!!!!!!!!』



 ……気づけば、神々(こうごう)しい光がフヴェルゲルミルを押していた。

 これは、ゼファの――聖女の力。



「ありがとう、ゼファ。おかげで痛みは癒えた……!」

「良かったです……わたくしはこれくらいしか出来ませんから……」

「十分だ! あとは俺に任せろ!」

「はいっ」



 さて、ヤツは――神の裁きを耐えている。

 なんてヤツだ。あの光は普通の幹部なら、一撃で(ほふ)られるレベルのスキルだぞ。それをあのフヴェルゲルミルは両手で押さえていた。



『…………ググ、グガガガガガガガガガガガガガァ!!!』



 ならば、俺は!!!




『ライスナー・ノルドシュトルム・ブラックホール――――!!!!!!!!!!!!』



 究極にして最強の闇スキル。

 すべてを無に帰す常闇、そして、原始へと(いざな)う終わりの始まり。



『…………なんだ、なんだこの闇は!? 違う、これは闇なんかではない……それを遥に凌駕(りょうが)する何か(・・)だ……!!! お前なんだ、何者なんだ!!! こんな力を持つ人間がいるはずがない……ありえん、ありえんぞぉぉぉおォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアエエゲゲババババババアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!』



 ・

 ・

 ・



「言っただろう……俺はただの闇だって」

「……お疲れ様です。よかったご無事で」

「……ああ。最期(さいご)にゼファを守れて良かった」

「さ、最期って……そんなユメ様、お身体(からだ)が!!」


「すまん。膨大な力を使ってしまったせいで、闇に飲まれて(・・・・)しまった……不甲斐(ふがい)ない。でも、ゼファに看取(みと)って貰えるのなら、こんなに幸せなことはない。どうせなら……フォースやネーブルにも一緒にいて欲しかったな。それだけが()いだ」


「いや…………嫌です!!! ユメ様がいない世界なんて、そんなの嫌!! わたくしは、あなたがいないとダメなんです……! だって、わたくしはあなたを愛していますから……」


「…………ああ、知っていたさ。ありがとう」


 腕が消えていく。足もだ。

 ただ冷たく、死を迎えるようだ。


「ダメ……消えてはいけません、ユメ様…………」



 聖女に抱かれて死ねる。……幸せな人生だったな。……もう眠い。闇に堕ちよう。この穏やかな死に全てを委ね、虚無へ。



「……させません。あなたを(ひと)りには決してさせません。死ぬときは一緒です。ですからグロリアスサクリファイス……!」



 ゼファの体が白く輝く。

 それは魂の輝き。つまり、自身の魂を生贄(・・)に捧げる献身(けんしん)スキルだ。でも、そんなことをしたら!!


「ダメだ!! ゼファが死んでしまう!!」

「大丈夫です。魂の半分を捧げるだけですから……ユメ様の中にわたくしの想いが未来永劫残るというのなら、喜んで差し出します」



 そう強い意志でゼファは俺の顔に触れて、魂を付与した。



「…………すまない」

「いいのですよ。わたくしはユメ様のもの。あなたがいなくなってしまっては、存在理由がなくなってしまう」


 それほどまでにゼファは俺を(した)ってくれている。

 ならば、この胸に宿る半分の魂を……想いを無駄にしないためにも……。


 コントロールしろ、俺。闇は常に俺の隙を伺ってきている。(むさぼ)ろうと必死に足掻き、食らいつこうとしてくる。これ以上、魂を喰わせるな。

 しかし、意外なことに闇は収束を見せていた。


「こ、これは……ゼファの魂が反応して……」


 そう。

 聖女の力は、いや、魂は万能だった。


 半分(・・)だったおかげで、バランスを導いた。


 これが少しでも一方に(かたむ)いていたのなら、きっと元には戻れなかっただろう。……そうか、これもまたソウルフォースの一種なのだ。



 誰しもが持つ魂の力。


 ソウルフォース。


 ゼファのスキルも、きっとその一部だったのかもしれない。



 ◆



「勇者、ユメよ、お主の素晴らしい活躍、この目でしかと見させてもらった」


 風の帝王・エレイソンはどうやら、遠くから俺たちの戦況を見守っていたようだ。なるほど、呼び出しただけあり状況を把握していたってことか。


「しかし、俺は一部を守りきれませんでした。処分は如何様(いかよう)にも」

「確かに被害はあった。しかし、国の滅亡は(まぬが)れたのだ……お主には感謝している。この通りだ、ありがとう」


 帝王は感謝を述べた。

 ……俺は、帝王も、この国も大好きだ。



 ◆



 今回の報酬に『邸宅(いえ)』を戴いた。俺の邸宅だ。


「こりゃでけぇな」

「すごいです、ユメ様。今までの普通の家とはまるで違いますね」


 二人で感激していると、肩に重みを感じた。


「おっと!? ……あれ、フォース。いつの間に帰ってきたんだ」


 顔を見たかったので、肩から降ろした。


「ただいま。今里から帰ってきた」

「そっか。おかえり。そうそう、フォース」

「?」

「ここが新しい家だぞ」

「え……ほんと!? こんなに広い家に住めるの~?」

「ああ、これからは此処(ここ)が俺たちの家だよ」


 フォースの瞳は星のように輝いていた。

 うむ、気に入ったらしい。


「おーい! ユメ、ゼファ、フォース~~~!」

「この声は……ネーブル!」


 振り向くとネーブルがギルドから戻って来ていた。


「やっと解放されたのか」

「うん、やっとだよ。疲れたー…シャワー浴びたい……って、なにこの家!? 家、こんなにデカかったっけ!?」

「俺たちの家だ」


「俺たちの家って……豪邸じゃん…………」


 あんぐりするネーブルは、混乱して言葉に詰まった。

 ま、当然の反応だわな。



「とにかく、みんな! これからは、風の帝国(キリエ)を拠点とする。つーか、故郷とする! ずっと住もう」


 ゼファはうんうんと(うなず)き「大賛成です!」と。フォースは「あたしも~、こんな広い家なら最高」と。それから、呆然としていたネーブルはニカッと笑うと「最高じゃないっ!」と笑った。よしよし、死にかけてでも防衛した甲斐(かい)があったな!




 ――――気づくと、みんな、最高の笑顔で俺に飛びついていた。




 生きてるっていいなぁ。

 これにて番外編は終わりです。


 後編が長くなってしまいましたが、気合を入れて書いていたらボリュームアップしてしまいました。最後の予定なのでご愛嬌ということで。


 皆様の応援のおかげです。

 ここまでお読み戴き誠にありがとうございました。

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