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第05話 風の帝国・防衛譚 中編

 空・陸の両方からモンスターが波となって押し寄せていた。

 そこら中に黒い影が(うごめ)いている。


「一万……? ウソだろ……三万(・・)はいるぞ!」

「これはいったい……」


 俺もだが、ゼファも心底驚いた。

 どうやら、一万というのは嘘っぱち。本当は三万規模だったのだ。あの長男め、よくも! しかも、魔王の大幹部らしき気配が四つ(・・)も。


「いよいよこの国を滅ぼす覚悟ってことか。――ふ、面白れぇ。ゼファ、聖域展開を頼む。国への侵入を許すな」

「分かりました。お任せくださいっ」


 ゼファは目を(つむ)り、侵攻してくるモンスターの方角へ手を向けた。体が白く輝き始めると聖女スキルを発動した。



『グロリアスサンクチュアリ!!』



 絶対聖域が瞬く間に広がるや、風の帝国(キリエ)全体が不思議なバリアに(おお)われた。これは、敵の侵入を絶対に許さない聖域なのである。

 けれど、雑魚モンスターはともかく、大幹部クラスともなると、たまに突破してくるヤツもいるので気は抜けない。だが、今が大チャンスに変わりはない。


「ひとまず……雑魚共は消えやがれ……!」


 俺は、投球モーションで『闇』をブン投げた。

 ストレートで飛んでいく小さき闇は、空で花火のように弾けるや……ダークエネルギーを拡散させた。



『特大のダーク・ヘルズ・ディメンション――――――!!!!!!!!』



 更に闇スキルを発動し、敵軍三万に向けて次元断裂攻撃をコンボさせ、モンスターをスパッと気持ちいほどに裁断していった。


「よし、とりあえず雑魚は消えた。あとは大幹部を……」


 空に飛んでいるデカイのがそうだろう。

 さっそく天誅(てんちゅう)を下してやろうと思ったのだが――。



「……ま、まて小僧!!」



 パーカー家の大貴族が俺に、背後から抱きついてきた。



「なんだ、鬱陶(うっとう)しい。てか、あんたまだいたのかよ。危ないから離れてろよ……」

「ふふふふふふ……離れるぅ!? 馬鹿が。私はキミの動きを止めているのだよ。こう抱きつかれていては、まともに戦えまい……!!!」


「まさか、あんたも!!」


「そうだ、パーカー家は大幹部と取引した。この国を滅ぼした(あかつき)には、私を王にしてもらえるとな……だからだ!! だから、シーカー家と示し合わせ、お前を狙ってやったのさ……だが、シーカー家の長男は聖女にご執心のようだったのでな……。まるで役に立たなかったが……しかし、もうそんな事はどうでもいい!! お前だ、勇者お前を殺してやる!!!」



「……この、裏切者があああああああ!!!」



「なんとでも言え!! それより、さあ、大幹部様のご登場だぞ……!」


「なっ……」

「申し訳ありません、ユメ様。やはり、あの強さとなるとわたくしの聖域では……」


 謝るゼファだが、仕方ない。

 それでも突破してきたのは四人中一人だ。



『よくぞやった、パーカー家の貴族よ』

「おぉ…………あなた様は魔王の右腕……征服者・フヴェルゲルミル様ではありませぬかっ。私にこの国を任せて戴けるとは、大変光栄でございます……!」


「ヤツが……魔王の右腕だと!?」


 マジか。あのワケの分からん超ゴツイ金黒プレートアーマーが……!

 確かに、やべぇ気配を感じるが。


『しかしだ。……パーカー。貴様は余の命じた時間に間に合わせなかった……よって、粛清(しゅくせい)する』


「…………は? ままままま、待ってください!! そんな話は聞いていないですよ!! フヴェルゲルミル様、私はご命令通りに勇者を(あざむ)きました! 騎士長をも遠ざけたのですよ……! ですから……!」


(あざむ)く……? 貴様は何を言っているのだ。それだから、お前のようなオークも同然な醜い存在は国にも、魔王軍(われわれ)にすら見捨てられるのだ……。消え去るがいい、(あわ)れな道化(オーク)よ』


 ヤツは動いてもいないのに、一本の剣が飛び出し――それが俺の腹部を貫通し、パーカーの腹部をも貫通した。


「そ…………そんなぁ……」


 パーカーは苦しむ間もなく絶命した。

 ……同情はできん。国を裏切ったのだから。だが、あんなのでも、国の民だった。


『……ほう、勇者よ、貴様は死なぬのだな』

「俺は()だからな。普通の人間とはちょっと違う」

『面白い。貴様とこうして剣を交える時をずっと楽しみにしていた。……だが、それよりも先に国を滅ぼす。それが魔王様のお望みでねェ』


「させると思っているのか」

『ああ、ここまで来たのなら一振りで……そうだな、周囲は簡単に消滅できよう。では、手始めにこの周辺の邪魔(・・)な建物と人間には消えてもらう』


 と、ヤツは太腕を構え……



『むうぅぅ―――――――――――――――ん!!!!!!!!!!』



 とんでもない勢いで振ると、建物や人間を吹き飛ばした。

 すると、そこは一瞬で荒野と化した。


 ……なっ、バケモノかコイツ!!



「ひどい……こんなことって……」

「ゼファ、俺から離れるな……! ヤツは……フヴェルゲルミルはここで倒す。でなければ、風の帝国(キリエ)は滅びてしまう……!」

「分かりました……最大限の支援をさせてください、ユメ様」

「ああ、頼む」


 グロリアスブレッシング、グロリアスアジリティが掛かる。

 これで、全ステータスと移動速度がアップした。


『……なるほど、その聖女がよほど大切らしいな、勇者よ。では、その邪魔(・・)な存在を消してやろう。ありがたく思え、この余の手によって消されるのだからな』


「なん…………だと…………。てめぇ、もういっぺん言ってみろ」



邪魔(・・)な存在だ――――』



『うるせえええええええええ!!! イベントホライゾン!!!!!!!!!』



 ヤツが言い終わる前に、最強の闇を顔面に向けて放った。



 邪魔と邪魔と、コイツは……!!

 人間(ひと)を踏みつけるようにしやがって……許せん!!



 …………俺は、ヤツを絶対に倒す!!

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