第02話 前編
世界はまだ暗黒時代――魔王に支配されかけていた。
勇者として立ち上がった俺は、最強の大幹部のひとりを追って『地の神国』までやって来ていた。
「……この街か」
街はすでに原型を留めず、荒廃していた。
大幹部の手によって破壊しつくされてしまったのだろう。
倒れている人間も数十人ほど見かけた。
なんて惨たらしい。
「………………人の気配」
無表情のフォースがぽつりとつぶやく。
この凄惨な状況を見て、よほどショックだったようだ。まあ、俺もだが。とくにフォースは、この国にはお世話になっているし、怒りと悲しみに満ちているはずだ。
そんなフォースを背負い、俺は人の気配を追った。
「……む。あそこ、なんか人が集中しているな」
ボロボロの教会跡。
そこでは少人数で結婚式っぽいことをしていた。
いや、多分そうなのだろう。まさか生存者がいるとは、でも良かった。
そんな中で、新郎新婦が悲しげにキスを交わしていた。
……こんな時に。
いや、こんな時だからこそか。
とにかく、俺は近くにいたおばさんに話を聞いてみた。
「……ん? あんた余所者だね。まあいい……どうせこの街はこんなんなっちまった。なにが聞きたいんだい」
「今日が結婚式だったんですね」
「ああ、そうさ。あの二人は今日幸せに結ばれるはずだった……けどね。魔王の幹部だとかが現れて、街はメチャクチャさ。でも、それでも命ってのは紡がれていくものさ。嬉しいことに娘は妊娠していてね」
希望がそこにはあると、おばさんは少し笑顔を見せた。
「そうだったのですね、新しい命に祝福を」
「どこの人か知らないけど、ありがとう」
おばさんは満足げに結婚式を眺めていた。
しかし、背中にいるフォースは、なぜか俺の耳にかぶりついてきた。
「うわぁっ!? フォース! いきなり……くすぐったいだろ」
「……ユメ、不幸中の幸いという言葉があるように、逆も然り。どう見ても、この結婚式には違和感がある。特にあの新郎新婦、震えが凄い。それと、ユメが話していたおばさん……人間じゃない」
そうコソコソと囁いてくるものだから、俺の耳は天国だった……いや、感じている場合じゃないな。
「なんだって……」
「あたしのスキルで、あのおばさんの正体を暴く」
「分かった、頼む」
『エクスポーズ』
緑色の光線がおばさんの首元に当た――――としたところで、いきなり、おばさんはとんでもない動きで回避し、一気に新郎新婦を人質に取った。
「おいおい、ただのババアがする動きじゃねえぞ、ありゃ!! 何者だお前!」
『…………クククククク、まさかこうも早く正体がバレようとはな』
不気味に笑うババアは、姿を一気に変えて大きく膨れ上がった。
「そういうことかよ……お前が大幹部ってことか!!!」
『フハハハハハハハハ……そうだ! 俺は魔王様の大幹部がひとり……『レッドファング』様よ……! この街の破壊は楽しかったぜぇ~…。最後にはその二人と少数の家族を見つけた。幸せそうに結婚式なぞ挙げていたからだ。だから、俺は勇者、貴様を倒すために結婚式を利用してやったのさ……』
「てめぇ!!」
『更に嬉しいことに、ここに妊婦がいるということだ……! このご時世、妊婦はなかなか見つからないからなァ……極上の魂ってわけだ。……クハハハハ!』
赤い影のレッドファングは、大きな腕を伸ばし――花嫁へ襲い掛かった。
「……させるかよ」
俺は瞬時に『闇』を解放し、敵の腕を両断した。
『グガアァァ……!? 貴様、なにをした!! だがな、腕なんて簡単に生えてくる。ほらな……』
両断した腕を再生するレッドファングは、不気味に笑った。
まあ、再生くらいはするわな。
「フォース、ヤツを打ち上げる。ぶっ飛ばせ」
「了解」
『打ち上げるぅ!? 馬鹿が……もう既に貴様の背後は取ったァァァ!!!!』
すでに俺の背後にレッドファングの気配が迫っていた。
鋭い爪で俺を裂こうというのだろう。だが。
俺は指一本だけを武器に、レッドファングに猛接近し、空へ打ち上げた。
『バカナアアアアアアアアアアアアア!!! 人差し指だけでだとおおおおおおお!?』
『――――――スーパーノヴァ』
フォースの大魔法が上空で超爆発を起こし、レッドファングを撃ち滅ぼした。
『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!』
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雲一つない青空が広がった。
「ふぅ、なんとか倒したな」
「うん。これでやっと……」
もう安心だ――――そう思われたその時。
『――――――バカがァ!!! 新郎である俺はイエローファング様じゃああああ、魔法使い、貴様を喰ってやる!!!!」
新郎がいきなり黄色の影となり、襲い掛かってきた。しかも、フォースに。……嘘だろ、あの新郎も大幹部のひとりだったのか――!!
化けてやがったか……!!
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