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第04話 世界の中心へ

 収集品を売りまくって、得た金で船を買うことにした。もちろん、それでも足りなかったので、そこら中にあるダンジョンでボス狩りをしまくった。


 幸い、水の聖国(サンク)付近には、そこそこのレアアイテムをドロップする、ボスモンスターがかなり生息していた。ありがてぇ……!



「これでまともな船が買えるな」

「いや、それ以上でしょう。どんだけ稼ぐのよユメ」


「いいじゃないか、汗水垂らして稼いだお金だし……おかげで、みんなにプレゼントも出来たしな」

「う、うん……嬉しい。ありがとね、このネックレス」



 微妙にはみかみながら、ネーブルは笑った。

 サプライズだったし、きっと照れているのだろうな。顔がほんのり赤いし。ゼファはさっきから、ずっとうっとりと指輪を眺めていた。



「これが、婚約指輪なのですね……」

「いやいや……それは、闇属性耐性を上げるリングでね――」

「嬉しいです♪」



 珍しくゼファが飛びついてきた。

 うわぁ、良い匂いとかヤバ……。まあいいか、本人が嬉しそうだし。



「で、フォースはどうだ」



 さっきから、ずっと無言のフォース。

 お気に召さなかったかな。



「…………」


 って、なんか泣いてる!?



「どうした、フォース。らしくないぞ」

「大好きなユメからのプレゼントが嬉しすぎて……」



 胸がいっぱいになってしまったと。


 普段は感情の起伏がほとんどないのだが、こういう時は素直っていうか、乙女だ。



「涙を流してくれるほど喜んでくれるとか、俺も嬉しいよ」



 フォースの小さな頭をポンポンして、さっそく港へ向かうことにした。



 ◆



 【 水の聖国(サンク) - 港 】



 頑丈な船を購入、貯金は一気に崩れ去った。



「あ~…、金がもうゼロに」

「なに落ち込んでるのよ、ユメ。仕方ないじゃん。わたしたちだけの理想郷を作るんじゃなかったの~?」



 ネーブルは前かがみになりながら、そう言った。

 いや、その……わざと俺に見せつけてるよな?



「そりゃそうだが……いや、こうも財布がスッカラカンになると、ちょっとショックではあるよ。けどま、国を作って豊かにすりゃいいだけか。でも、その為にもお金は必要かな~…貿易とか出来るのだろうか」



 ――ま、難しい話を考えても始まらない。



 先の事などは、パラドックスに到着してから考えればいい。行き当たりばったりはいつものことである。……いや、そうでもないかもな。



「さあ、行こうか。船はあれらしいよ」

「うわぁ、立派な船ですね。大きいです」



 ゼファは船を見て、驚く。

 そこには貴族や騎士団が乗るようなレベルの……すっげぇ堅固(けんご)な船があった。ありゃ、戦争でも行くのかな。



「って、そっちじゃないよ、ゼファ。こっちな」

「え……こっちって、このボート(・・・)ですか?」



「そう、これ」



「…………」



 固まるゼファ。

 どうやら、立ったまま気を失ったらしい。



「ちょっと、ユメ。話があるわ」

「どうした、ネーブル」

「このオンボロボートで向かう気?」

「ああ」



「ああ! じゃないわ! なに真剣(マジ)な顔して言ってんのよ。馬鹿なの!? アホなの!? 安本丹(あんぽんたん)なの!?」


(ののし)ってくれてありがとう、ネーブル。俺にとってはご褒美だぜ! てか、みんなのプレゼントに全力を振りすぎてしまったんだ! 後悔はない!!」



 ビシッと俺は言い放った。

 すると、ネーブルは唖然(あぜん)として、けれど、腹を抱えて大笑いした。



「ぷはははは……そっか。ユメらしいや――って、アホかー!!」


「ですよねー」


「プレゼントは嬉しいけどさ、移動できないんじゃ意味ないじゃん! どーすんのよ!? こんなオンボロボートじゃ、沈むわよ」



 だろうね。穴開いてるし、あと乗れても三人くらいが限界だ。

 一瞬で海の底だろうなぁ。



「というわけだ」

「なにが、というわけよ」



「ここでフォースの出番だぜ」



 俺はそうフォースに振るが――


「……え?」

「え?」



 だめだ、理解が追い付いていないらしい。



「フォースよ、このボートを何とかするんだ!」

「そんな無茶ぶり……無理。不可能。いくら極魔法使いアルティメットウィザードとはいえ、出来ることと出来ないことがある」



「そこをどうにか……! 今夜は一緒に寝てやるぞ?」



「不可能を可能にするのが極魔法使いアルティメットウィザード!!」



 目を星のように輝かせ、フォースはやる気をいつもの数百倍に上げた。おぉ……こんな燃えているフォースは初めてだ。ポーズも決まっていて可愛い。




「ソウルフォースは、有りと有らゆる万物の力を借りることも出来る。例えば、あの海の藻屑(もくず)。あれだって塵積もで固めれば材料となる。見てて」




 ――と、フォースは『ソウルフォース』を発動し、一気にゴミを収集した。

 黒々した物体は、ボロボートに融合しグネグネとするや、その規模を拡張した。なかなか大きくなり、しかも強固となった。



「おぉ! すげえ……やれば出来るじゃないか、フォース! いっぱい褒めてやるぞ」

「うん……♡ ユメの為なら何でもするよ~♡」


 すっかり上機嫌のフォースは、どんどん藻屑を集め、やがて――




「なんと!」




 あのオンボロボートが、港に並ぶ大型船と変わらぬ姿へと変貌(へんぼう)を遂げた。



「さすが、フォースね。私も()めてあげる」



 ネーブルは、フォースの頭をグシャグシャと()でた。


「ん~~♪」



 で、ゼファがやっと意識を取り戻した。



「……わたくしは……あ、あれ? この大きいな船はいったい」

「フォースが作ってくれたぞ」

「そうなのですね! さすが、フォースちゃんです♪」



 ぎゅっとゼファに抱きしめられるフォース。おい、そこ変わりなさい。



「ユメ、あとは仕上げをよろしく」

「そうだな、このままでも十分、耐久性はあるだろうが、なんせこれから行く場所が『パラドックス』だからな。闇の耐久値を大幅に上げておかないと、たちまち転覆するだろう。よし、俺のダークエネルギーを足しておく」



 ぐぐっと腕を構え、俺は船に対し『闇属性』を付与した。



『ダークエンチャント――――!!!』



 船が真っ黒に染まり、それっぽい感じに仕上がった。




「「「おぉぉ~~~!!!」」」




 三人も歓声を上げた。



「これでやっと旅立てる」

「参りましょう。新天地へ」

「私たちだけの国か~、楽しみね!」



 フォース、ゼファ、ネーブルは黒船に乗り込んだ。



 これでもう、この四属性大陸には二度と戻ってくることはないだろう。俺たちは国を作り、強い守りで固め、のびのび暮らしていく。



 さあ、向かうか……!

いつも応援ありがとうございます。

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