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第32話 英雄帰還

 光の天国(ベネディ)のど真ん中に到着した。


「おぉ、久しぶりに来たな」


 あらゆる種族が行き交う最大都市。

 この国には、白い翼を持った者が多く闊歩(かっぽ)していた。簡単に言えば、『天使族』なのだが、黒い翼を持つ者もいる。こちらは『堕天使』で、どちらも差別することなく、同じ民として暮らしている。

 もちろん、普通の人間も極少数だがいた。ここは天国(・・)と呼ばれるだけあり、誰しもが平等で、平和主義者ばかりだった。



「すごいところね、光の天国(ベネディ)って」



 はじめて来るネーブルは、物珍しく周囲を見渡していた。


 しかし、そんな感想も()き消えてしまうほどに、住民は一斉にこちら振り向き、歓喜の声を上げつつあった。



「おいおい、ありゃ……勇者・ユメ様じゃねーべか!?」「おぉ、本当だ。あの世界を救った勇者様だろ!」「女王様も救ったらしい」「今は元勇者って聞いたが、いや、そんなことは関係ねえ。俺らの英雄には違いねえ」「勇者様、サインくださーい!」「勇者! 勇者! 勇者!」「きゃー! 勇者様かっこいいー!!」



 などなど、いきなり俺の周りに人だかりができまくったのである。

 おっと、しまった……そや、俺はこの光の天国(ベネディ)では、超有名人だったっけ! 久しぶりにこの地に訪れたので、完全に忘れていた。



「ユメ様、すごい人気ですね!?」

「あははは……そうなんだよ、ゼファ。俺ね、魔王との最終決戦の時にちょっとこの国をついでに救ったっていうか、大幹部から女王を救った」



「へぇ、そうだったのですね! さすが、わたくしのユメ様です」



 自然と腕を組んでくるゼファは、なんだろう……他の女に取られてたまりますかオーラを全開にしているようにも見えた。……おふぅ。



「ユメさんは、あのフィラデルフィア女王様もお認めになった国民的な大英雄とも言うべき存在ですよ。ですので、顔は広く知れ渡っておりますし、ファンも多く存在しています。実は……あたしもユメさんの隠れファンですけれどねっ」



 ベテルがそう補足を入れてくれた。

 いやぁそこまで言われると、さすがに照れるつーか、むず痒いな。だが、気持ちは最高に良かった。



「あのあの、勇者様! この後、食事に……少し前に約束しましたよね!?」「ちょっと、今は私の番よ。それにね、約束したの!」「きゃああ、ユメ様がわたしを見てくださいましたー! あ、約束覚えていますよね」「私のギルドに入ってくれる約束ですよね!?」「結婚してくださる約束です!」「デートの約束が……」「勇者様はわたしのモノって約束よ!?」



 ――で、気づくと可愛い女の子が殺到しまくっていた。


 って、まて!


 なんか約束事が勝手に増えてるー!!!



「まて、フォース、ネーブル、ゼファ。言っておくが、あんな約束に覚えはないぞ!!」

「ふーん」「へー」「……」



 あ……白い眼差し。



「本当だって。ったくもう、みんなが一番大切に決まっているだろ。そう()ねるなって」


「ユメさんの仰っていることは本当ですよ」


「そ、そうなんだ」

 フォースは渋々。


「なんだ、それならいいわ」

 やや納得いかない様子のネーブルさん。


「わたくしは信じておりましたよ」

 ほっと安堵するゼファ。



 ベテルよ、ナイスフォロー!! さすが天使だっ!!



 ◆



 大歓迎での宮廷入りとなった。

 そこでも同じような反応をもらった、ので、以下略。



「……いやぁ、ここまで来ると美女が多すぎて困っちゃうなぁ。……はは」



 少し怖くなって、振り向く。

 しかし、みんな普通だった。



「あれ……」

「ん?」

 と、ネーブルは素で首を(ひね)った。


「いや……てっきり怒ってるのかなって」


「は? なわけないでしょ。まあ、ユメはこの国じゃ英雄扱いなんだし、人気も仕方ないでしょ。いいよ、あれくらい。……ただし、浮気したら殺すけど」



 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……。


 ……と、そんな恐ろしい殺気を感じた。


 しかし、救いの手はいつだってある。

 フォースが袖を引っ張ってきた。



「ん」

「ユメ、肩車して」

「なんだ、甘えたくなったのか」

「…………」



 こくっと頷くフォースは、どうやら俺が恋しくなった模様。



「よしよし、いいぞ」

「うん」


 フォースを肩車し、先へ向かった。


 さて、いよいよ女王とご対面だな。



 ◆ ◆ ◆



 一方、世界の中心・パラドックスでは――。



 キャロルは、国の圧倒的な防衛力に笑った。


「数千もいたクリーチャーがゴミのようです!!! わはははははは!!」


「マスター、それでは顔が魔王のようですよ!?」


「ふふふ。気にするなです、レア。我々の国は最強! まさか、ユメがいなくともここまで持ち堪えることが出来るとは……。いや、これは全てユメのおかげです。ですが、資金もいよいよ底が見えてきました……早く帰って来て欲しいものです」



「はい、今はいったいどこで何をしているのでしょうか」



「レア、心配無用ですよ。ユメはきっとやってくれるのです! 私はいつだって彼を信じているから。ですから、彼らが帰ってくるまで、国を守り切りましょう」



「分かりました、マスター!」



 そして、キャロルはギルドメンバー総勢百名に対し、こう言った。



「死守せよ!!!」



「「「「「おおおおおおおおおおおお~~~~~~~~!!!!」」」」」



 この日、クリーチャー三千、魔神三体が奇襲を仕掛けてきたが、最大防衛値に近づいているパラドックスは無敵も同然で、敵の一切の侵入を許さなかった。

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