第29話 分裂した魔神
魔神は分裂し、エリアポとシャルナクとなって現れた。まさかそうなるとはな。
魔神ってヤツは合体とかも出来たのか。そんな風にヤツらを物珍しく観察していると、エリアポが動き出した。
少女のような顔つきだが――
鋭く長い角を持っている。
「おっと、なにか飛んできたな。こりゃ――連接棍か。二人とも同じ武器ってことか!!」
ブンっと、鎖に繋がれた棍棒が鈍い音を立てて猛接近してきた。俺はそれをスレスレで回避。エリアポの首根っこを掴み、そのまま地面を抉った。
『ギャアアアアッ――――――!!!」
「バ、バカな! エリアポが! 貴様あああああ!!」
今度はシャルナクが高くジャンプした。
もちろん、あの連接棍を持って。
「そんな枝でどうする気だ」
「枝言うな! 言っておくが、これには『業気』が篭められているんだよ!」
俺の周りをグルグルと高速移動するシャルナクは、連接棍を振り回し、それを向けてきた。……まあまあ早いな。
『――――――メイス・ウィンドォ!!!!』
紫の稲妻。
なるほど、これは魔神の業気だったのか。
だが、
ならば――――俺は!!
『ダーク・ヘルズ・ディメンション!!!』
敵の放った業気を切り裂き、気持ちいほどに寸断した。それと同時に、ディメンションはシャルナクに到達、敵をバラバラに粉砕した。
『ヌオォォォォァアアアアッ!!!』
・
・
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「今度こそお疲れ、ユメ」
「おう。これでもうさすがに――」
ガサッっと音がした。
「――――まだ生きてやがったか!!」
いつの間にか復活していたエリアポが、シリウスの背後に接近していた。
「シリウス避けろ!!!」
「心配無用! この邪悪な気配は実に分かりやすいのでね……!」
シリウスは剣を抜き、しかし股間を突き出し……それを放った。
『シャインブレェェェェェェェェェ~~~~ドッ!!!』
「んなアホなああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!! そんなダサイ技で負けるなんて、イヤアアアアアアアアアアアアアアアアア、ウアアアアアアアアアアアアア!!!」
エリアポを今度こそ倒した。……股間で。
◆
宿に戻ると、女の子が話しかけてきた。
「ユメさん」
「受付の……」
「マイルです」
そうだ、マイルだ。
みすぼらしく、お淑やかな雰囲気で、なんかこう癒されるんだよなあ。
「マイルさん。俺の名前を憶えてくれたんだ。ありがとう。それじゃ、行くね」
「あ、あの……ユメさん、少しお話できますか」
「ごめん、仲間の様子が気になるから」
「そうでしたか……ごめんなさい」
「いや謝らなくていい。けど、名前を憶えてくれて嬉しいよ。また明日にでも話をしよう。しばらくは滞在するつもりだから」
「ありがとうございますっ。で、では……お待ちしておりますね」
おぉ、なんて可愛い笑顔。
しかし、俺は妙な気配を背後感じていた。
なんだろう、あの怪しい男。
◆
部屋に戻ると、ゼファとフォースはネーブルを挟み込むように寝ていた。当の本人は困惑し、俺に何かを訴えかけていた。
「ん? 身動きが取れないって?」
「……そ、そうよ。大声出せないしさ」
「仕方ない、フォースを隣のベッドに移すよ」
幸せそうに寝ているフォースを抱え、隣に移した。
「これで動けるな」
「あ、ありがと。……あと、心配かけてごめん」
「いいよ。……ん、てか、なんだそのメイド服」
「……う。いや、その……わたしも気づいたらこうなっていてさ。多分、宿屋の趣味だと思う。これしかないんだって」
「はぁ……メイド服が寝巻? 変わった宿屋だな。でもまあ……ネーブルのメイドさん姿も悪くないな」
フリフリのカチューシャとミニスカだし、ニーハイもバッチリだ。
ふむぅ、金髪スレンダーメイドって、かなり興奮する。ネーブルは体が引き締まっているから、実はああいう衣装がよく似合う。百点満点だ。
「ネーブル、以降、俺のことをご主人様と呼ぶんだ! いいな!」
「は……? そ、そんな恥ずかしいこと出来るかっ!」
「ほーん。そうか、じゃ、ゼファにお願いするからいいや」
「え……」
ちょっと寂しそうになるネーブルは、次第に焦燥感を露わにした。
「や、その……ユメ」
「………………」
「わ、分かったわよ! …………ご、ご主人様っ」
「な~んか投げやりだな。心が篭もってないし」
「くぅ~~~! 病み上がりに対してなかなか手厳しわね……!」
「そもそもネーブルの軽装が悪いし、メイド姿なのも悪い」
「えぇ、全部わたしが悪いのー!?」
「悪い。そんなイヤらしい恰好をしている方が悪いのだ! おかげで俺は理性を保てなくなりそうだ。ああ、辛い」
「なによそれ!? わたしは何をすればいいのよ?」
「そうだな。うん、そのまま街を回ろう。デートってとこだな」
「デ、デート!? このメイドで? うあぁ……」
「いいから、こっち来いって」
躊躇しているネーブルの腕を引っ張り、部屋を後にした。
◆
街に出ると、ネーブルは顔を真っ赤にしていた。
「おいおい、普段はあんな薄い生地のシャツとショートパンツのくせに、なぜメイド服で恥ずかしがる。意味が分からんぞ」
「す、すーすーする……」
「は?」
「スカートがすーすーする……」
「お前、まさかスカートあまり穿かないのか」
「知ってるでしょ。わたしって、身動きが取りやすいショートパンツの方が好みだって」
「そ、そうだけどさ。それより、ここら辺でいっか」
「え? なにもない空き地じゃない。こんなところで何をするの?」
「何をって、修行だよ」
「はい? デートは?」
「まー、修行デートってところかね。俺、ソウルフォースの腕をもうちょい磨きたいんだよな。だから相手になって欲しい」
「ユメ、あんたね……。まあいいか、そういうことなら相手になってあげる。わたしも『ライジン』を鈍らすわけにはいかないからねっ」
良かった。案外乗り気のネーブルだった。
「さて、じゃあ……修行を開始しますか!」
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