第27話 スーパーエクストラボス
南極大陸に位置する光の天国は、寒すぎた。
白い風景が続く極寒の地。
しかも、いきなりブリザードに襲われる最悪な事態だ。
「さびぃ~…………」
この普通の生物が生きられないような寒さが、モンスターやクリーチャーを受け付けないようにしている。自然のバリアってところだ。
「さ、寒いわ……」
ネーブルは簡単に言ってしまえば、常に半袖・短パンなので薄着。寒そうってか……あんな夏のカッコしてりゃあ、そりゃ凍え死にそうだ。到着早々、災難すぎる。
「…………うぅ」
「くそ、寒いってのを失念していたぜ。ネーブル、めっちゃブルブル震えてるな。仕方ない、俺が温めてやろう!」
ぎゅっと抱きしめてみると、ネーブルの体は氷のように冷たく、冷凍状態に近かった。これでは肌の感触がどうとかのレベルではない。こんなん、状態異常の『凍結』になっちまうぞ!?
「つめたっ!!」
「ユ、ユメ…………」
がくっとネーブルは俺の方へ倒れてきた。
不可抗力で、あくまで不可抗力で手になんとも言えない感触が――。いや、そりゃいいな。今はそれどころじゃない。
「このままでは凍死しちまうな。ネーブルは俺が温めながら運ぶ。ゼファとフォースは歩けるか?」
「わたくしは平気です!」
「ゼファは元気だな! そっか、水の聖国出身だし、スキルで水神の加護もあるんだっけ」
「はいっ。ですので、わたくしは寒さとかに強いのです。でも、フォースちゃんも凄いです。あんな薄着なのにピンピンしていますよ!?」
そういえば、姿が見えないな――と、振り向くと。
「うぉ!? 超元気に動き回ってるー!?」
こんなヤベェ寒さの中、元気いっぱいにダッシュしていた。楽しんでいやがる!!
「ユメ~! 雪だるまー!」
「おま……平気なのか、フォース」
「うん。あたしはソウルフォースがあるもん。ユメも使えばいいのに。ポカポカになれるよ~」
「え」
なにそれ、そんなことも出来たのかよ。
便利だな、ソウルフォース。
「俺はそこまで修行していないからな、やり方を教えてくれ、フォース」
「うん。まずね、深呼吸」
「~~~すぅ」
「もっと」
「~~~~~~~すぅ」
「もっと」
「~~~~~~~~~すぅぅぅぅ」
「もっと」
「死んでまうわ!!」
「ユメ、自然と一体化するんだよ。それはそう簡単なことじゃない。それにね、ソウルフォースは儚いの。だから、丁寧に両手で汲み取るようにしないとダメ。乱暴に扱えば、すぐに零れ落ちちゃう。自然への敬意と理解を深め、ちゃんと思いやるようにして――」
あわわわ……。
ソウルフォースのことになると、フォースは饒舌だ。てか、ちょっと怒ってる!?
「わ、分かったよ。もう一度やるから……すぅ~~~はぁ~~~」
俺は目を閉じ、この大自然に集中する。
……すると、なんか白い靄が見えてきたような、気がした。
「こ、これが……」
「モンスターだああああぁぁぁああッ!!!」
もうすぐで防寒出来る寸前までいったのだが、そこで失敗に終わった。
「なにィ!? 誰だ、邪魔したやつー!! てか、モンスターだって?」
遠くから人間が猛ダッシュしていた。
あれは、モンスターから逃げているのか!
「おいおい、なんか巨大な何かを引き連れているぞ!」
「そこの四人、すまなああああい!! こんなつもりはなかったが、心配するな!!」
「いや、めっちゃ心配ですけど! その後ろの巨大モンスターって『ギガアイスタイタン』でしょう!!」
説明しよう。
ギガアイスタイタンは、ゴーレム系モンスターの上位存在であり、かな~り固い。大抵の刃物は折れて終わりだ。それほどにヤツのボディは固く、肉厚だ。
「仕方ねえ、俺の出番か……! それか、戦いたい人は挙手しなさい!」
「…………」
ネーブルは凍結で気絶中につき、当然の如く沈黙。
「…………」
フォースは、先ほどのソウルフォースの件で機嫌が悪い。
すまねぇ! 修行不足で!
「申し訳ありません、ユメ様。わたくしはネーブルとフォースちゃんを見ていなければなりませんので」
「ですよねー!! じゃあ、俺しかいないよな!!」
闇スキルで『魔剣・エクスカイザー』を生成し、構えた。
「いくぜええッ、だりゃああァ!!」
俺はギガアイスタイタン目掛けて突撃していくが、あの逃げていた人が突然、ジャンプし一回転。俺の方に向かってきた。
「とぉぉおお!! しゅたっと……これを食らうがいい、我が秘剣の刃……!!」
逃げ回っていた男らしき人物は爽やかに笑うと――
『シャインブレェェェェェェエエエエエエ――――――ド!!』
彼の股間からとんでもない量の光が発せられ、ギガアイスタイタンを滅殺してしまった。てか、剣関係ねえええええ~~~~~~~~!!!
「なんだ、自分で対処できたんじゃないか」
「……ふふ、キミに会うための余興だよ。ユメくん」
「? あんた……あ! 見覚えがある。夢幻騎士の……!!」
「覚えていてくれたのかい!? そうさ、オレは夢幻騎士の――」
夢幻騎士が名乗ろうとした、その時。
地面からピキピキと嫌な音が響いた。
「え……」
すると、すぐに地割れが置き、氷の大地がひっくり返った。……いや、底から何か出てくるぞ……!
「お、おいおい……まさか、スーパーエクストラボスか……!」
四属性大陸では通常のエクストラまでだが、南極と北極では、スーパー、ハイパー、ウルトラタイプのエクストラボスが出現するのだ。今まさに、スーパー級が召喚されてしまった。おそらく、あのギガアイスタイタンが引き金になったのだろう!!
「なんてことしやがったー!!」
「……す、すまない! ユメ、あとは任せたぞ!!」
「結局、俺かよ!! まあいい、レアアイテム入手のチャンスだ!!」
闇の極解放――!!
と、闇を展開したと同時に、俺は巨大な――巨大すぎる鋭い鉤爪を持った掌に押し潰されかけた。あっぶね!
しっかし、デカイな。
デカすぎんだろう。
山のようなデカさを誇る巨大なアイスゴーレムが出現した。形状はドラゴンであった。なんて透き通った青いボディをしてやがる……!
あの感じから、どうやら『ブリザードドラゴン』ってところらしい。
ブリザードドラゴンは、一気に空へ羽ばたきその巨躯を見せつけて来た。なんて身も凍るようなド迫力だ。
「ヤロー、俺を無視して光の天国を襲う気か……! そうはさせねえ!!」
さっきのフォースの言葉を思い出せ、俺。
自然と一体となるんだ……!!
深呼吸を忘れるな。
「…………~~~~~~~~すぅ、はぁ………!」
見えた!!
白い靄。
いや、反転した。
黒い靄――――いや、これはバランスだ。
これは……、隠された質量か。
『イベントホライゾン――――――――――!!!』
究極の闇を全力投球し、ブリザードドラゴンに衝突させた。
『グゴォオォォォォォォォオオ――――――――――!!!』
全てを無に帰す力は、ドラゴンの体をバラバラに砕き、崩壊。最後には空中での大爆発を起こした。
「うっし、こんなところか」
手応え有り。
確実な勝利で、しかもソウルフォースの一部を極めた。
「ユメ……」
申し訳なさそうにフォースがやってきた。
「さっきはごめんね」
「さっき? なんの事だ?」
「厳しいこと言っちゃって……あんなつもりなかったの。でも、ソウルフォースがまた強くなったね。すごいよ、ユメ」
もじもじとしながらも、フォースが褒めてくれた。
「だ……だからね、抱っこしてもいいよ」
「ん? なんだって?」
「……してもいいって…………うぅ」
なるほ。さっきの詫びのつもりらしい、ぜんぜん気にしてないけどな。けど、せっかくの好意である。断る理由もない。
「じゃ、抱っこするぞ」
「うん♡」
さて、ネーブルはゼファが抱えてくれているし、光の天国へ……。
「待てい!」
「忘れてたよ……」
そいや、もう一人いたっけな。
夢幻騎士が――。
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