第23話 理想郷
漂流していた黒船号を無事に救出した。
「ありがとうありがとう……!」「お兄ちゃんすごーい」「なあ、あんた……キャロルに聞いたが、噂の元勇者様かね!?」「あの……ユメ様、握手を」「噂は本当だったんだ!」「ああ、キャロルの言っていたことは本当だった」「救世主様じゃ!!」
みんな俺の方に殺到した。
嬉しいけど、そんな百人単位で群がられても……まあいいか。
気分は最高だし。
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長い船旅は面倒だったので、ゼファの補助スキルで船のステータスを底上げし、移動速度を倍速にした。
……その結果!
なんと、半日も掛からず『パラドックス』に到着した。
ただし…………!
「うおぇぇ…………」
みんな船酔いで死にかけた。
◆
【 パラドックス 】
ギルド『デイブレイク』と家族たちは再会を果たした。感動のあまり涙する者、歓喜する者、なぜか息子に往復ビンタする気の強い母親……たぶん、心配させたんだろうな。……などなど、喜ばしい光景が続いた。
俺たちは感謝されまくり、みんな新天地での生活を喜び、仕事にありつけると満足度100%でWin-Winだった。
人口およそ100人ほどに膨れ上がった。
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ここまでは、恐ろしいほどに順風満帆。
みんな幸せ笑顔で、最高の国――まさに理想郷じゃなかろうか。
不平不満を持つ者は、誰一人いなかった。
――――しかし。
魔神は常に大量のクリーチャーを向かわせてきていた。
今日も。
「しつこいな」
「でもさ、ユメ、うちの防衛値かなり高いし、もう四属性国の数値すら超えているかも。これならさ、もう放置プレイでもいいんじゃない」
「まあそうなんだがな、ネーブル」
開脚ストレッチしているネーブルは、顔を上げた。てか、相変わらず体が柔らかいなぁ。
「ん、なにか心配事?」
「そりゃそうさ、魔神がまだいるんだぜ。そんな安心もしていられんだろう」
「あ~」
ネーブルは、開脚したまま体をゆっくり解していた。
ふ~む……これはこれで。
「そうね、でも、国をもっと強くすればいいんじゃない」
――俺の方へ前屈するネーブル。
…………おぉ。
「あ………ああ、その手があったか……」
「ん? どうしたの……って、凝視するなッ!!」
ばっと胸元を隠すネーブルは後ずさった。
「凝視はしていないよ。ただ愛でていただけ。ほら、ネーブルって金髪だし、肌白いし、スレンダーだし……爆乳だし」
「なんで近寄って来るのっ!」
「別にいいだろ。それとも俺のことが嫌いか?」
「き……嫌いなわけないでしょ」
「じゃあ、触ってもいいよな」
「さ、さわ!? どこを!?」
「じ~~~」
俺はもちろん、ネーブルの胸を凝視した。
「ダ、ダメよっ! こんな真昼間からダメっ……!! 明るいところは嫌いって知ってるでしょ。それにほら、わたし……その、ユメとキスしかしたことないし……だから、その」
「暴れるなって――」
ネーブルの腕を押さえ、そのまま口を塞いだ。久しぶりに、ゆったりとした時間が流れていた。
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「…………」
ネーブルの顔は真っ赤だった。
俯いたままで、喋ろうとしなかった。
「どーした。ちょっと長すぎたか……」
「……い、いいけどさ。もうちょい優しくしてほしかったなって」
ぷくっと膨れるところが可愛かった。
◆
――ある日、こんな噂が流れた。
夜な夜な全裸の男が徘徊している――――と。
「……なんだって?」
キャロルにもう一度確認した。
「ですから、全裸の男が徘徊しているんですよ!! 今度は、その男を何とかしてほしいのです。でないと、夜安心して出かけられない人たちが続出しておりまして……。それにほら、若い娘さんも多い我が王国ですから」
だろうね、ギルドメンバーのレアとかそうだし。
それに、俺の仲間も美少女揃い。
うーむ……そんなヘンタイに遭遇したら、ゼファなんかは気絶して、寝込みそうだな。てことは、治安維持のためにも、その全裸男を倒す必要があるな。
「分かった。引き受けよう」
「ありがとうございます!! これは、前と同じくクエスト扱いにしますから、報酬は弾みますね。ではでは、ご武運をお祈りいたします」
キャロルは忍術で去った。
「……全裸男ねぇ」
◆
【 パラドックス - 深夜 】
全裸男を目撃したら確実にぶっ倒れるであろう、清らかで純粋な心を持つ聖女・ゼファは置いてきた。ので、今はフォースとネーブルと共に自警に当たっている。
しかし、どうしてだろう。
「フォース、なぜ体操服なんだ。寒くないか?」
「寒くない」
「そ、そうか」
「ネーブル、面積の少ないビキニだな。しかも、ポニーテール。寒くないか?」
「も、猛暑対策よ! 熱いくらいだわ~」
猛暑?
いや、今はちょっと寒いくらいだけどな。
「とりあえず、フォースは肩車してっと……よし、歩くか。って、うぉっ!!」
「ん、どした、ユメ」
「いや……これは……」
そいや、フォースの生足がっ――!
普段は、やたら触り心地の良いニーハイを穿いてるし、そうか、これは気づかなかったな。新世界を感じる。
ていうか、いつもと感触とか匂いも違う。
「フォース、今後は体操着をメイン装備にしなさい」
「やだ」
秒で断られた。
強要は嫌われるので、素直に諦めた。
◆
『…………見つけたぞ、元勇者よ…………』
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