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第02話 帝国脱出

 家に帰った俺は、みんなに事情を説明した。



「――――そんなワケで国を出ていくぞ」



 みんな深刻な顔をしていた。

 そうだよな、ショックだよなー…。



「行こう。別にこの場所に未練(みれん)はない」


 フォースは、いつもの無感情のままに言った。



「そうですよ。わたくしたちは、四人がいれば十分です」


 天使の微笑みのゼファ。



「いっそ、わたしたちだけの王国でも作ればいいよ~」


 大胆な提案をしてくれるネーブル。



 うむ。そうだな、別にこの邸宅(うち)にこだわる必要はどこにもない。風の帝国(キリエ)だって、たまたま住み心地がよくて、たまたま住み着いていただけだし。だから、一生住むのかなって思っていたけど、あの帝王の対応ではな。



 ――よし、出ていこうと決心したその時だった。



「……ん、なんか()げ臭くない?」



 ネーブルが鼻をクンクンさせ、違和感を感じ取っていた。俺もやがてその異常事態を察知した。これは……。



「な!? ……うっ、確かに! まさか――!!」



 焦っていると、フォースが目蓋(まぶた)を閉じていて、集中しつつも手を周囲に(かざ)す。


 すると、状況を教えてくれた。



「風の騎士団が火を放った。うちを燃やし尽くすみたい。最終処分(・・・・)と言っている」



「なんだと!? くそ! くそ!! そこまでするか!!! 俺たちを殺す気かよ、許せねえ……世界を救ってやったっていうのに!!」



 まったく、猶予(ゆうよ)もクソもねーじゃねーか!! 

 次第に、火の手がこちらへ向かって来ていた。



「帝王には失望した! もういい! こんな国にはいたくない!! みんな、出ていくぞ!!」



 もう我慢の限界だった。



 ――――が、火の勢いはさらに強くなって、襲い掛かってきた。



「ぐっ……まずいな。これじゃ、出られないじゃないか」



 やってくれるぜ。

 出入口は(ふさ)いだってことか――どうやら、向こうは本気らしい。


 どうするべきか悩んでいると、フォースは手を伸ばしてきた。



「ユメ、ゼファ、ネーブル、あたしの肩に手を。テレポートする」




「お願いしますね、フォースちゃん」

「こっちには、偉大な魔法使いがいるからね」



 ゼファ、ネーブルはフォースの肩に手を置いた。

 俺はというと、腰に手を()えた。



「…………ユメ」



 嫌がる様子もなく、(うる)んだ瞳で俺を見る今のフォースには感情があった。ぎこちなく、恥ずかしそうだ。そんな反応を示してくれるのは俺か、ゼファかネーブルだけ。他人には絶対に見せない顔だ。



「ダメだったか。ていうか、肩に手を置けないし」

「うん。お尻以外ならどこでもいいよ」



 以前、お尻を触ったら、すげぇキレられた。

 どうやら、お尻はフォースの逆鱗(げきりん)らしい。



「じゃ、国外へ出る」



 詠唱もなく、あっさりと俺たちはテレポートを開始した。



 ◆



 荒野フィールドを仲間と共に歩く。

 もちろん、あてもなくだ。



「国を作るのはいいけど、どこに作るべきかね。空いている土地なんぞあるものかね~」

「まあ、この辺りの大陸は『火の大国(グロリア)』、『水の聖国(サンク)』、『風の帝国(キリエ)』、『地の神国(クレド)』の四大国が統治しているからね~。あんまり土地も余っていなかな」



 残念そうに笑うネーブル。



 大陸は広大ではあるが、彼女の言う通り、四属性の強国がそれぞれの領土を治めている。だから、ネーブルが残念がるのも分かる。しかも、魔王が暴れまわる前は、領有権を巡って争っていたこともあるほど。



 今は魔王のこともあり、その前兆はないが――。



「ユメ、水の聖国(サンク)へ行く。地図を買って、島を探そう」



 いきなり、フォースがそう提案をした。

 その妙案にゼファは手をポンと叩き、鳴らす。



「いいですね、それ。サンクならば、わたくしの故郷でもありますし、しばらくは皆さんを泊めることも可能かと」


「おお、ゼファの家か。そいや、サンクだったな。よし、じゃ、サンクへ向かうか。歩いて、二日ってところだろう。それまでは普通の旅だな」



「「「おおお~~~!!!」」」



 ◆



 普通の旅といかないのが俺たちである。



 まず、なぜか人を襲うことで有名なアクティブモンスター『ラストオーク』が数百体現れて、群れで向かってきた。



「うわ……! すげぇオークの数。どうしてこんな……」

「ユメ様。あのオークは女性を襲い、酷い目に合わせているみたいです。許せません!」



 珍しくメラメラ燃える聖女のゼファ。

 なるほど、聖なる者として許せないわけだ。

 俺も元勇者として、その気持ちは一緒だ。



「じゃ、倒すか――ダークエネルギー解放」

「まって」

「なっ、フォース。俺の肩に乗るなよ~…良いところだったのに」

「オークたちは、ネーブルに狙いを定めた」



「え、わたし!? そんなぁ!?」



 まー…あんなギリギリビキニアーマーみたいな肌の露出が多いカッコしてるし、真っ先に狙われるよな。欲望むき出しのオークたちは、ネーブルに向かっていく。



「じゃ、倒すしかないよね」



 ニカっと白い歯を見せながら元気よく笑い、ネーブルは全身をビリビリさせた。お得意の最強スキル『ライジン』である。




『ムジョルニア――――――!!!!!』




 それは(まぎ)れもない青天の霹靂(へきれき)だった。

 圧倒的な神の(いかずち)は、ラストオークを次々に駆逐していった。なんて爆速、なんて高火力。いつ何度見てもスゲェよ。



 稲妻(いなづま)の渦は更に激しさを増し、地面を(えぐ)り、モンスターを塵に変えていった。敵はなんの抵抗もできず全滅した。



「あーあ。もう終わったよ。お疲れ、ネーブル」

「ありがと、ユメ。はいたっち~!」



 なんかハイタッチを求められたので、応じた。

 まったく、あんな太陽のような笑顔をされては、俺の出番を奪ったことを責められないじゃないか。許そう、可愛いから!



「そして、フォース。俺の顔をペタペタ触るんじゃない。嬉しいけど」

「ユメ~♡」



 だめだ。甘えん坊だからな、止めようがない。



 さてはて、このオークを向かわせてきたヤツが付近にいるらしい。それは、フォースも感じ取っていた。引きずり出しますかぁ~。



 でも、その前に、ドロップアイテムはきちんと収集しておかないとね。

いつも応援ありがとうございます。

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