第19話 約束されし勝利の闇
国はギルドに任せ、仲間と共に魔神を迎え撃つことにした。
「ゼファ、聖女スキルを」
「はい、既にグロリアスサンクチュアリを国全体に張ってあります。これで、万が一があってもダメージは最小限に抑えられますかと」
聖域――グロリアスサンクチュアリは、一定時間だが、モンスター&クリーチャーの攻撃を無効化し、一切受け付けなくなる奇跡なのである。
「よし」
外の暗黒地帯から、そいつを待った。
「おぉ、来た来た。やべぇ、やばすぎるスピードで接近してきやがった。魔神のお出ましか。――ん、アトラスじゃないのか」
『ヌホホホ!! ヌホホホホ!!! 殺す殺す殺すころおおおおおおおおおすッ!!』
なんだ、あのバカみたいに大きい土管を持った男は……!
「しかもブーメランパンツ一丁だし、うおぇ……! なんつー格好をしている魔神なんだ……気色わりぃ」
『ヌホホホホホ……殺す』
さっきから、それしか言ってねーし。
「ユ、ユメ……。あのヘンなのは任せるわ」
ネーブルは目を押さえていた。
どうやら、見たくないらしい。そりゃそうか。
『我が名は魔神・ヤヌス!! 覚えなくていいぞおおおおおお!!』
「そうか、俺も覚える気はサラサラねぇよ!!! このヘンタイ野郎があああああああああッ!!!」
突撃してくる魔神に対し、俺は――
『――――――イベントホライゾン!!!!!』
もう面倒なので、容赦なく大技を繰り出した。
『ぶ、ぶあぁかなぁぁぁああウギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』
魔神・ヤヌスは呆気なく消滅した。
あれ……クソ弱かった。
いや、俺が強すぎたのだ。
「さすがユメ様、カッコよかったです~♪」
ゼファは腕を組んできた。
「ユメ~♡」
相変わらず肩車しているフォースも、頬をスリスリしてきた。
「……む、みんなズルい。ユメ、わたしも!」
「分かったよ、ネーブル。じゃあ、胸を――」
「噛みつくよ?」
ギッと殺す勢いで睨まれたので、やめておいた。多分、掴んでいたら、手を食い千切られていただろうな……戦慄。かと言って、頭を撫でるのも抵抗があるし……ふむ、抱き寄せてみた。
「これでいいか……?」
「……うん。これならいい」
いいのか。
ネーブルは爆乳なので……体に当たっているけど。
「そろそろ帰ろうっか」
俺がそう提案すると――
「「「まだこのままでいい!!!」」」
三人とも現状維持を求めてきた。
……まあいいか。
◆
国へ戻ると、ギルドから大歓声が上がった。
「すげぇよ、さすが元勇者!」「ユメ様すごーい!」「さすが我らが王だな、うむ」「この国に移住して良かった~」「家とか住み心地最高だし、ずっと居たい」「我らは安泰だな!!」「ユメくーん、私とデートしてー!」「マスターの判断も正しかったわけだ」「フォース様は、俺たちのアイドルだ!」「いやいや、俺はゼファ様だな」「まて、ネーブルちゃんのあの胸も凄いぞ!!」「我が家にも温泉を!」「もっと国を大きくしましょう!」
ガヤガヤ、ザワザワとお祭り状態に。
おぉ、なんか知らんが、みんな俺たちに注目している。
「す、すごいですね。……キャロル様を呼んできました」
「ありがとう、ゼファ」
防衛任務についていたキャロルが、疲れた顔で戻ってきた。
「おつかれ」
「……ええ、攻撃のほとんどを自動化しましたから、お陰様で負担は減りました」
「で、それなのに、どうしてそんな疲れているんだ?」
「いやぁ~…、メンバーの皆さんから、ああしろこうしろと要望が多くて」
なるほど、それで目に隈が……。
一気にやつれ過ぎだろう。
「じゃあ、その要望とやらは後で聞かせてもらうよ。それより、キャロル、今後もパラドックスの防衛をお願いしたい」
「ええ、お任せ下さいですよ~。でも、人員はどうでしょうか。もし足りないのであれば、人材を募ろうと思いますが」
うーん。現在、30名ほど。
攻撃は自動化されてるしなぁ。あんまり人間を増やしてもね。……トラブルとか増えそうだし。
「いや、しばらくはいい。けど、中には家族を連れてきたい連中もいるだろう」
「そうですね。というか、皆さんもう移住する気満々ですよ。なので、親戚とか含めれば、100人規模にはなるかと」
「そうか。まあそれくらいならいいか。人口が一気に1000、10000とかなられると、家もまだそこまで建っていないからな。追っつかない」
「了解しました。うまく調整しておきますね。それでは、私は要望をまとめてきますので……」
ぺこっとお辞儀して、キャロルは去った。
◆
一方、世界では――。
四属性大陸の火、水、風、地の国がパラドックスへ向けて侵攻中だったのだが……。そこに、光の天国が立ちはだかっていた。
光の女王――『フィラデルフィア』は、かつて勇者と誓約を交わしていた。
『万一、世界が敵になるような状況になれば、私だけでも味方なろう』
沈黙を貫いていた女王は、ついに動き出した。
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