表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/176

第18話 防衛値急上昇

 自国『パラドックス』は、加速度的な発展を遂げて、ついに高い壁が築き上げられた。しかも、ただの壁ではない。



 火の大国(グロリア)を真似て、ファイアウォールならぬ『ダークウォール』に仕立て上げた。そこに何百種類もの迎撃システム。



 モンスターあるいはクリーチャーが接近してくれば、固定砲台が勝手に攻撃してくれるし、大量の岩も飛んでいけば、矢も飛んでいく。もちろん、魔法も。



 おかげで国の【防衛値】がかなり上昇。

 これが高ければ高いほど、国の補正ステータスもプラスされるようだ。あと、『国家スキル』とかも発現するようになってくるらしい。すでにいくつかあるが、今のところ役に立ちそうなのは少ない。というか、ほとんどパッシブスキルなんだよなー。




「ちょっとやりすぎじゃない……」




 それを見たネーブルが、呆れた顔でそう言っていたが――。




「いや、国を守るためだし、これくらいはな」

「お金はほぼ使い切った」



 肩車されていて、尚且(なおか)つグッタリしているフォースが高い壁を(あお)ぎながら、そうつぶやいた。――そう、帰ってきてから、速攻でダイヤモンドを闇ルートで売りさばいたのだ。また、奪われても面倒だったからな。



「見張りは、デイブレイクの方たちが交代で見てくれるみたいです」

「おお、そうかゼファ。ギルドには報酬を弾んでおいてやってくれ」


「はい、分かりました♪」



 最近、知ったがギルドは30名ほどいるようだ。

 面倒だったので、いちいち把握(はあく)していなかったけど、そんなにいたとは。



「あ、そうそう、ユメ」

「ん、どうした、ネーブル。フラれたみたいな顔して」

「フ、フラれてなんかないわよ!? 違うって、これこれ」



 ドサっと大量の手紙を出してくる。


 えーっと……すげぇ数だ。



「なにこれ?」

風の帝国(キリエ)からの手紙みたいよ」


「これ、全部!?」


「そうみたいね。ほら、見てこれ」

「あー…」



 差出人が『エレイソン三世』だった。

 つまり、帝王である。


 どれどれなんて書いてあるんだと、中身を開封する。まあ大体予想はついていた。




『ユメよ、我が国へ大至急戻ってこい。お前がいないと、このままでは国は滅ぶ。私の為ではない、民の為と思って帰ってくるのだ。もし、風の帝国(キリエ)の防衛を引き受けてくれるのあれば、一生を約束しよう。それと、お前の国も認める』




「へぇ。以前とは、えらい態度の違いだな」


 俺は、手紙を破り捨てた。



「あ……ユメ、いいの?」

帝王(ヤツ)は、結局は俺を利用したいだけだ。ヤロー、民を出汁(ダシ)にしてんじゃねーよ……!!」



 ないない、ありえない。


 あんな『追放』と『邸宅の焼却処分』などという不遇の扱いを受けたのだぞ。戻れ? ありえんだろ。また良いように利用され、捨てられる。



「俺は絶対に戻らんからな。ネーブル、手紙は全部、廃棄(はいき)しておくんだ」


「分かった」



 ネーブルは、積み上げられている手紙に向けて『ライジン』スキルを放ち、雷で全て燃やし尽くした。



「ナイスだ、ネーブル。おかげでスッキリしたわ」

「この方が早いからね。……ん、でも、一枚だけ残ったみたい。なにこの手紙」

「え?」



 なぜか燃え尽きずに残った手紙があったようだ。

 ネーブルは、腰を下ろしそれを拾う。



「なんでそれだけ……。あ、ネーブル。そのままの態勢でいてくれると助かる」

「そうね、わたしのライジンで燃えないなんて……ん? 態勢? って、バカ!! 見るなアホ!!」



 胸チラしていたことに気付いたか。

 ネーブルの胸はボリューム満点だからな、あの姿勢なら中々壮観だった。



「チッ、あと少しだったのに」

「なにがあと少しよ! そ、それよりこの手紙よ」



 胸元を押さえ、赤面するネーブルから手紙を受け取った。



 ……どれどれ、差出人は……。



 中身を見ようと思ったその時――




「ユメ、手紙は後。敵襲あり」




 フォースがそう気配を察知していた。

 彼女の言う通り、すぐに奇襲警報が鳴り響き、緊張が走った。



「クリーチャー共が来たか。だけど、今までとは違うぜ」



「ユメ様、わたくしたちは何もしなくて(・・・・・・)いいのですね?」



「ああ、俺たちの作った防衛システムで何とかなるだろう」



 ◆ ◆ ◆



 大量のクリーチャーは、パラドックスへ侵攻を開始した。


 それを指揮するは、10番目である【Zehn(ツェーン)】の位を持つ魔神『ヤヌス』だった。アトラスが行方不明になったので、変わりとなっていた。




「おのれ、アトラスめ……。この吾輩(わがはい)が、こんな辺境の世界を攻め滅ぼす羽目(はめ)になるとはな……。

 だがまあいい、なにせ、魔神王様直々のご命令だからな……ヌホホ!!」




 国を囲むように、おおよそ一万以上のクリーチャーは進軍していく。



「これだけの手勢がいるのだ。あんな国ですらない小国、一分と持つまい」



 あと少しで黒い壁に突き当たるところだった――のだが。



 赤黒い光が国から放たれると…………





『―――!!!!!!!!!!』





 一万のクリーチャーは一瞬にして、消滅した。




「………………は?」




 魔神・ヤヌスは、空でただひとり、呆然とするしかなかった。




「バカなバカなバカなバカなバカなあああああああああッ!!! 一万だぞ!! 一万のクリーチャーが一瞬で!? あんな小国ごときに!? ふざけるなああああああああああああァァァ!!!」



 怒り狂ったヤヌスは、パラドックスへ猛スピードで向かった。



「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す、全員、八つ裂きにしてくれるわあああァッ!!」



 ◆ ◆ ◆



「ほらな、ネーブル」


「う、うん。ここまでとは思わなかった。あんな空を埋め尽くすほどクリーチャーがいたのに、一瞬で……これなら、最強ね! ごめん、ユメ。やりすぎと思っていたけど、これくらいの方がいいわね」



 ポカンとするネーブルは、認識を改めてくれたようだ。そう、常に安牌(あんぱい)を取るのが俺の流儀だった。



「さてさて……魔神っぽい気配がするんだよな~。みんなはここに――」



「やだ」

「そうね、フォースに賛成」

「わたくしもです」



 フォースもネーブルもゼファもついてくる気満々だった。



 しゃーない、キャロルたちに国を任せて、俺たちは魔神を倒しに行こう。

いつも応援ありがとうございます。

もしも面白い・続きが読みたいと感じましたら、ぜひブックマーク・評価をお願いします。感想もお気軽に書いて戴けると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ