第16話 裏切者への復讐
汗だくのつゆだくになって、ようやく火の大国に到着。
こっからは早かった。
フォースは、ダイヤモンドを盗み出した連中の気配を追って、そこへ一気にテレポートしたのだ。さすが、極魔法使いである。
一歩、テレポート禁止区域を出てしまえば、一瞬だ。
着いた場所は、謎の地下だった。
「どこだ、ここ……! てか、いやがったな、キル三兄弟!」
「な、なんだテメェ!!」
「どっから入って来やがった!?」
「お、おい! あれ、キャロルじゃねえか!」
こちらの存在に気づき、慌てる三兄弟。
だが、すぐにニヤリを表情を変えた。なんだ?
「まさか、もう追ってくるとはな」
「ああ、地獄の果てだろうが追いかけてやる。痛い目を見たくなければ、ダイヤモンドを全部返すんだ」
「あ~? なんのことだか」
「惚けるな。あれは俺たちのモノだぞ!!」
「そうです! 信じていたのに、どうして裏切ったのですか!」
キャロルも三兄弟を問い詰める。
しかし。
「ガハハハハハハ!!! 裏切られる方が悪いに決まってるだろ!!」
「そうだ、兄貴の言う通りだ!!」
「目の前に、一生遊んで暮らせる額のダイヤモンドがあるとかさ~、手を出さないわけねぇよな!!」
こいつら……!!
「…………」
辛そうな表情をするキャロル。
もう許せん、ぶちのめす。
「お~~~っと! 俺たちとやる気か!? スルト様が黙っちゃいないぞ!?」
キャロルに教えてもらったが、三兄弟の長男・キルデベルトがそう強気に言った。
「んぁ? スルトだ? 誰だそいつ」
「筋肉ムキムキの大男さ!! 魔神・アトラス様の右腕であり、一番手のクリーチャーだぞ!! さあ、どうする。そんなバケモノを相手にできるかな!?」
「ああ、そいつならぶっ倒したぞ」
「………………は?」
「だから、そいつなら、ここへ来る前にぶっ倒した」
「………………」
愕然となるキルデベルト。
「ダイヤは返してもらうぞ」
「し、仕方ねえ! キルデリク、キルペリクやっちまえええええええええ!!」
「おう、兄貴!!」
「俺っちは、あの小さい魔法使いを!!」
三兄弟が突撃してくるが――。
『爆熱苦無・五月雨――――――!!!!!!』
キャロルの忍術の速度が上回った。
苦無は雨の如しだった。
「んぎゃあああああああああああ!!!」
「ううぎゃあああああああああああ!!」
「うえうええべべええええええッ!!!」
三兄弟の体中にドスドス刺さって、毒、麻痺、火傷、鈍化、凍結などあらゆる状態異常を付与していた。なんて苦無裁き、俺は軽く感動した。
「成敗ッ!!」
「おし、やったなキャロル!」
「ええ、これで一矢報いたかと」
三人は地面に倒れ、酷い有様になっていた。
同情の余地なし。完全な自業自得である。
さて、ダイヤモンドの回収を。
おや。
「ユメ、ダイヤモンドを全て確保した」
いつの間にか、クソ分厚い金庫をソウルフォースでこじ開けていたようだ。
「よし、これでダイヤ奪還作戦は完了だ」
「まって、ユメ」
「どうした、ネーブル」
「……嫌な予感がする。さっきから、背中がビリビリする」
「む……」
ネーブルの『ライジン』による予知能力は、本物だ。
「ゼファ、あの三兄弟を縛り上げたあとに、状態異常だけ回復してやってくれ」
「分かりました。あの……ユメ様」
「ん?」
「わたくしも嫌な予感がするのです。気を付けて」
「おう、大丈夫だよ。きっと」
なにかも上手くいくさ。
そう思っていたその時だった。
天井に大きな穴が開き、禍々しいエネルギー体が降ってきた。
「……ぐっ!! なんて力だ……!!」
俺はそれを『闇』で防いだが、ものすごい力だ。
どんどん押さえつけられて、地面に倒れそうだ。くそっ!
「ユメ!!」
「俺の闇でここまで押されるなんて!! フォース、ネーブル……キャロルも手伝ってくれ!!!」
「て、手伝って無理でしょ、こんなの! フォースのスーパーノヴァ並みの火力よ」
ネーブルはお手上げだった。
キャロルも頭をブンブン振って、無理を強調していた。
「なんて強い力……でも、負けない」
フォースは目と閉じ、手を紫のエネルギー体に向けた。
「……お!」
わずかだが、エネルギー体が押し戻されていく。
すげぇ、本場のソウルフォースはやっぱり違う。てか、俺も使ってるけど、弱すぎてダメだ。もっと修行しておくんだったな。
「――――――!」
おぉ、どんどん押していく。
ソウルフォースの『バランス』はより強く、鮮明にエメラルドグリーンのオーラを発し――邪悪な紫の力をついに押し出した。
「すげ……」
あんな城ほどあったエネルギーの塊を返してしまうとはな。
「よくやった、フォース……!」
しかし、フォースは無茶をしすぎたようで――倒れた。
「フォース!!」
俺は、瞬時に彼女の体を抱えた。
「……ごめん、ユメ。あれは……魔神の力。とても強力だった…………から」
「すまない。もう少し早く気づければ、お前に無茶をさせることもなかったんだが……。頼むから、消えるのはよしてくれよ」
ソウルフォースは、ある一定の力を超えるとバランスが崩壊し、体が消滅してしまう。極魔法使いであれば、簡単には消えないが、それでも心配はある。
「消えないよ。ずっとずっとユメといたいもん」
「……ああ、俺もだよ」
安心した。
以前、魔王の幹部との戦いでは消える寸前までいったからな。もう二度とあんな無茶はして欲しくないものだ。
「ネーブル、フォースを頼む」
「了解。ユメ、行くのね」
「ああ、敵は魔神だ。間違いなく……魔神・アトラスだ。まさか、この国にいたとはな……完全に油断していたぜ」
いいぜ、決着をつけるならつけてやる。
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