第15話 魔神の幹部
火の大国。
砂漠と岩漿地帯が大半を占めており、オアシスと呼ばれる場所に国はある。だが、そのオアシスに辿りつくには、火壁――ファイアウォールとも呼ばれる巨大な火山を突破せねばならない。
よって、火の大国は、火山の要塞とも呼ばれている。
「あついなぁ」
「そうですねぇ……」
さすがのゼファも暑苦しい修道服は脱ぎ捨て、今は白ビキニ姿だった。
普段は肌の露出がかなり少ないので、貴重なシーンである。おかげで大変、目の保養になっているし……うむ、あの全てが愛おしい。特に恥じらっているあの初々しい感じはたまらん。俺は思わず興奮した。
ネーブルは、もとから軽装なのでいつもの姿。以下略とする。
フォースはなぜか黒のシャツ一枚とギリギリセーフな様相。つっても、普段とあんまり変わらないが、ただし――俺のシャツなのでサイズが合っておらず、ぶかぶかだ。膝のあたりまで裾が落ちて、生足が強調されている。
「キャロルは……」
「私はスク水です!」
「そうか」
先へ進もう。
「ちょっと! ユメ、なぜ私には関心がないのですか!? もっと見てくださってもいいのですよ。ほら、ほらほら」
グイグイ体を寄せてくるキャロル。
そういえば、あの猫耳と尻尾は本物だったんだ。
「うん、キャロルは可愛いよ――――って、モンスターが現れたぞ!」
ソウルフォースで検知した。
地面だ。
俺はキャロルを拾い上げ、後方へ飛んだ。
「おっと、レッドスライムか……む?」
おや……? レッドスライムのようすが……。
グネグネと形を変形させ、触手のようなモノを生やした。
あれでは、まるでオクトパス――いや、それよりも性質が悪いかも。
レッドスライムは、デビルレッドスライムへと変態し、襲い掛かってきた。
「なー!?」
凄い勢いで触手を伸ばしてくる。
「って、あああああああああ!! ゼファが触手に絡めとられてヌメヌメに~~!!」
「ユメ……そんな具体的に説明しなくても」
「いや、ネーブルよ、事実は事実だ」
「そうだけど、うーん。参ったな、これじゃライジンも使えないじゃない」
ゼファを巻き込んでしまうな。
「けど、俺の闇で――あれ、キャロルは?」
「キャアア~~~!!!」
なんかもう触手に囚われていた。
「あ……」
しかも、手足を拘束されている。
「ふむふむ」
「ふむふむ……じゃないわよ、ユメ」
ネーブルがキレかけている。
「けどなぁ、二人もああなっちゃあ……あれ、フォースは?」
「え……」
気づくと、フォースも触手に!!
「油断した……」
「油断したのかよ!?」
フォースは、逆さまの宙吊り状態にされてしまっている。
謎の光が射してしまい、肝心な部分が見えないッ。クソ! どうしてこんな時に、謎の光が!!
「このままじゃ、全員とんでもないことになっちまう!! ネーブル、お前は下がって――――あ」
「イヤアアアアアアアア~~~~~~!!!」
ついにネーブルまで捕縛され、服をビリビリ破られていた。
「…………なるほど」
「なるほどじゃなあああい!! ユメ、助けてよおお……」
少し見ていたい気もするけれど、このままでは皆が酷い目に!
いや、すでになっているけど、そうはさせない。
『――――――ダーク・ヘルズ・ディメンション!!!』
全触手に次元の裂け目が発生し、切断した。
俺は落ちてくる全員を超高速移動で拾い上げ、安全に着地させた。
そして、ダーク・ヘルズ・ディメンションの暗黒の稲光がデビルレッドスライムに喰らいつき、バキバキと飲み込んでいった。
俺の闇は生きているから、モンスターを捕食するのだ。
「ふぅ~~~! こんなところか」
出てもいない汗を拭って、俺はみんなの方へ向き直――――
「そや、ネーブルは裸だった」
「み、見ないでよ……!」
「しゃーないな、俺の服を貸してやるよ」
ダーク・ヘルズ・ディメンションに手を突っ込み、服を取り出した。
ちなみに、このディメンションは、アイテムボックスにもなっているのだ。
「ありがとう、ユメ」
ネーブルは嬉しそうに、俺の服を抱きかかえた。
つっても、ジャージだけどなっ。
◆
【 火山・ギガボルケーノ 】
標高3000メートル級の火山は、活発で灼熱地獄だった。
「あつーい。もう、どうして、火山はテレポート禁止区域に指定されてるの~」
フォースは舌を出し、参っていた。
そう、テレポートできれば楽勝だった。だが、火山は特殊なフィールド故にテレポートやワープ類は禁止されている。面倒だ。
でも、火山さえ抜けてしまえば、すぐにテレポート可能になる。
「あと少しだ。我慢するんだ」
「……うん」
とぼとぼ歩いていると、奥の方から鈴の音がした。
「ん?」
チャラン、チャランとリズムよく鳴っている。
あれは……人か?
ゆっくり歩いてくる人間らしき人影は、鈴を鳴らし――
「…………なっ」
一瞬で目の前に現れた。
あんな遠かったのに、瞬く間に!
俺との距離、僅か。
コイツは……なんだ。
色黒で筋肉ムキムキの大男。鬼のような形相、恐ろしいタトゥー。
「我は魔神・アトラス様のクリーチャーの中で一番に属する者だ。……貴様を殺す」
なるほど、こいつはアトラスの幹部ってところか。などと、分析していると、大男は凄まじいスピードで拳を振り上げてきた。
俺は、そのマッハで飛んでくる拳を、掌で押さえ込んだ。
「……なんだと!? 馬鹿な、我が拳は岩をも砕く破壊拳だぞ……!」
「あぁ!? テメーに構ってる暇はねえええんだよおおおおッ!!!」
「!?」
『ダークエンチャント』
「んなッ……拳が黒く……ぐがあああああああああッ!!!」
ミシッと敵の拳が砕けていく。
「アトラスに伝えておけ。今はダイヤモンドの奪還で忙しいってな!! ――っらあああああああああああああああああッ!!!」
闇で大男を、空の彼方へ吹き飛ばした。
「お見事です、ユメ様。こういうのを確か、『ほーむらん』と言うのですよね」
「ありがと、ゼファ。そそ、前に教えたよな」
ゼファの美しいスマイルを戴いたところで、下山を開始した。
もうすぐ到着だ。
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