表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

100/176

第94話 六人の権力者

 テスラも食事へ向かった。

 また入れ替わるようにして、フォースが俺の部屋に入ってきた。だが、様子がヘンというか、顔を(しか)めていた。


「………………」

「ど、どうしたよ。なんか顔が怖いぞ」


「……ユメからテスラの匂いがする……」

「え……!」


 まず、あの甘い匂いが移っていたか……。


「あ、ああ……さっき俺の部屋にいたからな。それで匂いが残ったんだろう。俺じゃない、部屋だ」

「…………ほんと。じゃあ、確認する。抱っこして」


「い、いいぞ~」


 俺は、正面からフォースを抱っこした。

 すると、フォースは鼻をスンスンさせ、俺の身体に染み付いているであろう……残り香を()いだ。まずい……。


「…………やっぱり、テスラと同じ。むぅ!」

「怒るなって。彼女はずっと独り身だったからさ、寂しかったんだよ」

「そうなの~。じゃあいいけど……むぅ」

「もう、(ふく)れるなって。ほら、いっぱい抱っこしてやるからさ」

「……うん」


 渋々(しぶしぶ)とフォースは俺に身を預けた。


 あぶねーあぶねー。

 嫌われるところだった……。



 ――さてと、外の状況は……変わりなし。


 相変わらず猛攻が続いている。だが、こちらも兵器でどんどん敵軍を減らし、殲滅(せんめつ)していた。敵の数が減ると、また後からわんさか湧いて出てきていた。キリがないが、こっちもそれ以上で迎え撃っているので安全は確保できている。


「フォース、明日、敵本陣を討ちに行く。いいな」

「決着をつけるんだね。いいよ、あたしはユメについていく。みんなも来るよ、きっと」

「そうだな。みんなで行こう。そして、この悪夢から覚めるんだ」


「……分かった。ひとつ言っておくね」

「ん」



「タイムリープはもう二度と出来ない。以前、100万回行った。その間でたくさんの過去改変が起きたの。その修正も大変だった……。だから100万回掛かった。……あれは、あたしの罪。とても苦しかったけれど、でも、こうして今はユメと幸せ。だから、これ以上……過去(イテ)現在(ミサ)未来(エスト)も壊したくない」



 フォースの『100万回の奇跡』のおかげで今がある。

 その100万回の間に何があったのかは、全てを聞いても時間も足りなければ、理解も追い付かないだろう。様々な要素や過程、因果律のうえでようやく、世界は正しく再構築され、成り立った。


 そう、この世界へ修正されるのに『100万回』だ。


 それは、とても重い。

 そんな言葉ですら足りないほどに。


「気持ちは痛いほどによく分かった。タイムリープは二度と使わない」

「良かった。使う可能性を少しでも示唆(しさ)すれば、あたしはユメを嫌いになるところだった」

「フォースの嫌がることを強要するわけないだろう。言ったろ、100万回愛してやるって」

「うん、ユメ♡ 大好き♡」

「俺もだぞ~。今日も特等席を触っていいか」

「いいよー♡」


 いつも以上にフォースは甘えてきた。

 ……よしっ。今日は思いっきり可愛がろう。



 ◆



 俺はみんなをリビングに召集し、明日の計画を話した。


「その秘密結社・メタモルフォーゼを倒せばいいのね」

「そうだ、ネーブル。テスラが言うには、敵は六人いるらしい。そうだろ?」


「はい。各属性国の裏社会で、大きな権力を持つ人たちです。その六人の名を『アインス』、『ツヴァイ』、『ドライ』、『フィーア』、『フンフ』、『ゼクス』といいます。その中でもフィーアは、儀式の研究をしていたようで、妻を魔神にしたほどです」


 その情報は初めて聞いた。


「まて、妻を魔神だって……?」


「ええ、詳しいことは分かりませんが、魔神の名を『ディオネ』と言ったかと思います。彼女もまた『ナイトメア』の研究を進めていたと」


 そうだ。

 ディオネは確かにナイトメア研究をし、俺たちをかなり苦しめた張本人だった。……そうか、あのナイトメアも今回のも、この為に。


「ヤツ等は、最初から最後まで裏でやりたい放題やってたってわけだな」

「その通りです。そして、この戦いに勝つには、秘密結社へ突入し、彼らを倒すしかありません。ですが、彼らも一枚岩。一筋縄ではいきません」


「覚悟の上だ。よし、最後に確認する。ゼファ、ついて来てくれるか?」


 ゼファは祈るようにして、俺を真っすぐ見つめた。


「もちろんです。わたくしはユメ様を、みんなを支援いたします」

「ありがとう。次は、ネーブル。この前、負傷したし……俺としては無茶はして欲しくない。でも、無理強いもしたくない。だから……」


「ついていく。ひとりで残ってなんてられないよ。今度は(そば)にいるし、いざとなったらユメが守ってくれるって信じてる」


 ……考えるまでもなかったな。

 そうだ、昔も今も、これからも俺は皆を守っていくんだ。


「分かった。ぜひ来てくれ」

「うん!」


「フォース。返事は分かっているが、聞かせてくれ」

「この先の未来は、あたしのソウルフォース――『炯眼(けいがん)』をもってしても読み取れない。つまり、確定した未来はないの。自分で切り開いていくしかない。でも、ひとりでは無理。みんなで行こう」


「ああ、必ず勝とう。

 ……最後にテスラ。キミはもうパラドックスの住人だ。最後までついて来てくれるよな」


 拳を強く握りしめるテスラは、吹っ切れた顔で瞳を輝かせた。

 もうあの(うつ)ろはそこにはなかった。


「私は、皆さんの為に全力を()くすことを誓います」



 全員の想いは受け止めた。



 デイブレイク(夜明け)を待ち――出陣だ。

応援ありがとうございます。

もしも面白い・続きが読みたいと感じましたら

ぜひブックマーク・評価をお願い致します。

下の【★★★★★】を付けて下さると

大変励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ