第2話
「女の子だ。女の子が一人でいるぞ!!」
「魔物に襲われる前に保護しろ!!」
女の子と言われ、自分の姿を確認する。
まず最初に目に写ったのは、小さく瑞々しい綺麗な手。
衣服は濃い青のボレロに白いワンピースのスーツ風ドレスで、首元には大きなリボンがあった。
夢の中で夢だと思っていたが、何か違和感を感じた。
僅かに生前の記憶を思い出す。
ハッとなり心臓の鼓動を確認するため、胸に手を当てると、しっかりと鼓動はあるのだが、胸が無くなっていた。
現実に引き戻され始めていた。
あれれ? 確かサービス終了イベントのカウントダウンで、心臓が止まって。画面見たらメッセージがあって、こちらの世界に…とか。
騎士が馬から降りると、目線を合わせるためにしゃがみ込み、優しい声で話しかけてきた。
「お嬢さん。アルファンスの街から逃げてきたのかい?」
アルファンスの街とは今でも燃え続けているあの街のことだろう。現状が把握できないままコクリと頷く。
アルファンスの街? アルファンスの街? 何処かで…。あぁ。アレだ。聖騎士への転職イベントで何回も付き合わされたことがある…あの…アルファンスの街…なの?
ぼーっとするあたしの頭を「大丈夫、大丈夫」と言いながら撫でる騎士に、別の騎士が乗馬したまま近付いてきた。
「ローレンツ隊長。駄目です。街は、火竜が門の一部を溶かしてしまい開閉ができないため、出入りすることが出来ません」
ローレンツ隊長と呼ばれた騎士は、しゃがんだままこちらを見る。
「君は…どうやって街の外に出たんだい?」
街の焼ける匂い、精巧に描写される騎士の鎧、馬の足音、肌で感じる朝日の暖かさと足の裏に感じる小石の感覚。ここまでリアルだと、これ夢じゃないよね?
まさかゲームの世界!? もしかして!?
「ス、ステータス!?」すると『ステータス』画面が視界に投影された。
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○名前:レオナ・カレンベルク(人間・女性5歳)
○職業:吟遊詩人(Lv1/99)
○能力:体力120
筋力147
魔力113
○習得:演奏聖歌Lv10
演奏金管楽器Lv10
演奏木管楽器Lv10
演奏打楽器Lv10
演奏弦楽器Lv10
○加護:音楽の女神
月と祭りの神
闇と声の魔神
○称号:歌姫
音律の伝道師
○状態:正常
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「い、いや、ローレンツだ。私の名はステータスじゃない」
どうやら隊長さんは、ステータスを知らないらしい…。