第1話
幼女が頑張る話です。
第一章はずっとプロローグ的な位置づけになります。
その日、その時間、その場所、その地点、その人物、その現象に。
運命と神意が交差する。
富山 照子(47歳)は、25年も続いたサービスの終了を迎える旧式MMORPGのイニティウム・ヴィータ・オンラインにログインしていた。
なんと照子は、βテストからじゃないものの、公式サービスが開始された当日から現在まで一日も欠かさずログインするほどの廃人であり有名人であったため、皆勤賞を接続数643名の前で授与されていた。ちなみに皆勤賞を受賞した人は照子を含めて3名だった。
『みんなー。ありがとー!!』
画面上では、可愛いロリっ子ドワーフのリルリルが、ワールドチャットと、定形ジェスチャーで喜びを表現していた。
25年だ。
仮にロリっ子ドワーフの中の人が、小6から始めたとしても、既に37歳前後だ。
その事実を誰もが微笑ましいと感じていた。
そして、サービス終了を告げる3分前からのカウントが開始される。
179、178、177、
照子は、最後の最後に打つコメントを悩んでいた。
そのとき、包丁が胸に刺さったような激しい胸の痛みに襲われる。
胸に手を当てると心臓の鼓動がない…。
照子は、あっ、あたし、死ぬんだ…と直感した。
89、88、87、
ゲーム内では、カウントダウンが続く。
しかし、画面をよく見ると…。
『あなたは間もなく死にます。こちらの世界に来ますか?』
照子は…最後の力で、『はい』をクリックした。
目覚めて最初に見たものは、真っ赤に染まる空。
それは夕日などではない。
真っ赤に燃え上がる街の炎が空に映し出されたものであり、幾度も火炎ブレスを吐き散らす、大空を舞う巨大な火竜の姿をみれば、その原因は一目瞭然である。
人々の叫び声と断末魔、教会の鐘が激しく鳴り響き、人の命が炎に巻き上げられ天に帰っていく。
夜が明けるまで、ずっと大火災の様子をただ見ていた。
そして、朝焼けに照らされた廃都の姿に、何故か、その惨状を美しく儚く感じ合掌する。
どうぞ安らかに静かにお眠り下さい…。
巨大な火竜が街を燃やし尽くして飛び去った後、「生存者だ!!」という声が耳に届いた。