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クエリ大激怒

……激動の朝がやってきた!


 いつの間にやら眠っていた俺は、部屋の扉をぶっ叩く爆音で目を覚ました。何が起こったんだとびっくりして飛び上がったが、考える必要はなかった。一人の少女が猛烈な勢いで部屋の中に入ってきて、俺を見つけるなり寝間着の胸ぐらを掴んだのだ。


「レイル・フリークス! お前、妹をどこに連れて行った!」


「は、はい?」


 寝起きで頭が働いていない状態で、頭をブンブンと揺すられる。俺よりも身長の低い彼女は、まるで猫でも持ち上げているかのように軽々と俺を宙に浮かせ、刺すような目つきで睨みつけている。


「あなたは……クエリ……様?」


「ええそうよ! サーシャの姉、クエリ・ストランド! さあ、言いなさい! サーシャをどこに連れて行ったの!?」


「うう……彼女は……あの……」


 俺が何か言葉を発しようと口をパクパクさせていると、クエリの後に続いてもう一人少女が入ってくる。その子とは言葉を交わした記憶はなかったが、確か最初の会議室の場にいた記憶がある。


「まあまあ、落ち着いてくださいクエリさん。サーシャちゃんならきっと大丈夫ですよ。とりあえず彼を下ろしてやってください。まずはお話を伺うところから始めましょう」


 もう一人の少女がそう言うと、クエリはフン、と不満げな声を出す。彼女は突然手を離し、俺の体は柔らかなベッドの上でポンと跳ねた。


「悠長なことを言っている場合ではありません! 早く妹を見つけなければ……」


 クエリは明らかに冷静さを欠いている様子だが、もう一方の少女は穏やかな表情である。彼女はベッドの上で目を白黒させている俺に向かって丁寧に礼をすると、


「初めまして……でもありませんね。でも自己紹介するのは初めてでしょう。私はキエラ・ニージェと言います。私も十二聖剣の一人、第七剣を拝命しております。クエリさんのことは……もうご存じなんですかね?」


「まあ……一応……」


 アメリアの部屋まで案内してくれた人、そして、行方知らずのサーシャの姉だという人。俺の中の認識はその程度だったが、男一人を軽々と持ち上げる剛腕の持ち主という属性が記憶の中に追加された。


「アメリア様から命令を受けて我々がやってきました。本当はオスローさんが来る予定だったのですが、クエリさんがどうしても、と。……まあ、その話は置いておいてですね」


 キエラはテーブルの前から椅子を引っ張ってきて、俺の正面に陣取るように座った。


「十二聖剣の一人が行方不明──これは言わずもがな、非常事態といえます。一刻も早くサーシャさんを探し出さなくてはなりません。しかし、道に迷って行き倒れになるような人ではないでしょうし、動物に襲われたとて彼女なら撃退も容易でしょう。ましてや、ここは勝手知ったるバイネルですからね」


 キエラはちらっと横目でクエリの方を見た。クエリは憤慨した表情で朝日の差し込む窓の方を見つめていた。キエラは再び視線を俺の方に戻してさらに喋った。


「しかし気になる情報があります。周辺住民方の目撃情報と、あなたが報告した徘徊する"呪いの人形"の件です。今回の失踪、この噂話と無関係だとは思えません」


「それについては同感です」


 俺はベッドの端に座りなおして、クエリと改めて向かい合う。


「昨晩、俺は彼女とその噂話を確かめるために湖の畔に行ったんです。そうしたら突然、何かを見つけたように彼女が走りだしました。俺も後を追ったんですが、とても追いつかなくて……。その後、俺はあの不気味な人形のようなものと遭遇したんです」


「うーん、人形ですか」


 キエラは顎の下に手を添えて、探偵のような格好で思案している。


「噂以上でしたよ。徘徊なんて生ぬるいものじゃなかった。俺の顔面目掛けて殴りかかってきましたからね」


「……十二剣聖の会議の中でも、ちらっとだけ話題には出たんですね。でもまあ、よくある下らない与太話だろうとあまり真に受けていなかったんですが。ケイスさんだけは妙に熱心でしたが……」


「ケイス!」


 その名前が出た瞬間、そっぽを向いていたクエリが突然激怒の視線で俺を睨んだ。


「そうよ! 元はと言えば、ケイスがサーシャに訳の分からない任務を押し付けたのが悪いんじゃない! 断じて許されることではないわ! もし妹に何かあったら……」


「まあまあ……。誰かが調査をする、という話で結論付けたのも確かですから。サーシャさんが任務に就いたのはたまたまのことで……」


 キエラは宥めるようにクエリに言うが、彼女の瞳の奥に燃える怒りの炎は、いよいよ勢いを増すばかりである。彼女は再び俺の方をキッと睨んで、


「あなたも! 何故彼女から目を離したんです! あの子は自由奔放な人間なのですから、常に見張っていなければ駄目じゃないですか!」


「いや……しかし、彼女の速さに付いて行くのは並大抵のことではなく……」


「鍛え方が足りないんです! 全くあなたは……」


「まあまあ、まあまあ。とりあえず落ち着いて、水でも飲んでくださいな。私、取ってきますから」


 掴みかからんとする勢いのクエリをキエラは何とか押さえつけて、丸テーブルの前に何とか座らせる。彼女は俺の方に近寄って耳打ちをして、


「妹さん思いのいい人なんです、普段は。済みませんけれど、分かってあげてくださいね」


とボソッと呟いた。


 


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