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三大悪と呪い

 エントリア警備部・東部基地があるシュトラという街へは、列車を使って二時間程。エントラに向かった時と同様、相向かいの席に座ったオスローは、車窓を眺めながらぼんやりとしている。他の隊員たちは、まるで遠足にでも行くような騒ぎようで馬鹿笑いを続けている。


「……そういえば、聞きたいことがあるんだが」俺は出し抜けに、オスローに話を振った。


「ん? なんでしょう」


「フェリさんやチリン様も話題に出していたけれど……"三大悪"っていうのは、一体なんなんだ?」


 彼らの話の中でしばしば、脅威の象徴として語られるその単語。しかし色々とバタバタしていたせいで、結局出発の段になっても聞きそびれていたのだった。俺が質問すると、オスローは気だるげに溜息を漏らす。


「なんだろう……リーベルン屈指の実力者、とでも言えばいいかな。あの国の軍隊を統率して、エントリアを襲っているリーダー格っていうわけ。……ほら、以前国境沿いの襲撃の時に、一瞬見かけたでしょう?」


「ああ……」夜の影の中に生える、やる気の無さそうな顔が脳裏に浮かぶ。「あいつか……! 思い出した」


「彼女は"三大悪"の一人、ルキ・リダラス。二刀流の達人にして、リーベルンの最高実力者の一人。私たちも随分……手を焼いている」


「そうなのか?」オスローは俯きがちにそう言うが、俺は少々腑に落ちない。「なんというか……以前君が交戦した時には、随分と圧倒していたように見えたけど……」


「それは気のせい」しかしオスローは首を振る。「あいつの実力はあんなもんじゃない。多分あれは、なんというか、散歩に来ただけだと思う。もしあいつが本気だったら……多分みんな、戦いに巻き込まれて死んでいたと思う。少なくとも、ルキはとても強いよ」


 俺の心臓がどきりと大きく脈打った。本当に? あれだけ凄まじい炎の力を操るオスローが手を焼くほどの相手なのか。あのやる気の無さそうな女剣士が……。しかしオスローの深刻そうな表情は、彼女が決して冗談を言っているわけではないことを如実に示していた。


「私たち"十二剣聖"は、聖剣に秘められた力を借りて、戦っている……」


 オスローは自分の膝の上に乗せた赤い鞘に視線を落とし、慈しむような表情を浮かべた。


「聖剣は常識外れの力を、私たち人間に授けてくれる。そのおかげで、聖剣に選ばれた私たち"十二剣聖"は、他の人間に対して絶対的に優位な存在となれる……だけど、まあ、どんなことにも対抗軸というものが現れるものなのね」


「つまり?」


「"三大悪"の連中は……"呪い"って呼ばれる力を使える人たちなの。私たちにもそれがどういうものなのか、よく分からないのだけれども」


 ……どこかで聞いたことがあるような気がする。"呪い"。俺は膝の上に載っている黒い刀をちらと見た。思い返してみれば、俺はこの黒い刀の"呪い"のおかげで今生きているわけだ。この悪魔に取り付かれた刀を俺に授けた"主様"とやらがどんな人物なのか知らないけれど、もしかするとリーベルンの関係者なのだろうか。そう考えてみると、その人物が"十二剣聖"に怒りを覚えているというのも自然なことなのかもしれない……。様々な考えが、一瞬で頭の中を駆け巡った。


「"呪い"のもたらす力は、私たちの聖剣の能力と肩を並べるほど。変な話、"三大悪"の連中が出張ってきたら警備部の隊員たちでも相当苦戦すると思う。……今回の作戦はまあ、ちょっと面倒くさいかもね」


「だからこそ、あのチリンって子が着いてくるんだろう? それに君も……」


「ええ、そうね」


「あの子も"聖剣"の力を使えるんだろう? モラートっていう隊員が、是非とも拝みたいって騒いでた」


「でもまあ、"三大悪"の襲来というのがデマ話で、二人とも聖剣の力を借りることもない、というのが理想。……大体あいつらが戦闘に絡んでくると、ろくなことが起こらないんだもの……」


 オスローは憂鬱そうにそう言うと、再び視線を窓の外に戻してしまう。その目は車窓外の風景に向いていたけれど、何も見ていないかのように虚ろだった。

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