天変地異
いつもの通学路から見える景色が荒野になった。
荒野の、奥にはジャングルが見える。
何が何やら分からないウチに何者かが背後から俺を転ばせて押さえつけた。
辺りに充満する鉄のような臭いと赤い地面
俺が知ってる通学路が後ろにあるのに帰り道は未知に満ちていた。
俺を押さえつける奴もおかしい
赤い皮膚に濁った黄色いの瞳、鋭いキバ、俺の肩を押さえつける手は指がうじゃうじゃと10本あり汚らわしい
俺よりもはるかに重い体格も2mは軽く超えているだろうと予測がつく。
冷静にモノローグを語っているように見えるけどこう見えて非常に焦っている。
背後の鬼が何故か腰についてる棒切れをグリグリ押し付けていたりするからだ。
髪の毛に奴のヨダレがついてしまった。
明日は床屋に行ってスキンヘッドにしよう。
恐怖よりも気持ち悪さが先行する。
お伽話に出てくる妖怪の筈なのだが
人型のゴキブリみたいな妙に敵愾心を煽る。
鬼の指を引き剥がそうとしながら辺りを観察する。
荒野には某有名RPGに出てくるような馬車
馬はいない、辺りに白い棒切れが散乱しており
小鬼が尻からひき肉を放り出して肉団子をぶつけ合う遊びに夢中らしい。
別の小鬼はヒョロッとした優男の腕の肉を剥いで骨に彫刻をしていた。
優男の瞳は既に現実を見ていない。
別の小鬼は戦利品を見せびらかすように首輪をつけた女の子を引きずって
ある小鬼は馬のように黒髪の美しい女性へムチを与えている。
耳の長い金髪の女性を縛っている。
馬車にいたであろう三人の女性が小鬼に囲まれている。
それを理解した時には体が動いていた。
本当にキレた時ってのは頭が逆に冷える。
無造作に近くに転がっていた拳大の石を掴み押さえつける手を打ち据える。
じいさんが古武術の達人でいろいろ仕込んでくれたおかげで動けている。
1回
2回
3回
「グギィ」
自由になった左腕に力を込める。
もう片方の手は指を自由になった左手でむしるように折る。
痛みに悶えているうちに脱出した。
すぐに走る。
リードを引っ張る鬼にはナイフのように突き出して目を抉る。
苦悶に悶え苦しむ鬼の首を踏みつける。
ゴキリと鈍い音を立ててそいつは死んだ。
お馬さんごっこをしている小鬼の頭を背後から蹴倒す。
しっかり首踏んで潰す。
ムチを奪い
縛られた女性のヒモを解くのは難しいから
腕に彫刻をしていた小鬼をムチで絞め殺す。
手に持っていた彫刻刀でヒモを切る。
女性に彫刻刀を渡しておく
「他の人を助けてあげて」
女性は馬車に走る。
俺も走る!
小鬼が汚い口をあけて威嚇するが金髪の女性は
意に介さず彫刻刀を突き立てた。
俺も小鬼をぶん殴り喉を潰す。
「がああああああああああ」
俺を押さえつけていた鬼が雄叫びをあげる
痛みから復活したようだがあれに勝てる気はしない
「逃げましょう」
とりあえず全員の安全を確保した。
腕に彫刻された男は死んでいた。
他のにも何人か男はいたが全員死んでいた。
「分かったわ」
「了解」
「みんな無事!ケガはない?」
「お尻が痛いですわ」
それぞれ肩を貸したり借りたりしながら走る。
森の中に入る
俺は殿だ!
俺の他にも狐耳の女の子と黒髪の女性、金髪のエルフさんが馬車にあった武器を持って殿を務めるようだ。
逃げる!足場の悪いジャングルを駆ける。
鬼が適当な石を投げながら追い詰めようとする。
自然と怖いとは思わなかった。
いや、怖いけどそれでも動けるように仕込まれている。
大きな広場のような場所に山のような、高層ビルのような巨木、巨大な恐竜のような骨が木を守るように寝ている。
骨の額にはある意味、見慣れた日本刀の柄が見える。
鬼が迫っている。
俺は日本刀の柄を掴む、無理矢理、引き抜く
何年ここにあったか分からないがそいつは濡れた肌をした日本刀。
これならいけるか!
三人が骨の側に隠れる。
他の女性も骨の影に隠れている。
全員、体力の限界なのだろう。
鬼が広場に入ってきた。
手頃な大きさの木を引っこ抜いたのだろう。
右手には俺の身長以上の木を持っている。
俺は静かに平らな地面におりた。
怖い、けどやるべき事は分かる。
ここで戦わないと死ぬ、俺がヘマしたら全滅する。
ここで女性たちを見捨てるという選択肢はなかった。
それは男としてじいさんから仕込まれた武術がその選択肢を選ばせない。
手には日本刀、太刀というものだろうか!
いつも使ってる竹刀と同じ長さだ。
重さは素振り用の木刀程度だろう。
これなら扱える。
鬼と対峙する
一歩
二歩
三歩
四
今!
俺と鬼は同じタイミングで斬りかかる。
あいつは俺の頭を潰そうとする。
俺は鬼の手首を切り落とした。
素早く背後に周り脇腹を裂く。
膝の裏を刀で突き刺し膝をつかせる。
これで首をた
鬼の肩が人間ではあり得ない動きをし、俺をなぎ払った。
「げぁっ」
息が止まる、背中が熱い、腹が無くなったのではないかという衝撃
クソが!
膝が震える
早く立たないとあいつに殺される。
あいつも膝をやられているから立てない。
肩もおかしな方向を向いて動かせないようだ
人体の構造に近くて助かる。
俺は足を引きずりながらあいつの首を断つ。
手首から血のようなもの出している鬼に刀を振り下ろす!
「おらあああああ」
ゴロッと首が落ちて体は力を失った。
首を断たれた鬼は砂のように消えていった。
あれだけの脅威が骨も残さずに消えるというのはなんか納得がいかんがそういうものなのだろう。
助けた女性たちが走り寄ってくる。
俺は刀を下ろして座り込んだ。
「これを」
差し出されたのは漆塗りの鞘で螺鈿なのだろうか赤いキラキラした物がついている。
「ありがとう」
俺は周囲を確認しつつゆっくり刀を収めた。
「助けてくれてありがとう」
狐っ子が飛びついてきた。
「うわっ!」
びっくりしたけど、とてもやわっこくて生きてるって感じがしてとても落ち着きます。
「早くここを抜けましょう、ここはまだ魔物の領域よ!」
20代半ばくらいだろうか赤髪の姉御って感じがする女性が号令をかけた。
「でも、どっちに行けばいいの?」
俺はスマホを見る、アンテナは正常だ
素早くGPSアプリを起動するときちんと機能する。
地図が歪んでいるが現在地から自宅までは遠くない。
「とりあえず、俺の家に避難しませんか?」
「それは有り難いが魔物の領域は磁気が狂うから方位磁針も使えないぞ?」
「大丈夫です。これがありますから」
俺を先頭に歩き出す、みんなもついてきてくれた。
周囲を警戒しつつも簡単な自己紹介をした。
「隼人はなんであんな場所に?」
「俺は学校の帰り、いつもの道を歩いていたら荒野にたどり着いた」
何を言ってるか分からねぇーと思うけど
「あたしも神社からのおつかいが終わって帰る時に地揺れがあって気がついたら汚い小鬼に襲われてた」
狐っ子・・レナは自分の肩を抱いて震えている。
「わたくしは王家がクーデターされて城から逃げている最中に荒野へ」
・・・ちょっと待ってほしい
「王女さまやこの極限状態で更にヘビーな事実をぶちこまんでくれませんかね?」
クスッと黒髪さん、ナミが笑う。
「追手に関しては大丈夫ですわ。我が国の周囲にあんな荒野とこんな森はありませんもの」
「それを言ったら俺のご近所にもこんな森はないんだよな」
「じゃあなんで帰り道が分かるのよ!」
「GPSが使えるから」
俺以外が全員首をかしげる。
「簡単に言うと人工衛星、人が作った星を空に打ち上げてそいつから見た情報を受け取っている」
赤髪の女性が大声をあげる
「つまり、こいつがあるから道に迷わないってことかい?」
「今は地図がめちゃくちゃだからいつもより精度でないけど」
「さらっと軍事革命的な発明を出すのはやめてほしいわ」
「アンは傭兵だからそういうのには敏感なのよ」
「リューイさま、あんたも商人だ、こいつの価値は分かるだろ?」
まあねとエルフ、リューイは頷く。
「元々は兵器として開発されたものらしいよ」
スマホで電話できるのは話さないようにしておくか?
無理だろうな〜
30分程で森を抜けていつもの通学路になった。
ここから家までは10分もかからない。
「やっと森から抜けらたよ〜」
「休みたい〜」
「しかし、まあ整った道だね」
「それに臭いもありませんわ」
「だね〜街に帰ると、どうしてもウンコ臭いもんね」
いやいや、街がウンコ臭いって下水とかなかったんかい!
「下水道って知ってる?」
「「「「下水道?」」」」
なるほど!よく分かりました!
この様子だとトイレも分からないな!
「ちょっと待って!家に連絡するから」
俺は返事を待たずに母さんに電話する。
「もしもし、母さん?俺はいろいろあったけど無事、母さんの方は?」
「母さんも無事よ?あちこちで変な場所があるみたいなのよ?天変地異にも程があるわぁ〜」
「それで助けた人を家に連れって行ってもいい?」
「友達かしら?何人?」
「6人」
「わかった、じゃあねぇ〜」
よし、帰りますか
俺はみんなに
「後、10分で家につきます」
その後、アンさんに質問攻めされたけど
誤魔化しつつ家に帰った。
「あらあら、ドロドロねぇ〜」
「ただいま!父さんとじいさんは?」
「ご近所で害獣が出たから駆除しに行ってるわよぉ〜」
みんなは俺の真似をして靴を脱いで上がってくれた。
「お風呂溜まってるわよ」
「お風呂!」
レナの尻尾がピィんと反応する
よく分かってないのは4人、ナミは王族なのでどんなものか分かっているみたい。
「3人ずつ入れるからさっぱりしてきてねぇ〜」
「風呂ってなんだ?」
あらあらと母さんが説明をしている。
その間にレナ、ナミ、リューイはお風呂に入るようだ。
流石に汗とかいろいろな液体で体を汚してるから濡れたタオルで体を拭いて一息つく。
ゆっくり風呂に入り母さんの作ったハンバーグを食べてくつろぐ
お風呂で汚れを落とした女性陣の美しさが目を引いた。
レナのミルクのような白い肌に藍色の浴衣を着ていた。
体のラインはメリハリがあり指で押してみたくなるような体をしている。
ナミは日本人と同じ黄色人種のようでハチミツのような滑らか肌をしている。
浴衣は白い生地にピンクの蝶をあしらったもの。
こちらもスタイルはとってもいいけど、なんだか無性に人妻のような熟れたムチムチ感
リューイは肌の白さはレナ以上、これ以上白いと不健康に見えてしまうそんなギリギリを攻めている。
金髪がキラキラと光りを反射している。
着ている浴衣は濃い赤色をチョイスしている。
スレンダーで引き締まったアスリートのようなスタイル。
3人ともスタイルもいいから目のやり場に困る。
アンさんたち傭兵さんは・・・・うん何というか色っぽいけど普通。
あの3人が異常なのだろう。
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「昨晩はお楽しみでしたね!」
ニヤニヤと笑う母さんにもじもじしている三人娘
恥ずかしい〜
「今日はお赤飯かしら?」
マジでやめてください
とりあえずテレビをつける。
アナウンサーが真剣な顔でニュースを読んでいます。
「昨日の夕方に起きた大地震の影響か・・・あのこれ本当ですか?・・エイプリルフールじゃないんですね?」
意を決して
「日本列島の周りに新たに島が発見されました。人工衛星からの観測によると明らかに地球の直径が大きくなってます。」
現在の日本列島が表示される。
馬鹿げている日本列島が8つある。
同じ形の列島が複雑に絡み合っているのが分かる。
「既に調査団が組まれ、明日にも調査に乗り出す予定です。」
これは予想外だ!
下手すりゃ戦争だな。
不穏な事を考えながらも朝食にする事にした。
面倒な事は大人が考えるべき、おいらは気楽な学生さ