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ジャンクな料理で腹を膨らませた俺たち二人は、町から出て郊外を歩いていた。というのも、先ほどの店での出来事が関係している。
「いつ思い出しても腹が立つ……」
「まあまあ、その見た目だとお酒は無理だって」
「見た目で判断しするなど失礼極まりない。俺は魔王だぞ、魔王。魔王に「ワインっていうのはお酒なの。坊やにはまだ早いからブドウジュースにしようね」などと見下しやがって……」
先ほどの店で、飲み物は何がいいかと聞かれたので、当然、俺はワインと答えた。その結果、坊やだと馬鹿にされた。これは全て、俺の姿が子供というのが原因だ。
「まあまあ、子供っていうのは悪いことばかりじゃないだろうから」
「貴様も俺をナメすぎだ! 注文だって同じものでいいと言ったのに、別のものを頼みおって……」
「それは説明したじゃん。同じものじゃなくてお互い違うものを頼んでシェアしたら違う味が楽しめてお得だって」
「それがナメているというんだ。俺は魔王だぞ? その俺から食事を奪い、さらに自分の食事を恵もうとするなんて……非常識だぞ」
「いいじゃない。今は魔王でもないただの子供なんだから」
「おのれ……俺が力を失っていることをいいことに……」
だが、この体では小娘であろうと捻り潰すことなんてできない。だから、俺は郊外へと来たのだ。町の外、つまり、魔物がいる場所へと。
「この辺ならそろそろ、魔物が出てくるんじゃないのか?」
「この辺はまだ……。そっちの森の中にいけば低レベルの魔物が出てくると思う……けど……」
なにか気がかりがあるようだ。
「言いたいことがあるなら言ってみろ。魔王である俺が許してやる」
「その……子供が魔物と戦うのはやっぱり危険かなって……」
「なるほど、それは自重してしかるべきだ。俺は子供ではない。魔王だ!」
全く、これだから人間は……。
「け、けど、剣ぐらいは買った方がよかったんじゃないかな……」
「剣? そんな勇者の武器を魔王である俺が使えるわけないだろ。アホか貴様は」
「いや、剣は勇者だけの武器じゃないと思うんだけどな……」
勇者の武器は剣と相場が決まっている。そんな武器を魔族の中の魔族である魔王が使うなんてあり得ない。
「剣がなくとも、俺には魔法があるからな!」
「魔力奪われて魔法なんて使えないのに?」
「俺には憑依影装がある。これさえあれば、下等な生物からの接触を完全に拒絶する」
「防御力があっても攻撃力がないと勝てないと思うんだけど……」
「それを試すために魔物がいる場所まで来たんだろ。全く、これだから人間は……」
「何だって言うの?」
「下等だって言いたいんだ。それより、お目当ての魔物がいたぞ」
話しているうちに森の中にいる魔物を発見した。