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「ここは……」
無事に、俺の力を奪った不届き者から逃げることができた。
「ここはどこだ? 人間の町のようだが、文明レベルがかなり低いな」
一緒にいた人間の記憶から読みとった場所だ。転移魔法が成功したのはいいことなのだが、町並みが妙に古い。石畳で舗装された道路なんて久しく見ていなかった。
「ここはゴエティアという町です。でも、何で……さっきまで魔王城にいたはずなのに……」
「俺が魔法で移動したんだ。あのままでは死んでいたからな。忌々しい魔族め。魔力が戻ったら欠片も残さず完全に消滅させてやる」
怒りで煮えたぎる心をグッと押さえ込んだ。今は回復に専念しなければ。
「とりあえず、宿でも取って休みたいのだが……それより、人間。貴様、そんなに大きかったか?」
咄嗟に胸を隠していたが、俺が言いたいことはそこではない。
「身長だ。そんなに高くは見えなかったが……先ほどの転移魔法で引き延ばされでもしたか?」
「いえ、私が大きくなった訳ではなく、あなたが小さくなったんですよ」
「小さく?」
自分の手を見ると、今まで見ていた魔王の空間すら引き裂きそうな恐ろしい手ではなく、可愛らしい小さな人間の手のひらだった。
「そんな馬鹿な!」
慌ててガラスを探し、反射する自分の姿を見てみると……。
「そんな……馬鹿な……」
体が縮んでしまっていた。