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9・初めて会う流民  ※ラジアス視点

お待たせしました。

ブクマありがとうございます!

 

 細身の健康的かつ中性的な美少年。

 これが俺がハルカを見た時の第一印象である。



 ユーリの声に呼ばれ駆けつけると、そこには少年がいた。


「で? 急に呼ばれた理由はそこのか?」


 そうユーリに問いかけて少年に目を向けると大きな黒い瞳がこちらをまじまじと見つめていた。

 前髪がやや長めの、短く切りそろえられた黒髪に黒の瞳、この国ではなかなか珍しい色合いだ。


 ユーリはこの少年は流民だろうと言い、さらにはこの子を置いてもう森へ帰るなどと言う。

 この感じだとろくに説明もしていないのではとの疑いはあっさり肯定され丸投げされた。

 拾ってきたなどと簡単にユーリは言うが、俺も流民を見るのは初めてだった。


 どうしたものかと考えていると、帰るというユーリに少年が抱き着いていた。

 なんとも珍しい光景だ。抱き着く人間もそうだが、それをユーリが許しているというのも意外だった。終いには困ったことがあれば呼べとまで言っている。


(いつもは触れられることすら嫌うというのに……短い時間でずいぶんとこの子を気に入ったようだな)



 ユーリを見送った後、名を名乗った俺に少年も返してきた。


「アリマハルカです。よろしくお願いします!」


 見た目も珍しければ名前も珍しい。

 ハルカが名前らしいのでそのまま呼ばせてもらうことにした。

 しかし、先ほどユーリと話している時にも思ったが、身長こそセリアンとさほど変わらないくらいだが声はまだ声変わり前の少年のようだった。

 身体も細そうだし思っている以上にまだ若いのかもしれない。


 そんな子がこちらに流されてきてしまうとは――――

 この後元の世界に帰れないと告げなければならないのかと思うと気が重くなった。




 今後の説明をする前にハルカの目立つ服装を変えてもらうことにした。

 急なことだったので身長の似ているセリアンの服を貸すことになりセリアンの部屋に行く。待っている間にルバートにハルカの部屋の準備を侍女に頼んでくるように命じる。

 ちょうど隊長の部屋が空いているからひとまずそこで良いだろう。

 隣が俺の部屋だがまだハルカがどんな人物かもわからないのでちょっとした監視の意味もある。

 侍女への伝達を終えたルバートが戻ってくるがまだ2人は部屋から出てこない。


「あれ、まだ着替え終わっていないんですか?」

「そのようだな。ちょっと声かけてみるか」


 扉をノックしようとしたところで中から叫び声が聞こえてきた。


「ぎゃーっ!! この変態! サイッテー!」


 何事かと思って中に入ると、バシバシとハルカに叩かれているセリアンがいた。そしてここでセリアンが予想外の言葉を放った。


「ラジアス副隊長! こいつ女でした!」


「「は?」」


 見事に俺とルバートの言葉が被った。

 一瞬固まる俺たちにハルカは綺麗な笑顔を向けてはいるが、目が笑っていない。周りの温度が下がったような気さえする。俺たちはハルカに部屋から追い出された。


「セリアン、ハルカは本当に女なのか?」

「本当ですよ! あー、あんなに髪の短い女がいるとは思わないじゃないですか!」

「確かに。この国の女性は皆髪が長いですからね。よく気づいたな」

「そりゃあ実際触れ……っいや、俺だって勘が働くときがあるんだよ!」

「何を慌てているんだお前は」


 ――ガチャ


 話していると扉を開けてハルカが出てきた。

 女だと言われて改めて見てみれば確かに男とは違う。

 シャツの丈は問題なさそうだがずいぶんとダボッとして見えるし、まくった袖の下から覗く腕は自分たちと違いずいぶんと細い。

 さらには緩いと言って見えてしまったウエストはほっそりと締まっていて男のそれとは明らかに違った。

 一度女だと認識してしまえばそうとしか見えなくなる。

 声が高いというのも当たり前のことで、髪が短いだけで男だと思うとは先入観とは恐ろしいものだ。


 ひとりハルカが女だということを実感していると、セリアンがハルカの胸を触ったなどと言う聞き捨てならない言葉が聞こえた。

 先ほど慌てていたのはそういうことか。

 女性の身体を、ましてや胸を許可なく触るなど言語道断。セリアンの明日の鍛錬のメニューはきつめに設定してやろうと決めたのだった。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 ようやく本題の話に入る。

 この国についての少しばかりの説明と、告げなければならない残酷な現実。


 “元の世界には戻れない”この言葉を聞いたハルカは明らかに動揺していた。膝の上で握りしめられている手が痛々しく感じた。


「帰りたいと願ってもどうすることも出来ない。辛いとは思うがこの国に骨を埋める覚悟をしてほしい」


 そんなハルカに俺はこんな冷たい言葉をかけることしかできない。この状況で覚悟を決めろとは、俺はなんと酷い人間なのだろうか。

 そう思うとハルカの顔を直視することが出来ず、そのまま話を進めようとした時だった。


「おい、お前顔真っ青じゃねーか! おい! しっかりしろ!」


 セリアンの声にハッとする。

 見れば真っ青な顔をし今にも倒れそうなハルカがいた。

 無理矢理笑おうとしているようだがとても大丈夫なようには見えない。

 さすがにこれ以上はやめた方が良いと判断し、ハルカを休ませることにしたのだった。


今回は初のラジアス視点でした。

ラジアスあの短時間ですごいハルカのこと見てます(笑)

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☆3巻電子で発売中☆

挿絵(By みてみん)



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