表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/107

8.第二部隊預かりの身になりました

 

 翌朝早くから迎えに来たラジアス様と共に執務室に向かう。

 執務室に入るとそこにはラジアス様よりも高身長でガタイの良い大男がいた。


「おはようございます隊長。ハルカを連れてきましたよ」


「おー、早くからすまないな。早いうちに会っておきたくてなー。君がハルカか。俺はこの第二部隊の隊長のアラン・フォードだ。よろしくな」


 そう言って隊長と呼ばれた人がニカッと笑った。


「では、さっそく本題だ。昨日聞いたと思うが、ハルカはこの世界に慣れるまで騎士団預かりとなる。時間はかかるだろうが慣れてきたら今後の身の振り方を考えていくことになるだろう。ただ昨日の今日だ。まだ帰れないことに対して思う所もあるだろうから落ち着いたら色々決めていこう。それでしばらくの間ハルカが身を置く場所だが――」


「あ、あの!」

「ん? なんだ?」


 話を進めようとするアラン隊長に私は昨日から考えていたことを言おうと言葉を挟んだ。


「何か私に出来ることがあれば教えてください。雑用でもなんでもやれることがあるならやります。お願いします!」


 私はガバッと勢いよく頭を下げた。

 これは昨日の夜から考えていたことだった。

 この世界で何ができるかわからないけれど、どうやっても帰れないなら今できることを探す。

 悲しんでいたって状況が変わるわけじゃないんだ。



 私の言葉を聞いてアラン隊長は驚いたように、それでいて面白いものを見るように笑った。


「――ハハハ! 以前の流民は泣き叫んでしばらく手が付けられず大変だったと聞いたが……ハルカ、お前は強いな」



 強い? 違う、強くなんかない。

 そうするしかないだけだ。


「私だって泣きたいですよ。でも泣き叫んだら帰れますか? ……できないでしょう? どんなに望んだことじゃなくても私は今ここに、この世界に生きているんだから、生きて行かなくちゃいけないんだから」


 自分に言い聞かせるように答えるとアラン隊長は口角を上げてニッと笑う。


「……気に入った。通常ならハルカは第三部隊預かりになるだろうが……お前の身柄、この第二部隊が預かろう、ラジアスもそれで良いな」

「は! 隊長の決めたことに異議はありません」


 こうして私は第二部隊預かりの身となったのだった。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 話が終わった後、私はラジアス様に連れられ朝食をとるために食堂に来ていた。

 ちなみにアラン隊長は「俺は愛妻弁当があるからな」とデレデレの顔で言われたので別行動だ。

 熊のような大男はかなりの愛妻家らしい。なんだかお父さん思い出すなー。




 食堂はかなりの人で賑わっていた。

 ラジアス様と一緒にいるせいか、はたまた流民と知られているのか多くの視線を感じ少し居心地が悪い。

 トレーに載った食事を受け取りラジアス様と共に席に着くと、そこにセリアン様とルバート様がやってきた。


「おはようございます。ハルカうちの隊で預かることになったんですね。さっき隊長に聞きましたよ」

「良かったなー、第三よりうちの方が良いぞ、きっと」

「それさっき隊長さんに言われたんですけど、私って本当は第三部隊ってところに預けられるはずだったんですか?」



 なんでも王立騎士団は第一、第二、第三部隊とあるらしく第一は王族の警備、第二は王城や国賓の警備に諸外国とのあれやこれ、第三は城下町の警備を担っているらしい。

 そして本来なら流民は第三部隊が担当するらしいのだが、そもそも数十年に一人来るか来ないかなので結構曖昧らしい。


「まあ月白の銀狼殿がラジアス様に任されたわけだし、隊長にも気に入られたのならうちでも問題無いでしょう」


 そう言ってルバート様は優雅にスープを飲んでいる。ルバート様はセリアン様と違っていちいち所作が綺麗だ。


「細かいことはわからないけど、また知らない人ばっかりのところに連れて行かれるより良かったです。ごちそうさまでした!」


 私は目の前で手を合わせる。

 パンとか香ばしくて美味しかったなーと思っていると全部食べたのかとか意味の分からないことをセリアン様が聞いてきた。


「え? 全部美味しくいただきましたけど何か問題ありました?」


 なぜそんなことを聞くのかと首を傾げる。なんだろう。こっちの世界はちょっと残しの美学とかでもあるのだろうか。私はパンひと欠片でも残したりしないけど。


「それ俺たちと同じ量だったんだよな。普通の女はその量食えないだろ。お前やっぱり男……」


 セリアン様がそこまで言いかけたところで今まで黙々と食事をとっていたラジアス様とルバート様の声が揃った。


「「セリアン」」


 ハッとした顔をしてセリアン様が私を見た。


「……すみませんでした」

「何がですか?」


 私は笑顔で返す。嫌だなー、怒ってないですよ?

 もう慣れましたよ。悪気ないんですもんね。何をそんなに怖がってるんですか?怒ってないって言ってるじゃないですかー。


「怒ってるだろ!お前その顔やめろ。目が笑ってないんだよ!」


 ギャアギャア言っているセリアン様を無視していつかやり返してやると誓う。



 そんなこんなで私の異世界2日目、王立騎士団第二部隊預かりの身1日目がスタートしたのだった。


ブクマありがとうございます。

サブタイトルを「隊長は愛妻家」にしようか迷いました(笑)


読み辛かったなどご意見ご感想ありましたらお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
☆3巻電子で発売中☆

挿絵(By みてみん)



こちらもよろしくお願いします!

私の名はマルカ【連載版】  連載中
本当の娘でもない私を引き取ったのは何のため?
母様を馬鹿にするなんて伯爵許すまじ。後悔させてやりましょう。
悪を成敗した後は公爵子息から好かれるけれどなかなか受け入れられないマルカの話。

あなたと私の美味しい関係 完結済み

ヒーローは遅れない 短編完結
ヒーローは遅れたくない 短編完結

恋愛結婚いたしましょう 完結済み
「恋愛結婚がしたかった」婚約を結んだその日、婚約者になったばかりの男がとんでもないことを口にした。この婚約が不服なのかと思ったら、実はそうではないようで……?
苦みの無い甘いお話です♪

悲しみを乗り越えて ~マルカの親の物語~  完結済
マルカの両親の恋の話、そしてマルカは如何にしてマルカになったのか。
『私の名はマルカ』に続く話

駆け引き不要の恋愛事情  完結済み
おひとり様歴=年齢。恋に臆病なアリシアの恋愛事情。
泥沼無し!愛されて終わるハッピーエンド。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ