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6.どうしようもない現実

遅くなり申し訳ありません!

ちょこっと長めにしました。

 


 部屋から3人を追い出して急いで着替えて外に出る。

 時間をかけすぎて何かを疑われても気分が悪い。


「すみません。お待たせしました」

「いや……あの、すまなかった。こちらの女性は大体髪が長いものだから……」


 必死に言い訳を考えているのだろうが今さら遅い。

 ついついため息がこぼれる。


「もう良いですよ。どうせ男っぽいですから。それよりベルトかなんか無いですかね。ウエスト緩くって」


 ほーら、こんなに、と伝えるためにシャツをペロっと捲りあげてみせると信じられないようなものを見る目で見られた。


「おまっ……仮にも女ならそういうことするなよ。腹見えるぞ」

「何をいまさら。セリアン様は胸を触るまで気が付かなかったくらいですから? 見た目男なんだから気にしなくても良いですよ」


 ふふふふふふふ。

 思い切り厭味を込めて言った私にセリアン様が何かを言おうとしたとき横から声が割って入った。


「おいセリアン、お前胸を触ったのか?」

「なんと……騎士の風上にも置けないですね」

「誤解です、ラジアス副隊長!おい、ルバートだって男だと思ってただろうが!」


 私はセリアン様が他の二人に責められているのを見て少し心がスカッとしたのだった。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 こうしていろいろあった私たちは1つの部屋にやってきた。

 ここで私は今まで起きたことをラジアス様に話し、そしてこの国のことも少しだけ教わったのだった。




 まず、この国はレンバック王国といい、魔法の存在する世界だということ。

 4、50年に一度くらいの割合で私のように異世界から来たという人物が現れるということ。

 時折空間の歪みが発生することからこうした事が起こるらしいが詳しい理由は誰にも分らないということ。

 私のような者のことは“流民”と呼ばれるということ。

 流民の身柄は騎士団預かりになるということ。


 そして、流民が元の世界に帰ることは出来ないということ――――――。


「う、嘘ですよね……? 質の悪い冗談、ですよね?」

「帰りたいと願ってもどうすることも出来ない。辛いとは思うがこの国に骨を埋める覚悟をしてほしい」


 そう言われて私は膝の上に置いた手をぎゅっと握りしめて俯いた。

 覚悟、覚悟って何?

 朝まではいつも通りだったはずなのに。何でこんなことになっちゃったの?

 なんで……なんで私なの――――。


 訳がわからない。いや、わかりはするが受け入れられない現実に呆然としてしまう。

 どうしよう、上手く息が出来ない。


「それで、これからについてだが……」


 ラジアス様が話を続けようとしているが全く話が頭に入ってこない。

 それどころか声が遠くのほうに聞こえる。

 呼吸が上手くできず、私はソファに座っているにもかかわらず一瞬意識を手放しかけた。


「おい、お前顏真っ青じゃねーか! おい! しっかりしろ!」


 ソファの横に立っていたセリアン様に肩をゆすられてハッとする。


「……え? あ、はい。えっと、何でしたっけ?」


 精いっぱい強がって無理矢理笑顔を作って笑ってへらっと見せる。

 手の指先がすごく冷たく感じる。

 そんな私の様子を見てラジアス様が立ち上がった。


「ハルカ、今日のところはここまでにしよう。今日はいろいろなことがあって疲れているだろうから続きはまた明日にして休んだ方が良いだろう。部屋まで案内するからついてきてくれ」

「はい、ありがとうございます」


 正直いろいろと(主に精神的に)限界がきていたので申し出をありがたく受け取ることにした。

 そうしてやってきた部屋は先ほどの第二部隊宿舎だった。


「こちらだ」


 そう言ってラジアスは先ほど来たセリアン様の部屋とは逆方向に歩き出した。

 不思議に思いながら後をついていくと後ろからセリアン様とルバート様が、こちらは執務室のある方で隊長と副隊長――ラジアス様の部屋があるのだと教えてくれた。

 まず執務室、次に副隊長室、そして最奥が隊長室となっているらしい。


 そういえば隊長さんに会っていないと思ったら今日は珍しくお休みの日らしく自宅に帰っているらしい。

 そんな日に限って私の登場、何という間の悪さ。


「着いたぞ。諸々決まるまでの間ハルカはこの部屋を使ってくれ」


 そう案内されたのは最奥の部屋。え、ここ隊長室って言っていたような。

 私の視線を感じ取ったラジアス様が答えをくれた。


「隊長は結婚されているので元々ここは使われていないから遠慮はいらない。一応生活できるようにはなっているが、足りないものがあれば言ってくれ」


 扉を開けると部屋の中にはテーブル、クローゼット、姿見、そしてベッドには私が着てきたジャージが置いてあった。


「隣は俺の部屋だから何かあったら声をかけてくれ。また明日の朝声をかけるから今はゆっくり休め。念のため内側のカギはかけるように」

「はい、ありがとうございました。ラジアス様、明日はちゃんと話聞けるようにします。ルバート様も、セリアン様もありがとうございました」


 3人にお礼を言い見送ってから部屋に入ってカギを閉める。

 そして私はのろのろとベッドに向かった。


ブクマしてくださっている皆様ありがとうございます。

やる気めっちゃ出るー!!

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☆3巻電子で発売中☆

挿絵(By みてみん)



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