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王立騎士団の花形職  作者: 眼鏡ぐま
本編

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59.公爵と宝石商

いつも読んでいただきありがとうございます。

今回は少し短めです。

 




「公爵様もお人が悪い」

「ふふ、何のことだい?」


 スイーズ伯爵がいなくなった部屋で宝石商の男と公爵はにこやかに話していた。


「本当にあの男が罰を受けないとお思いで?」

「さあ、どうだろうね?」

「おお怖い、怖い。しかし流民を連れてくるのは良いとして・・・抵抗されたらどうするので?あちらの国も捜索はするでしょうし」


 はたして無理やり連れてきた娘が大人しくペットになどなるだろうか。

 常識的に考えて無理だろう。

 そして流民を失ったレンバック王国がこの問題を放置するとは到底考えられない。

 そんな宝石商の男の考えなどお見通しのように公爵は微笑む。


「証拠も無しに他国の公爵邸を暴こうとする輩はいないと思うが、もしそうなったとしても問題は無い。すでに部屋を用意してあると言っただろう?魔法で探されようとも見つかりっこないよ」


 公爵は黒髪黒目の娘がレンバック王国で流民として保護されたと知ってから、内外からの魔法を遮断する特別仕様の部屋を用意していた。


「流民も素直になってくれれば良いけれど、駄目だったら・・・そうだね。まず帰れないようにしないといけないね」

「と、申しますと?」

「そうだねぇ・・・あまり好みではないが、早々に契りを交わしてしまうとか。無理矢理手籠めにするのは可哀想だけれど、抵抗されたらそれも仕方がない。穢された身体では元の場所に戻れたとしてなんと思われるかを吹き込んであげようかね。ああ、何も考えられなくなる良い薬もあるんだ。しばらく閉じ込めて心も頭も壊して愛してあげたら素敵なお人形になるだろうね。楽しそうだろう?」


 公爵は良い考えが浮かんだとばかりに宝石商の男に同意を求めた。


「くく。本当に良い趣味をしていらっしゃる」

「ふふ、最高の褒め言葉として受け取っておこうか」

「それはそうと公爵様はあの様な娘にも食指が動くのですか?」

「言っただろう?珍しいと言うだけで私にとっては愛する対象なのだよ」

「これはこれは。公爵様の愛の深さには頭が下がります。さすがは今は亡き奥様を一途に愛しているお方だ」


 冗談交じりに言った宝石商の言葉に公爵は片眉を上げた。


 公爵にはかつて妻がいた。

 公爵から言わせれば何の珍しさも、特別な美しさも持ち合わせないつまらない存在だった。

 もちろんそのような女に心からの愛を囁いたことはないが、表向きは愛妻家で通っていた。


「そんな存在もかつてはいたね。つまらない上に私の趣味も理解できない愚かな女だったよ。まあその彼女を今も愛していると言っているおかげで面倒な後妻も娶らずに済んでいるのだからそこだけは感謝かな」


 王弟として国王を支え、亡き妻を今も愛し、民も大事にする公爵。それがこの公爵の周りからの印象だった。

 そんな民の理想とする貴族像を体現したかのようなこの男が、裏ではこのようなことをしているなどとは誰も疑わないだろう。


「私は長年かけて今の自分を築いてきたのだよ。よその国の落ち目の伯爵風情が何かを言ったところで誰がそれを信じるというのだろうね。それに口約束だけで証拠だってどこにも無い。お前が伯爵に渡した手紙だってどうせ処分済みなのだろう?」


 公爵は当たり前のことを確認するように宝石商を見た。


「もちろんです。伯爵をお迎えに行った時に目の前で燃やしていただきましたよ。これで調べられたとしても公爵様とスイーズ伯爵を繋ぐものは私だけということになります。・・・いざとなったら私を始末なされますか?」


 その問に公爵は一瞬目を開いた後、楽しそうに目を細めた。


「お前のそういうところが私は気に入っているのだよ。そんなことはしないから安心したまえ。まあ、ありはしないと分かっていて聞いているのだろうがね。いや、いざとなったらお前の方が私を捨てて逃げそうだな」

「御冗談を」

「おや、私は結構本気で言ったのだよ?」


 公爵はどこまでも楽しそうに言う。

 実際事が露見したらこの宝石商はすぐに公爵を見捨てて逃げるだろう。

 この男にはそれが出来る頭と金があるし、公爵という身分が無い分、自由で身軽なのだから。

 ただそうなることはないだろう。

 流民を囲うための部屋は外からの魔力の一切を遮断するように作ってあるし、内からも外に漏れることは無いだろう。


 手元にさえ連れてくることが出来れば全てが上手くいく。

 公爵はそう信じて疑わない。



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挿絵(By みてみん)



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