5.自己紹介と勘違い
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「さて、と。これからのことだが……まずは自己紹介だな。俺の名はラジアス・ガンテルグ、王立騎士団第二部隊副隊長をしている。そしてそこの背の高いほうがルバート・フォンセット、小さいほうがセリアン・バッカスだ」
「あ、私は有馬春歌です。よろしくお願いします!」
がばっと頭を下げてお辞儀する。
何事も最初が肝心。挨拶は大事。
「アリマハルカか、変わった名前だな」
「ユーリにもそう言われました。ハルカが名前で姓がアリマです」
「そうか、ではハルカと。騎士団では主に名だけを使用しているから俺のこともラジアスと呼んでくれて構わない」
はい、と頷くとラジアスさん――いやさっきルバートさんが様づけで呼んでいたから様にしよう――が柔らかく微笑んだ。
うおー眼福です。イケメンの笑顔ご馳走様です。
そこからはこれからのことを話すために場所を移動することになったのだが、その前に私の格好が悪目立ちするとのことで第二部隊宿舎に立ち寄って着替えを先にすることになった。
「服だが――セリアン、とりあえずお前の服貸してやれ。少し大きいが大丈夫だろう」
はいはーいと言ったセリアン様の部屋まで案内された。
セリアン様以外は部屋の外で待機。
初対面の人にいきなり服を借りることになるとは、なんとも申し訳ない気持ちになる。
そんな私を気にする様子もなく服を放ってよこした。
「とりあえずこれで良いかなー」
「ありがとうございます。お借りします」
白のノーカラーのシャツと紺のスラックス。
服は私の世界とあまり変わらないんだなと思いながら着ていたジャージを脱ごうとした時、まだセリアン様が部屋にいることに気が付く。
「あの~」
「なんだ? ちゃっちゃと着替えちゃって」
「あの、着替えたいので申し訳ないのですが外に出てもらえないでしょうか」
そう言うとセリアン様は不思議そうな顔でこちらを見た。
「男同士なんだから良いだろ。それに悪いがまだどんなやつかもしれないのに目を離すわけにはいかないんだよ」
この言葉に驚いたのはもちろん私だ。
思わず「は?」と言ってしまったのは許してほしい。
男同士? 私女なんですけど。
たしかに身長も168㎝と女子にしては高めだし、髪は耳がちょっと出るくらいのショートだし?
服装もジャージという名のパンツだし? 体の凹凸も少なめだしね! 悪かったね、紛らわしい体で!
キッとちょっと厳しめな目をセリアン様に向けたのだって仕方ない。
「なんだよ」
私の睨みにちょっと引き気味に声がかかる。
言ってやる! 言ってやるぞ!
「私こう見えても女なんですよね。男にしか見えないかもしれませんけど。なのですぐに着替えるので外出てもらえませんか? 男にしか見えないかもし・れ・ま・せ・ん・け・ど!」
「は? こんな髪の短い女なんていないだろ。胸だって全然無いだろーが」
そう言ってセリアン様が私の胸をパンと叩こうとした。
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ふに。
「~~~~~っ!!」
「え? やわらか、い」
「ぎゃー!! この変態! サイッテー!!」
私は手に持っていた服でセリアン様をバシバシと叩く。
その騒がしさで外にいたラジアス様とルバート様も部屋に入ってきた。
「おい、どうした……って何をしているんだお前たちは」
「遊んでいないでさっさとしてくださいよ」
「遊んでねーよ! っていってーな、おい、やめろ! 叩くな! 俺が悪かった! ラジアス副隊長、こいつ女でした!」
「「は?」」
ラジアス様とルバート様の声が重なる。
そうですか! そっちのお二人さんも私のこと男だと思ってたってことね!
こんな見た目で悪うごさいましたねー!
私は怒りを無理やり押し込んでこれ以上ない笑みを浮かべて言ってやった。
「そういう訳なので着替えるために皆さん部屋出てもらって良いですよね?」
「「「・・・はい」」」
ちょっと仕事が忙しく次話を上げるまでに少し時間がかかりそうです。
なるべく今週中にもう1話くらいは上げられるように頑張りまっす!