49.二人で練習、その後毛玉
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二人きりの部屋で手を取り合いリズムを刻む。約束通り二人でダンスの練習だ。
ラジアスの流れるようなリードはとても踊りやすく、抜群の安定感がある。
「ターンでもしてみるか?そら!」
「え?え?うわっ」
強制的に回転させられ、何とか回り切ったもののバランスを崩す。
すかさずラジアスの腕に抱きとめられた。
「ラジアス様!やったことないのにいきなりターンなんて出来るわけがないでしょう!?」
「はは!すまん。ハルカの運動神経ならできるんじゃないかと思ってな」
「もう!過大評価しすぎですよ」
期待してくれるのは嬉しいが、1ヶ月やそこらでそんなことまで出来ると思わないでほしい。
「すまん。つい楽しくてな」
「・・・まあ、私も楽しいですけど」
「一緒だな」と言って笑うラジアスの笑顔が眩しい。
なんだろう。いつにも増してキラキラしている気がする。
「そういえば、先日フィアラ・スイーズ伯爵令嬢にお会いしましたよ」
「最近よく騎士団の鍛錬場を覗きに来ているようだな・・・ハルカは知り合いだったのか?」
笑顔を直視できず、何か話題をと思って出したその名にラジアスが反応した。
「先日初めてお会いしました」
「何か、あったか?」
なんとなくだが反応が硬い気がして不思議に思いラジアスを見れば、どことなくひりついた空気を感じた。
「えっと、少しお話しさせていただいて・・・ラジアス様の名前が出てきたので親しくされているのかなと」
「ない」
「え?」
「親しくなどない。あまり関わりたくないタイプだしほとんど話したこともないな」
「そうなんですか?」
「ああ」
「でも、可愛らしい人ですよね?セリアン様なんて鼻の下伸びていましたよ。あ、セリアン様とはスイーズ伯爵令嬢とお会いした直後に合流したんですけど」
「セリアンの好きそうなタイプではあるな」
この流れでラジアスのタイプを聞き出すかどうか迷っていると「俺は苦手だが」とラジアスが言った。
本当だろうか。
見た目だけならあんなに可愛らしい人はあまりいないと思う。見た目だけなら。
「本当ですか?あんなに可愛い系美人なんですよ?」
「まあ容姿が整っていることにこしたことはないが、そこは好みの問題もあるし人間それだけじゃないだろ?やはり大事なのは人となりだ」
「出たよ・・・素敵発言。完璧か」
「ん?」
「いえ、何でもないです」
私が思わずこぼした言葉は小さすぎて聞こえなかったようだがそれでいい。
見た目だけじゃなく中身も格好良いとか、何それずるい。
そんなことを考えていると部屋の扉がノックされた。
「入って良いぞ」
扉を開けて入ってきたのはジェシーだった。
「どうした?」
「練習中に申し訳ありません。魔導師長様がハルカに至急森へ来てほしいとのことです」
「先生が?」
「ええ。聖獣様がお見えになっているそうなの」
「ユーリが?何かあったんでしょうか?」
今までユーリの方から呼ばれる事など無かったので不安に思う。
「とにかく急いで行ってみます」
「俺も一緒に行こう」
「ジェシーさんありがとうございます」
「いいえ。この部屋の鍵は返却しておくわね。いってらっしゃい」
私たちが急いで森に行くと、ダントンとユーリが待っていた。
「ああ、急に呼び出してしまってすまないね」
「いえ、大丈夫です。何かあったんですか?」
私がそう尋ねるとユーリが何かを私に放ってよこした。
「え?うわっ・・・びっくりした。何これ?」
私の手の中には直径3㎝程の真っ白な小さい毛玉のようなものがあった。
摘まみ上げてしげしげと見ていると、ぱっとつぶらな二つの瞳が開かれた。
「わぁっ!」
驚き、思わず落としそうになったその毛玉を今度は掌で受け止めた。すると毛玉はふるふると動き出し「キュッ、キュウ~」と鳴きはじめた。
「え?本当にこれ何?生き物?」
「なんだこれは?」
ラジアスと顔を見合わせる。ラジアスもこれが何かわからないようだ。
「先生。これはいったい」
「私もよく分からないのだが、どうやら魔力持ちの生き物らしいんだ。そうですよね?聖獣様」
「そうなの?」
『うむ。紅鳥に喰われそうになっていたから救出した』
「紅鳥?」
「ああ、ハルカは見たことが無いか?これくらいの紅い鳥だ」
ラジアスが手で大きさを教えてくれる。
『獲物として襲われたのだろうが・・・紅鳥には悪いが貴重な魔力持ちだからな』
「そうなんだ。で、この子何なの?」
『分からん』
「え?分からないの?」
『おそらく何かの幼体だろうが、幼すぎて言葉が喋れないどころか意思の疎通もままならん。だからお前を呼んだのだ』
「えーっと、つまり」
私はダントンを見る。
すると彼は一度頷いて言った。
「光珠を与えて成長を促そうという話になったのだよ」
「大丈夫なんですか?この子以外にも光珠を欲しがっている子たちもいるんじゃ・・・」
「問題無いよ。ハルカ嬢が知らないだけで他の魔力持ちたちにも光珠はきちんと渡っているからね」
そうだったのか。
造った光珠は陛下が保管しているから実はその後の詳しいことはよく知らない。知らされていないと言ったほうが正しいのかもしれないが。
「これは俺が聞いても良い話だったのか・・・?」
ラジアスもそこが気になるようだ。
「あまり多くの者に知られるのはあれだが、当事者のハルカ嬢と副隊長殿ならばさして問題は無いだろう。まあ他言無用に頼むよ」
私とラジアスはお互いを見合って静かに頷いた。
「あとはもちろん陛下にもこの魔力持ちを成長させることは了承を得ている。『久々の新しい魔力持ちか!ハルカ嬢の負担にならない程度に成長させてやれ』だそうだよ」
「・・・完全に楽しんでますよね?」
私の問いにダントン、ラジアスが「まあ、あの陛下だから」と呆れたように答え、ユーリも同意するかのように頷いたのだった。
活動報告でも書かせていただいたのでご存じの方もいると思いますが、
2/25にサイト内の『今日の一冊』にて本作品を取り上げていただきました。
今まで以上に多くの方に読んでいただけて、緊張と嬉しさでどうにかなりそうです( ゜∀゜)アハハ
より皆様に楽しんでいただけるよう頑張りたいと思います!




