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王立騎士団の花形職  作者: 眼鏡ぐま
本編

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34/107

34.初めてのお出掛け

ブクマ&評価&誤字報告ありがとうございます。

 

 ガンテルグ侯爵家訪問当日、私は朝から準備に追われていた。

 着て行く服も決まっていたのに何をそんなに準備するんだと思うだろう。私も思った。

 ただ、朝早くから私の部屋の扉をノックした二人組は以前のような良い香りのする湯船に私を突っ込んだ後、全身マッサージを施し、服装を整えてくれた。

 今日の服装は細身のネイビーのスラックスに同色で裾に暗いシルバーの刺繍の入ったベスト、光沢のある白いシャツ、そして首元にはベストの刺繍と同色のアスコットタイを巻いている。

 一言で表すなら“結婚式にこのまま参列できそう”と言えばわかりやすいだろうか。

 ボブくらいの中途半端に伸びている髪も前髪は斜めに流し、サイドはねじりながら後ろに持っていき、やや低めの位置でハーフアップにしてくれている。


「ふふ、良いじゃない」

「素敵ねぇ」

「ありがとうございます。こんなちゃんとした服着たことないから背筋が伸びそうです。髪もこの長さでもこんなオシャレになるんですね!」


 私が笑ってそう言えば二人は頬に手を当ててほうっと溜息を洩らした。


「これはラジアス様と並んで歩いたら女性の視線を集めそうね」

「ガンテルグ侯爵夫人もご満足いただけるはずよ」

「もっと可愛らしくしてあげたい気持ちもあるけれど、今回はこれで間違いないわね」

「ラジアス様との初めてのデートが男装というのはちょっと悔しいけれど今回ばかりは仕方ないものね」


 ミリアの言葉に思わず肩がビクッとなる。


「・・・デート?」

「?どうしたのハルカ?」

「これってデートなんですか?」

「未婚の女性が男性と二人きりで出掛けるのでしょう?デートじゃない」


 デート。デートですと?!私の顔は一気に赤くなる。湯気でも出るんじゃないかと思うくらい顔に熱が集中していた。


「ど、ど、どうしましょう」

「どうしたの?」

「私デートなんて初めてです!」


 真っ赤な顔を両手で押さえてあたふたする私をジェシーとミリアは温かい目で見ていた。


「・・・この可愛らしい生き物は何かしらね、ミリア」

「ハルカの世界ではこれが普通なのかしら。・・・いえ、きっとハルカだからな気がするわ」

「ラジアス様、ハルカに惚れてくれないかしら」

「この可愛い姿を見せたらすぐにでもそうなるような気がするわ」


 こちらに聞こえない小さな声で二人は何か話している。


「デートってどうしたら良いんですか?!」


 なおも動揺する私の手を二人はガシッと掴み、「大丈夫よ!」と言った。


「デートは男性がリードするものよ」

「ラジアス様に任せておけば問題無いわ」

「でもそんな緊張した状態ではだめよ」

「ハルカがするべきことはたった一つよ」

「な、なんですか?」

「「心の底から目一杯楽しみなさい!」」

「へ?」

「ただ楽しむの。それだけよ。好きな人と出掛けるのだからそれだけで楽しいはずだもの。簡単でしょう?」


 ただ楽しむ。それだけなら自分にも出来そうな気がしてきた。緊張はするが、ラジアスと一緒にいられるだけで嬉しいと思えるのだから。





 そうこうしているうちに、また部屋の扉がノックされた。


「ハルカ、そろそろ時間だが開けても大丈夫か?」

「はい、大丈夫ですよ」


 私が答えるのとほぼ同時に、ミリアが扉を開けた。

 ミリアにお礼を言って私を視界に捉えたラジアスは一瞬動きを止めた。


「副隊長?・・・えっと、この格好どこか変ですか?」

「・・・いや、どのような恰好をするかは聞いていなかったから少し驚いた。とてもよく似合っている」


 ラジアスは私が髪を結っていることにも気が付いたらしく、指先で優しく髪に触れながら「結っているところも初めて見たな。可愛らしい」なんて目を細めて言うものだから、私が顔を真っ赤にしたのは言うまでもない。私が心の中で、妹のような存在にこの発言とは何事か!心臓痛い!これだから質の悪いイケメンは!などと言っている間にラジアスはジェシーとミリアに怒られていた。


「まあまあ!ラジアス様、今日のハルカのテーマは格好良さ、男装の麗人ですわよ!」

「可愛くよりも格好良く、ですのよ」

「あ、ああ。すまない。もちろん格好良くもある」


 二人の勢いにたじたじになっているラジアスは私と目が合うと「おおっと、もうこんな時間だ。早く行かねば」と私を連れ立って扉に向かって歩き出した。


「ジェシーさん、ミリアさん、ありがとうございました。行ってきます!」

「「いってらっしゃい。頑張ってね」」


 2人に見送られて部屋を出る。隊の敷地から出る間にも他の隊員にも何人かに遭遇し―――


「副隊長、その格好は実家に帰られるんですか?隣は・・・っておわ!ハルカ?!」

「おお、本当だ。どうしたんだその格好。きまってるじゃないか」

「は~、そうしてると良いとこの坊っちゃんみたいだなぁ」

「オレ男なのに・・なんだか負けた気分だ」


 男からはこう言われ、他の隊の侍女さんや城勤めのメイドさんからは―――


「す、素敵です!」

「はぁ・・・お二人揃って、眼福だわ」

「ハルカ様は本当に女性ですわよね?!ああ、なぜ男性ではないのかしら」


 というような賛辞?を貰った。その一つ一つに反応をしながら進み、ようやく城の敷地から外に出る最後の門に辿り着いた。

 実はここまで来るのも初めてで、城門と城壁のあまりの立派さに驚いて、間抜けにも口を開けて城壁を見上げてしまった。


「ハルカはここまで来たことはなかったのか?」

「はい、基本的に王城と第二部隊との行き来だけでしたので・・・すごいですね」

「ああ、しかもただの壁ではないんだ」


 ただの壁じゃない?私が不思議そうにラジアスを見ると、壁の間に光る小さい石のようなものを指差した。


「この石は魔力を伝達しやすい性質がある。定期的に城の魔導師が魔力を注ぎ込み、盾を張っているんだ」

「盾、ですか?」

「そうだ。これだけ高い城壁だけでも十分な護りになるが、そこに魔法の盾を張ることで物理攻撃も魔法攻撃からも護る鉄壁の護りになるってことだな、すごいだろう」

「確かにすごいですね!」

「まあ平和なこの国でそこまでの護りが必要かと言われると・・・必要ではないのだが、何か起きてから動いては対応が間に合わないからな」

「備えあれば憂いなしってやつですね」

「そうだ。それと城壁内の敷地、やたらと広いだろ?これも有事の際は王都の民をなるべく多く囲い込めるようにと初代国王陛下が造らせたらしい」

「は~、よく考えられているんですね」


 私が感心していると、ラジアスが背中をポンッと叩き城門の外へと促す。


「これでまたこの国について詳しくなったな。さあ!では初めての王都に繰り出すぞ!」

「はい!」


 ラジアスが少年のように楽しそうに言うので、私も元気よく返事をした。

 城の外はどんな世界なのだろう。この世界に来て初めての外出に私の心は弾むようだった。


可愛く仕上げてあげたかったと思っていたのに、いざ可愛いと言われてしまうと「今回は格好良くを目指して完璧に仕上げたはずなのに!」と思ってしまうプロフェッショナルな侍女さん2人でした(笑)


なかなか更新出来ず申し訳ないです。

出来るだけ早く更新できるように頑張りますので、これからもお付き合いくださーい。

よろしくお願いします。


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☆3巻電子で発売中☆

挿絵(By みてみん)



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