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王立騎士団の花形職  作者: 眼鏡ぐま
本編

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33/107

33.母からの手紙

遅くなって申し訳ありません!

ブクマ&評価ありがとうございます。

 

 夜会が約1か月後に迫った頃、私はいつものようにラジアスと執務室で話をしていた。

 そしてその中で、おもむろにラジアスが一通の手紙を差し出してきた。


「何ですか、これ?」

「俺の家からの手紙だ」

「はあ」

「とりあえず目を通してくれ」

「え?私がですか?」

「そうだ」

「よくわからないですけど、見て良いんですね?」


 ラジアスが頷くので、私は訳もわからないままその手紙を読み始めた。すべて読み終えると私は思わずラジアスを見た。


「何でこういう話になるんですか?」

「今度の夜会に出ろと言われたからもう出席することが決まっていると伝えただけだ」

「・・・それだけじゃこんな話にはならないですよね?」

「相手はどうするんだと聞かれたからハルカのエスコートをすると伝えた」

「それで?」

「それだけだ」

「そんなわけないでしょう?!」



 手紙にはこう書かれていた。




 ――――

 ―――――

 貴方の妹というなら私の娘も同然。

 今度のお休みにハルカ・アリマ嬢を我が家にお連れしなさい。

 男装の麗人と社交界では噂になっているのよ。

 一度お会いしてみたいわ。

 断ることは許さなくてよ。

 貴方ならわかっているでしょうけれど。

 楽しみにしています。


                          

                        母より




「副隊長の妹って何ですか?娘も同然って何ですか?」

「・・・どのような人物だと聞かれたから、ハルカの人となりと妹のような存在だと言っただけだ」

「だけって・・・。はあぁぁ」

「すまない。勝手に妹のようだと言って気を悪くしたか?」

「・・・そこは、まあいいです。そう思われているのは知っていましたから」

「そうか」


 ラジアスはほっとしたように笑った。思わずドキッとする。駄目だ、私はやっぱりラジアスの笑顔に弱いようだ。


「と、いうわけでハルカ。ちょっと実家まで付いてきてくれないか?」


 なんだそのちょっとコンビニまで一緒に行かない?的な軽いノリは。


「断ることは許さないんでしょう?しょうがないからご一緒させていただきます」

「そうか!ありがとう!あんな書き方をしてはいるが母はそんなに怖い人じゃないから大丈夫だ」


 のんきにラジアスは言っているが、私としてはラジアスにエスコートされるのに相応しいかどうか品定めされるんじゃないかという不安でいっぱいである。


「それで、いつご実家に帰られるんですか?」

「ん?明後日だが」

「明後日ですか?!なんでそんな急なんですか。ちょっとその手紙届いたのいつですか?!」

「・・・一週間前だ」


 私はガクッと項垂れた。

 もっと早く言えたでしょうが。なぜそんな隠していた点数の悪いテストが見つかってしまった時のような顔をしている。


「心の準備とかいろいろあるんですよ、こっちは」

「す、すまない。断られたらと思うとなかなか言えなくてだな。そうだ!ハルカは城の敷地内から出るのは初めてだろう。家に行く前に王都に寄って行こう!な!」


 慌てたようにラジアスがこちらの機嫌を窺うような提案をしてきた。

 たしかに私はこの世界に来て4か月以上経っているが、まだ一度も王城の敷地内から外に出たことはない。それどころではなかったというのが一番の理由だが、私がどのような人物かわからない以上目の届かない外に出すのは危険ということもあり、おそらく外出の申請を出しても通らなかっただろう。


「私、外に出ても良いんですか?」

「ああ、ちゃんと陛下の許可も取ってある」


 手紙に関しては言わなかったくせに根回しは完璧とは。順番が違うと思う。


「・・・王都で人気の美味しいものが食べたいです」

「まかせろ!」


 私が提案に乗ったことにラジアスは満面の笑みを浮かべた。またもやドキッとする。この笑顔を前にして私の不満は長くは続かない。我ながらなんてチョロさだろう。


「では明後日は10時くらいにここを出ようか。そのほうが王都の店も見て回れるしな」

「はい、よろしくお願いします」

「お願いするのはこちらの方だ。無理を言ってすまない」




 部屋に戻った私はここで重大なことに気付く。

 明後日は何を着て行ったら良いのだろう。私が持っている服なんて仕事着くらいだ。

 好きな人の母親に会うのに印象を悪くしたくはない。できる限り良い印象を持ってもらいたいというのが本音だ。


「これは・・・明日ジェシーさんたちに相談しないと」


 自力ではどうにもならないが、あの二人なら何とかしてくれそうという期待を抱きながらその日は眠りについた。





 翌日――――― 結果として、何とかなった。

 今回は二人ではなく国王陛下のおかげで、だが。


 以前、陛下から夜会の話をされた際に、衣装を用意すると言われていた。その後、衣装作りのための採寸が行われたのだが、ドレスと同時にスカートやパンツタイプの衣服も作るように命じていたらしく、それが今日仕上がってきたのだ。

 なんというタイミング。ラジアスが陛下に外出許可をとったのが約一週間前。おそらく急ピッチで仕上げてくれたのだろう。タイミングが良すぎる。

 ありがとうございます、陛下。今回ばかりは感謝です。



 両手いっぱいの服を届けてくれたジェシーとミリアにお礼を言って、明日のことについて話す。


「――という訳なんですけど、この中で明日は何を着て行けば良いと思いますか?」

「想い人のご実家に行くなんて、しかも母親に会うだなんて!」

「なんて試練なの?!これは絶対に外せないわ!」

「でも上手くすれば外堀を埋められる絶好の機会よ」


 二人は若干興奮しながら服を選び始めた。


「このスカートも清楚で可愛らしいけれど――― お手紙には男装の麗人と書かれていたのよね?」

「はい。そう噂されていると」

「そうなるとここは敢えてのパンツスタイルかしら?」

「そうねえ。ガンテルグ候爵夫人もその姿を見たくてわざとお書きになったんじゃないかしら?」

「やはりそうよね。ではパンツはコレ。シャツはこれね。ハルカはフリルはあまり好きではないものね」

「そのシャツならベストはこれが良いかしら。刺繍がとってもきれいだもの」


 何も言わなくても私の趣味も考慮してコーディネートしてくれる二人は本当に心強い味方だ。こうして何の苦も無く明日着て行く服は決まった。


急に母登場。

ああ、なんかどんどんラジアスのイケメン度が下がっていく気がする・・・。

でも私はそんなラジアスが結構好きさ(笑)

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挿絵(By みてみん)



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