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王立騎士団の花形職  作者: 眼鏡ぐま
本編

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25/107

25.完成と同時に逃げた猫

ブクマ&誤字報告ありがとうございます。

遅くなりましたが楽しんでいただけると嬉しいです。

 

 手に傷を負い、魔力使用許可が出るまでに約2週間。

 私の怪我は思っていたよりも酷かったらしい。

 その間は利き手を怪我したからと、第二部隊の仕事もろくに手伝わせては貰えずにいた。時折、第二部隊のみんながお見舞いだと言って顔を出してくれたり、怪我によく効く軟膏を持ってきてくれたりしていたが暇で暇でしょうがなかった。

 こちらの世界に来てからはずっとバタバタしていたから気づかなかったが、時間に余裕があるとつい日本にいた時のことを思い出してしまい気分が沈んだ。これじゃ良くないと起きている時間の全てをこちらの国の事や文字の勉強に当て、これだけ出来ていれば日常生活に支障無しとのお墨付きをいただくまでになった。

 人間やれば出来るものだ。


 

 ようやく許可が下りてから行ったのはもちろん実験の続きである。


 ガラス、陶器、金属、麻袋。

 丸、三角、四角、凸凹。


 いろいろな物、形で試したが、いずれも入れ物が私の魔力に耐えきれずに割れたり弾けたり破れたりしてしまった。

 そして今回も―――


 バリンッ


「先生・・・この世界にもっと丈夫な器ってあります?」

「・・・もう思いつかないな」


 またしても壊れた。


「今回の物は強化魔法を施したものだから大丈夫かと思ったのだが、全然話にならないな」

「でも今までの物よりはもちましたね」

「結局魔力が結晶化する前に壊れてしまったけどね。容器の方もハルカ嬢が注ぐのと同等の魔力で強化しないことには耐えられないのかもしれないけれど最終的にどれだけ魔力を込めれば出来上がるのかもまだわかっていないからねぇ」


 ダントンはいつものように顎に手を当てて考え込んでいる。あと少し、あと少しで出来そうなのになかなか思い通りにいかず歯痒い。


「あー!もういっそ私が二人いれば良いのに。そうすれば一人が容器に強化魔法をかけて、一人が魔力を注いでって出来るんですけど・・・」


 そんな魔法無いですよねと苦笑いしながらダントンに顏を向ければ目を見開いたダントンと視線が合った。


「—――それだ」

「え?」

「それだよ!ああ、なぜ気が付かなかったのだろう」

「え?え?何がですか?」

「容器に注がれる魔力と同等の魔力量、そんなものを持っているのはハルカ嬢自身しかいない。でも君には手が二つあるじゃないか」

「ええ?でも私、強化魔法をかけながら魔力を注ぐなんてこと同時に出来ませんよ?」


 話がうまく呑み込めない私にダントンは容器が壊れないように強化していただけで、強化魔法自体が絶対必要なわけではないと説明する。

 要は魔力が飛散せずに留まり注ぎ込み続けられれば良いのだと。


「そこでハルカ嬢の手だよ。君は今右手で魔力出していただろう?それを同じように左手でも行うんだ」


 こんなふうにね、そう言うとダントンは自身の右手と左手を重ねてみせた。

 重ねた手のそれぞれから魔力を出せば手の中で魔力が滞留し、注ぎ込み続けることでコップの中で起きたような現象が起き結晶化が進むはずだというのだ。


「口で言うより実際やってみたほうが良いかな。左手からも魔力は出せるね?」

「もちろんです」


 私は頷いて両手を重ね合わせ、魔力を集める。右と左、両方の掌がじわっと温かくなり、手の隙間から魔力の揺らぎが確認出来た。

 容器を使っていた時よりも早い変化に驚く。


「先生、もう変化が目視で確認できますよ!」

「両方から魔力が注ぎ込まれているからね。単純に今までの倍の速度で変化が起こっても不思議じゃないよ。それよりも君の手の方は問題なさそうかい?異変を感じたらすぐに止めるんだよ」

「はい。でも全然問題なさそうです」


 本当に何の問題も無い。温かいお湯にでも包まれているような感覚ではあるが痛みなどは何も感じられない。

 視線を自身の手に戻すと魔力の揺らぎがより大きくなり、回転しているのがわかる。さて、今まではこのあたりで容器が壊れてしまっていたからここから先はどうなるのかわからない。

 さらに集中して魔力を注いでいると手の中の魔力から急に膨れ上がるような圧を感じ、手が弾かれないように腕に力を込めた。

 その瞬間、魔力から強い光が放たれ風が吹いたように私の髪と服をはためかせた。


「なんだ今の光は?!」


 ダントンの声にハッとして私は自分の手の中を見た。幸いにも弾かれることのなかった私の手の中にはいまだ注がれ続ける魔力を受けシュルシュルと音をたてて回転する光る物体―――直径3㎝程の白く輝く光る珠があった。


「・・・っ、先生これ!」


 私は魔力を注ぐのを止め、突如形になった光る珠をダントンに見せた。


「これはっ・・・遂に完成したのか?」

「ですよね?!たぶんこれユーリが言ってた光る珠じゃないですか?やったー!出来たー!嬉しい!ここまで長かったー!」


 私は嬉しさのあまり飛び跳ねんばかりの勢いでダントンに纏わりついていた。ダントンは少し驚いた顔をしながら私を制止してきた。


「落ち着いて。落ち着きなさい。本当に完成したかどうか私が鑑定してみよう。それにしても・・・それがハルカ嬢の素なんだねぇ」

「へ?」

「話し方。普段と全然違うじゃないか」

「・・・やばっ!いや、あの・・・すみません」


 しまった。今まで丁寧に被ってきた猫が一気に剥がれ落ちてしまった。

 ダントンが何も言ってこないので俯いていた顔を上げ視線を向ければにまにまとした笑顔でこちらを見ていた。


「なるほどなるほど。年若い流民の割には大して狼狽えもせず、こちらの世界に溶け込んでいるなとは思っていたが、そうかそうか」


 うんうんと頷きながら一人で納得したように話すダントンを不思議に思って見る。


「あの・・・えーっと?」

「利口な君のことだから、下手なことをして立場が悪くならないようにとか他人から侮られないようにとか思っていたのだろう?あとは・・・ああ、誰が自分にとって味方になるか敵になるかわからなかったから警戒していた、というところかな」


 ニコニコと話すダントンを見る私の顔は図星を指されて少し赤くなっていることだろう。


「恥ずかしがる必要はないだろう?ハルカ嬢の年頃なら可愛らしいものじゃないか」

「恥ずかしいですよ!こっちは必死に猫被ってきたのにバレたあげく理由まで当てられて・・・それに素の自分がここで働くには幼すぎるし貴族様とは違い過ぎるって理解してますから」


 口を膨らませて言い返す私についにダントンは面白そうに見ている。


「ちょっと!もう良いですからちゃちゃっと鑑定お願いしますよ!あと他の人には絶対バラさないでくださいよ!」


 絶対に分かっているのに「ん?この光る珠のことをかい?」なんて聞き返してくるダントンをぎっと睨み、鑑定を急かしたのであった。


段々とダントンもハルカに対して遠慮が無くなってきた模様。

思っていたよりも利口で真面目で努力家なハルカのことが結構気に入っています。



続きが気になる、面白いと思ってくださいましたら、

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挿絵(By みてみん)



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