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王立騎士団の花形職  作者: 眼鏡ぐま
本編

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24/107

24.実験結果とお説教

 

 コップに翳した手に魔力を集中させる。

 掌が温かくなっていき透明なガラスのコップの内部が仄かに白く輝き始める。私はさらに魔力を注ぎ込むがまだ大きく変化はない。


「結晶化させるには相当な魔力を要するはずだ。そのまま続けてみよう」

「はい」


 ダントンの言葉に頷きそのまま集中して魔力を注ぎ込んだ。



 5分くらいは経っただろうか。

 ただの白い光だったものに中身に変化が現れた。コップの中身が揺らぎ、ぐるぐると魔力が回っているのがわかる。


「先生!これって・・・」

「ああ、明らかに粘度が高くなってきている。このまま続ければ形になるかもしれない」


 あともう少しで望んでいたものが出来上がるかもしれない。そう期待しながら私はさらに魔力を込めようとした。


「ハルカ嬢!魔力を止めるんだ!」

「え?」


 ダントンの声とほぼ同時にコップにピシッと亀裂が走る。

 私の目がそれを確認した時、ダントンがばっと腕をこちらに向け手を大きく開いた。


 ――――その瞬間。


 パリンッと音をたててコップが砕け散った。


「うわっ!!・・・っ!」


 ガラスの破片が飛び散り翳していた手を切り裂く。


 手の傍をすり抜けて顔に飛んでくる破片を避け切れないと思ったその時、ガラスの破片は目の前でキィンと何かに弾かれるように勢いをなくし落下した。


「大丈夫か?!」


 ダントンがしゃがみこむ私に珍しく焦った様子で走り寄った。


「大丈夫です。それより今のって先生の魔法ですか?」

「ああ、とっさに盾を張ったのだが・・・すまない、少し遅かったね」

「そんなことないです。ありがとうございます。あれが無かったら顔面もザクッといくところでした」

「だが、指を切ってしまったね。治すことも出来るが・・・」


 その申し出はありがたかったけれどお断りした。なんでもあまり治癒魔法を使い過ぎると自己治癒能力を落としてしまうらしい。これくらいの切り傷なら放っておいてもいずれ治るだろう。


「とりあえず血だけは止めておくからしっかりと消毒をしてもらいなさい」

「わかりました」


 ダントンが出血している手を握りこむとスッと出血が治まった。本当に魔法って便利だよね。


「でも何故コップは割れてしまったんでしょう?せっかく良い感じだったのに」

「恐らくだが・・・君の魔力量に耐えられなくなってしまったんだろう。強度不足だね」

「じゃあ金属の器とかなら大丈夫でしょうか?」

「やってみないと何とも言えないけれど、ひとまずその怪我が治ってからの話かな。あとは次に行う時は念のため初めからハルカ嬢に盾を張らせてもらうから」

「こんな傷大したことないですよ。明日にでも―――」

「駄目だよ。君は女性なのだから傷痕が残りでもしたら大変だ。まあちょっとしたものなら消してしまえるからそうなったら隠さず言いなさい。いいね?」

「・・・わかりました」


 反論は認めないと言った笑顔で念を押されたため素直に頷くことにした。こういう時のダントンは逆らわない方が良いのだ。


「では今日はここまでにしよう。後始末は私がやっておくから君は早く戻って傷の手当てをしてもらうように。ちなみに「はい」以外の返事は受け付けない」

「・・・はい」

「よろしい。ではまた傷が治った頃にね。はい行った行った」

「そんなに押さなくてもちゃんと戻りますって!」



 こうして半ば追い出されるようにして宿舎に戻ることになった私は怪我の手当てをしてもらうためにジェシーとミリアを探していた。

 ジェシーとミリアは王立騎士団第二部隊専属の侍女であり、この世界に来た私の部屋や服を準備してくれたりと色々お世話になっている2人だ。2人ともとても美人で気立ての良い女性たちであり、私よりも2つ年上ということもあって名前は呼び捨てで良いと言うと初めは困った顔をされたが渋々了承してもらえた。私も彼女たちのことをジェシーさんミリアさんと呼び、今では姉のように慕っている。


「あらハルカ。今日の授業はもう終わったの?」


 声を掛けてきたのは紺色のお仕着せに身を包んだ今まさに探し中のジェシーだった。


「ジェシーさん良いところに。ちょうど今探してたところだったんです」

「探していたって・・・何か急な用事かしら?」


 向き合って話していたジェシーの視線が私の右手のあたりを見て止まる。ちょうどそこは先ほど右手を切った時にシャツの袖に血液が付着してしまったところだった。


「ちょっとあなた!それ血ではないの?!どこか怪我したの?!」

「大した傷じゃないんですよ。既にダントン先生に血止めはしてもらっていますし、あとはちょっと消毒してもらえればと思って」


 へらっと笑って右手を振ってみせるとその手首を思いのほか強い力で掴まれて驚いた。


「あなたそんな恰好をしているけれど女の子なのよ?!身体に傷をつけるなんて何をしているのよ!早くこっちにいらっしゃい!」


 その細腕のどこにそんな力があるのかというような力で引きずるように連れて行かれたのは救護室。その中のイスに座らされるとジェシーは慣れた手つきで私の手の消毒を始めた。

 あっと言う間に包帯まで巻き終えたジェシーはその出来栄えに心なしか満足そうだ。


「ジェシーさん、これは少しやりすぎでは・・」

「まあ!止血こそ済んでいたけれど傷は思ったよりも深いし何ヵ所もあるし全然大袈裟じゃないわ。普段のあの王子様みたいな話し方も面白いけれど、ハルカはもう少し女の子としての自覚を持った方が良いと思うわ」


「本当にその通りね」


 急に聞こえた今までいなかった声に驚いて振り返るともう一人の専属侍女のミリアさんが部屋に入ってくるところだった。


「こんにちは、ミリアさん」

「こんにちは。皆さんがジェシーがハルカを引きずって行ったって言うから何事かと思ったら・・・ハルカったら怪我をしたのね」

「そうなのよミリア。それなのにハルカったら大したことないなんて言うんですもの。あなたからも言ってあげてちょうだい。大体ハルカはいつも―――」




 この後しばらくの間、私は2人に女の自覚が足りないとお説教をされたのであった。




きれいなお姉さんは好きですか?


好きです!笑


美人が怒ると迫力ありますよね。

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挿絵(By みてみん)



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