23.光る珠の正体(仮説)
ブクマありがとうございます!
ひとりでニヤニヤしています(笑)
ユーリに話を聞いた翌日、ハルカはダントンにその内容を話していた。
「光る珠、か」
顎に手を当ててダントンが考え込む。どうやら頭の中にある記憶を探しているようだ。
「ふむ、やはり聞いたことも見たこともないねぇ。魔力を練り上げると聖獣様は仰ったんだね」
「そうです。でもそこが一番謎なんですよね」
その方法さえわかったら問題は一気に解決する気がする。しかし誰も見たことがないものを一から作り出すというのはなかなか難しいことだ。
「とりあえず昨日やってみたのは、火炎球を作ってそこから炎の属性を抜いてみようとしたりしてみたんですが上手くいきませんでした」
「なるほど。しかし一回やってみてダメだったからと言ってその方法では不可能かというとまだわからないね。なんせ誰もやったことが無いのだから」
「それもそうですね。決めつけるのは短慮でした」
「ではまずはこの方法でその光る珠とやらを作り出すことが出来るかどうかやってみようか。幸いハルカ嬢には十分な魔力があるから何度でも練習出来ることだしね。私は他に方法がないか考えてみるよ」
「はい、ありがとうございます」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
結論から言うと出来なかった。
やはり一度作り出した魔法は魔力だけの状態に戻すことは難しく、以前のように他の属性に変わったり、消滅したり、威力が増したりするだけだった。
ただ、思わぬ収穫はそんなことを1週間もやっていたせいか魔力の扱い方が格段に上達した。
自分の中にある魔力をしっかりと感じ取ってコントロール出来るようになっていた。
普通の人なら魔力切れで限られる練習も私なら何時間でも、それこそ何十時間でも続けられるので上達速度が異様に早いらしい。
(でも、いくら上達しても肝心の供給が出来ないんじゃなぁ・・・)
掌に作り出した風の渦を見ながらそんなことを考えているとダントンがやってきた。
「やあハルカ嬢。もう魔力の扱いはお手の物だね」
「でも肝心の供給に必要な光る珠が作り出せないんです」
「そうそうそれなんだが、光る珠というのは魔力の結晶なのではないかと思ってね」
「結晶?」
「そうだ。いろいろ調べてみたのだが、魔素を多く含む地では魔力を多く含んだ宝石が採掘されることがある。宝石はいわゆる結晶だから長い年月をかけて地中の魔素が結晶化したものじゃないかと言われているらしいんだ」
つまり、ダントンが言うには魔力を押し固めれば結晶化するのではないか、長い年月の部分は私の持つ魔力量で補えるのではないかということだった。
なんとなくだが言いたいことはわかる気がした。
「それにハルカ嬢は魔力だけを手に集めることが出来るようになったと言っていただろう」
「ええ、これのことですね」
私は右の掌に意識を集中して魔力を集めた。
私は光る珠を作り出すことは出来なかったが、自分の魔力を自分の意思で掌に集めることが出来るようになっていた。それはまるで炎のようにゆらゆらと揺らめく仄かに温かい白い淡い光だった。
実体の無いその光は掴もうとすると消えてしまうし、より魔力を注ごうとすれば白さが増すのではなく白い光が大きくなるというものだった。
この過程で判明したことは、これは魔導師長のダントンですら出来ないということだ。おそらく私の魔力が持つ特性と密度の濃さ、そして魔力量が関係しているのではないかということだった。
私が来るまでこの国一番の魔力を持つと言われていたダントンに出来ないのならば、純粋に自分の魔力のみを目に見えるほど集めるということはきっと私しか出来ないことなのだろう。
「その魔力を――そうだな、例えばコップのような空洞の物に注ぎこみ続ければ魔力が凝集して結晶化するのではないかと思っている」
「なるほど!すぐにやってみましょう!コップを借りに行ってきます」
私はすぐに食堂に向かうと調理場に顔を出した。
「すみませーん・・・あ、いた!ケッチャさん」
その声にはきはきとした明朗な女性が反応した。
「あらーハルカちゃん!こんな時間に来るなんて珍しいわね。焼きたてのクッキーあるわよ!どうぞー」
そう言いながら口に一枚クッキーを放り込まれた。サクサクしていてほのかに甘くて実に美味しい。
思わず笑みが零れる。
「すごく美味しいです。何枚でも食べられそうです」
「ふふふ、じゃあちょっと持って行きなさいな。今詰めるわね」
「良いんですか?ありがとうございます。あとコップを一つお借りしても良いですか?」
「いいわよー。でも一つで良いの?」
「はい、飲むのではなくちょっと今取り組んでいることに使わせていただきたいので」
「わかったわー」
ケッチャさんはあっという間に袋詰めしたクッキーとガラスのコップを一つ用意してくれた。
「はい、どうぞ!頑張りなさいね」
「ありがとうございます。ではまた」
ケッチャさんに笑顔で送り出されダントンの元に急いで戻った。
「ただいま戻りました。遅くなってすみません」
「大丈夫だよ、コップは借りられたかい?」
「はい、あとこれも頂いてしまいました」
袋に入ったクッキーを掲げてダントンに見せる。
「君はすっかりケッチャ夫人に餌付けされているねぇ」
「餌付けなんて言い方が悪いですよ。いらないなら私一人でいただきますので」
「あー、ごめん。悪かった。私もいただくよ」
実際のところケッチャさんに胃袋をつかまれていると言っても過言ではない。彼女の作るものは何でも美味しいのだ。「女の子でこんなに食べてくれるなんて嬉しいわ!」と言っていつも何かしら差し入れたりしてくれており、ダントンだって密かにその差し入れを楽しみにしていることを私は知っている。
「さすがケッチャ夫人。このクッキーも実に美味しい」
「同感です。バターたっぷりで甘味と塩味のバランスが最高です」
二人でもぐもぐとクッキーを食べるとあっという間に食べきってしまった。
「さて、と。小腹も満たされたことだしさっそく先ほどの仮説を確かめてみようか」
「はい!」
私はコップをテーブルの上に置き、その口が隠れるように右手を翳した。
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