19.王国の成り立ち
聖獣に守られた国
これが他国から見たこのレンバック王国である。
大陸の端に位置するレンバック王国の王城は国の中でも最南端に位置し、王城の後方を国を囲むようにして魔素を多く含む広大な森と山が広がっている。
そしてその森にはユーリをはじめとした聖獣や、それに追随する魔力の高い生き物たちが住んでいる。
元々どの国にも魔力を持った生き物は存在していた。しかし、かつてこの大陸は様々な国同士で小競り合いが絶えず人々は疲弊していた。魔力を持つ者は戦争に駆り出され、魔力持ちの生き物たちはその者らによって捕らえられ強制的に従わされ、戦争の道具として扱われていた。その過程で彼らの住む森や山や自然は次々と破壊されていった。
そんな世界を憂いたのが当時としては高い魔力量と供給という特性を持つ、初代レンバック国王サンディアとその仲間たちだった。
まだ捕らわれていない魔力持ちの生き物たちは逃げるように魔素を多く含む森に逃げてきていた。戦争を終わらせたかったサンディアは彼らと交渉した。
『魔力を持つ生き物たちよ、どうかその力を私に貸してはくれないか!私はこの争いを終わらせたい。強制ではなくこれは私の願いだ。
もしも応じてくれるなら私の全てを懸けてこの森とあなたたちを守ると誓おう!』
初めのうちはみな警戒心を剥き出しており呼びかけに応える者は無かった。
しかし、その間にも森の面積は減っていき、仲間たちは捕らえられていく。サンディアは諦めることなく幾度も森に足を運んで訴えた。
そして遂に森の長ともいえる銀狼が応えた。
『我の力を貸してやる。ただし約束を違えた時はお前のその頭、喰いちぎってやる』という脅し付きで。
もちろんサンディアはそれにも怯むことなどなかった。
魔力持ちの生き物たちが力を付けるためには大量の魔力が必要となる。それこそ魔素を吸収するだけなら数十年、数百年という年月を要するほどに。
しかしサンディアの供給という特性のおかげで魔力持ちの力は一気に膨れ上がった。
急激な力をつけた彼らの活躍は目覚ましく、他国の勢力の恐れるところとなり、サンディアは森からこちら側に他の国から侵略されない強固な守りの新たな国を創ることができた。
そして魔力持ちの生き物たちに守られていることを知っている国民も彼らに手を出そうとする者はおらず、彼らもようやく安住の地を手に入れたのである。
森を守るため、人を、仲間を守るために共闘したサンディアたち人間と銀狼をはじめとした――― のちに聖獣と呼ばれる者たちとの間にはいつしか友情にも似たような関係性が生まれた。
そして戦争が終わっても、それは今なお受け継がれている。
―――というのがこの国の成り立ちである。
「これがレンバック王国の歴史だよ」
「今のこの国からは想像できないですね」
のんびりとして平和な様子しか知らないし、普段みんなが行っている鍛錬もいざという時のために、といった感じだ。
「建国以来この国は他国からの侵略を許していないからね。まあ時々は愚かな者が現れたりもするが月白の銀狼殿やハルカ嬢の所属する第二部隊の活躍により即排除されているんだよ」
「あの、300年前の銀狼はユーリじゃないんですか?」
「月白の銀狼殿は今から約150年ほど前に代替わりでこの森の長を引き継いだと言われているんだ。争いがあった時はまだ年若い銀狼だったらしいよ」
「そうなんですね」
ここで私はあることに気が付いた。
「あの、この国が出来たのが約300年前で、初代国王以外に供給の特性を持つ者は私が来るまでいなかったんですよね?だったら少なくともこの200年の間ユーリ達は魔素からしか魔力を得ていないということですか?」
「その通りだよ。ふふ、良いところに気が付いたね。常に魔力を供給できる者を失った彼らの力は全盛期に比べると落ちてしまっているのは事実だ。それでも人間とは比べ物にならないがね。ただその僅かな隙を狙って魔力持ちの生き物たちを捕らえ使役しようとする愚か者たちが他国から入ってこようとしているのも事実だ」
なんてこった。私は肺の空気を全て吐き出してしまいそうなほど深い溜息をついた。
「これ思っていた以上に責任重大じゃないですか・・・」
「おや、気づいたかい?さすがだねぇ」
ダントンがニコニコしながら私を褒める。なんとも胡散臭い。
「さすがだね、じゃないですよ・・・。私が魔力を供給できるようになれば、ユーリや魔力持ちの生き物たちは安定した力を付けて自分の身や森を守れる。これってひいては国防に係わる話ですよね?」
私はそう言って胡散臭い笑顔を浮かべたままのダントンを下からジト目で見上げた。否定されないということは本当にそうなのだろう。あとは―――。
「・・・」
「どうかしたかい?」
「私、逃げませんよ?」
「・・・は?」
私はダントンから視線を外さず話す。
「みなさんには善くして頂いていますし情も生まれちゃってますからね。私だってこの国が危険にさらされる事態は避けたいです。だから逃げたりしません。なんだったら念書でも書きますか?あ、それか約束を破ったら私の身に何か起きる魔法でもかけておきます?先生レベルだったらそういう魔法も使えるんじゃないですか?」
「・・・どういうことかな?」
数秒の間を置いてダントンがこちらをじっと見返してきた。
「私ってこの国にとって重要人物だと思うんですよね。でも、その反面危険人物にもなりえますよね。もし私がこの魔力を持ったまま他国に流れてそちらに手を貸せばいろいろ問題起きそうですし。国内にいても甘い言葉に流されて傀儡になりそうな大バカ者だったとしても問題ですし。そのあたりを見極めるためにも魔導師長様が直々に教えてくださっているのかなと。そして問題ありと判断された場合には魔力供給が出来るようになった後は、・・・まあ考えたくも無いですけど良くて監視付き生活、嫌な方考えれば幽閉?とかされるのかなと」
そうなのだ。
初めの頃と違って最近は自分の存在の希少性というものもなんとなくわかっているし、国防に係わってくるなら利用しようとするのは国内だけじゃない。そんな私を野放しにするなど基本はありえない。
本来なら初めに教わりそうな国の成り立ちを座学の先生ではなく、この場でダントンから聞くということも冷静になると違和感があった。おそらく話を聞いた時の私の反応を見るためだったのではないだろうか。
こう考える間も私はダントンから視線を外さない。
ダントンの顔からはすでに笑顔が消えている。逆に私は顔に挑戦的な笑みを浮かべてダントンを見据えた。
ここまでは私の憶測で何の確証も無いけど強気な姿勢は崩さない。
さあ、最後に聞こうじゃないか。
「どうです?私は合格ですか、先生?」
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