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王立騎士団の花形職  作者: 眼鏡ぐま
本編

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17/107

17.明日に向かって

ブクマありがとうございます!

 

 夜になってしまった。


 あの後城から戻ってきた私たち、いやラジアスはアラン隊長に捕獲されて「やっぱりラジアスがいないと張り合いが無いんだよなー」と言いながら鍛錬場へと連行された。

 引きずられていくラジアスが話の続きは後でと叫んだので、私は今部屋で待っている。



 ―――コンコン


「ハルカ?今大丈夫か?」

「はーい。あ、開いてるんでどうぞー」


 ガチャッとラジアスが顔を(しか)めながら入ってきた。


「お前なぁ、いくら隊の敷地内でも女なんだから扉の鍵くらいちゃんと閉めろ」

「寝るときはちゃんと閉めてますよ」


 問題無いだろうと思うがラジアスは「そうじゃないだろう」とため息をつく。自分で言うのもなんだが、ここに来て以来、私のことを女扱いするのはラジアスと他には仲良くなった侍女さんたちくらいだろう。彼女たちはどうも私を着飾らせたがるので拒否しているが。


「まあまあ。それでこれからのこと確認したいんですけど」


 私とラジアスはテーブルを挟んで向かい合ってソファに座った。


「あ、でも話進める前に2つ聞きたいことがあるんですが良いですか?」

「なんだ?」

「ユーリのことなんですけど。私初めてユーリに会った時に神聖な生き物なんかじゃない、(おそ)れられているだけ、みたいなこと聞いたんですけど」


 それなのにダントンや貴族の方々は聖獣だと言っていた。さっきはそんなこと気にしている余裕が無かったのだが、落ち着いてきたら気になってしまったのだ。


「ユーリはそんなこと言ったのか。まあ人間側が勝手に聖獣と呼んでいるだけであいつにはそんなことどうでも良いんだろうなぁ」

「・・・だからあんな簡単に私の存在が認められたんですね。おかしいと思ったんですよ。ユーリが気に入ったとかいう理由で大したチェックも無いなんて」

「まあ聖獣を疑う人間などいないからな」


 なるほど、納得である。

 今さらだけど聖獣の背に乗っけて運んでもらったなんて、聞く人によっては卒倒(そっとう)ものなんだろうな。知らないって怖い。


「あとひとつは?」

「あー、これからする私の話って結構重要そうじゃないですか。それなのにアラン隊長が一切関わってきてないんですけど大丈夫なんですか?」

「・・・・」


 ああ、ラジアスが遠くを見つめている。

 やはり本当は隊長であるアランがメインで動かなきゃいけないのか。察した。

 アランお得意の丸投げが発動されているのだろう。


「なんか、ご迷惑おかけしてすみません」

「いや、迷惑などではないし良いんだ。ここに来てまだ日の浅いハルカでも察せられるほどにはもう慣れている」


 ハハッとラジアスから乾いた笑いが漏れた。


「じゃあ迷惑ついでにこれからもよろしくお願いします」


 そう言って頭を下げると、正面から手が伸びてきて頭をわしゃわしゃと撫でられた。


「本当に迷惑などではない。もっと頼ってくれて良いんだ」

「—―――っ」


 不意打ちだ。柔らかく微笑まれて、頭を撫でられて・・・日本にいた時だってお兄ちゃんたちに頭撫でられたことだってあるのに全然違う。


(惚れてまうやろ―――!!)



 なんとか叫びは心の中だけに留めた。


「ほんっと(たち)の悪いイケメンですよね・・・」

「ん?何か言ったか?」

「いえー、いつも頼りにしてますよ。手どけてもらって良いですか?」

「ああ、すまん」


 手をどけてもらってやっと心臓が落ち着く。

 本当にラジアスには自分の格好良さというものを自覚してもらいたい。


「では疑問も解決したところで、本題に入っても良いか?」

「はい、お願いします」


「まずハルカの魔力量が異常に高いということがわかったので、魔力コントロールを学んでほしい」

「コントロール・・・」

「そうだ。通常は子供のころから自分の魔力に慣れていて自然と使えるようになるものだが、ハルカは違うからな。元いた世界では魔法などは無かったのだろう?」

「ですね。今も実感ないんですけど、大丈夫なんですかねー」

「そのあたりは魔導師長に任せておけば大丈夫だろう。当面の目標は魔力を他者に供給する術を身に付けることだそうだ」

「・・・頑張ります」

「そんなに難しく考えなくても良いんじゃないか。初めから全て上手く出来るなんてことの方が少ないものだ」


 私の不安など見透かしているかのようにラジアスは言う。なんでわかっちゃうかな。そんなに顔に出ているのだろうか。


「わかってはいるんですけど・・・使い方すら知らない人間に魔力8万って、何かの冗談ですかって感じですよ」


 溜息をつきながら答えるとラジアスも苦笑した。


「それはさすがに俺も驚いたがなあ。手にしてしまったものはしょうがない。ただな――—」


 ラジアスが急に真面目な顔になる。


「今日の測定でハルカの魔力の高さが貴族の間に知れ渡った。今までは流民が珍しいという理由で気にかけていただけかもしれないが、これからは違う。どういうことかわかるか?」


 ラジアスの言葉に私はしばし考えを巡らせた。


 流民であり他にはない魔力の高さ・・特性・・、そして貴族という言葉。


(ああ、なるほど。すっごいめんどくさい)


「出来ればこの考えはハズレてほしいんですけど・・・私には利用価値がある、ということですか?」

「そうだ。やはりハルカは頭が良いな」

「今ばかりは嬉しくないです・・・」

「ハルカはこの世界じゃあり得ないほどの魔力を保有している。このことは陛下にも報告が行っているはずだ。だとすると、国の重要人物になるハルカをこの国から他国に出すわけがない。国王陛下の覚えがめでたい流民に取り入ろうとする者や面白く思わない者も出てくるだろう」


 ラジアスが真剣な目でこちらを見据える。


「だからこそ、しっかり学べ。この世界について学び、そして人に惑わされず、利用されないよう自分で考えられるように知識と実力を身につけるんだ。

 望まずにこの世界に来てしまったハルカには酷かもしれないが、ハルカならばそれが出来ると俺は信じている」


「・・・はいっ!」


 私はラジアスを見たまま強く(うなず)く。出来る出来ないじゃない。やるかやらないかだ。不安はまだあるけれど、それを上回るやる気で満ちている。

 自分を信じてくれる人がいるだけでなんと心強いことだろうか。胸に温かいものを感じながら、明日からの生活に気合を入れるのであった。


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挿絵(By みてみん)



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