16.私の魔力は400倍
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「では、まず魔力についてハルカ様はどこまでご存じですか?」
この質問に私はこの世界に来てから学び知ったことを簡単に話した。
魔力はほとんどの人が持っていること。
魔力量は人によって違うこと(貴族は特に魔力が高い)。
魔力には個人個人で特徴があること。
「その通りです。例を挙げるなら副隊長殿は風を操ることに長けているという特長がありますし、それ以外の保有魔力も貴族の中でも高いと言えます」
そうだったのかという視線を隣に座るラジアスに送れば「言ったことなかったか?」としれっと返された。
「では特長とは別に“特性”というものがあるということはご存じですか?」
「特性、ですか?」
「そうです。特性とは自身だけが持つ特別な性質で、全ての者が持っているというわけではありません」
「つまり・・・珍しい、貴重ということですか?」
「そうですね。ちなみに私は“鑑定”という特性を持っています。そして貴女にも特性がありました」
「私に特性がある・・・」
そう言われても正直ピンとこない。
何せ今まで魔法だの魔力だのとは無縁の世界にいたのだ。自分に魔力があることだけでも驚いたのに、他の人には無い特性までもあると言われても信じがたい。
「それで、ハルカにはどういった特性があるんですか?」
呆けている私の横からラジアスが話を進めようとダントンに続きを促した。
「ハルカ様は“供給”という特性をお持ちです。そしてハルカ様の魔力は、先ほど月白の銀狼殿たちが引き寄せられたように、聖獣様方にとっては大変美味なる魔力のようです。
聖獣様方にとって魔力は生きるためや成長するための重要な糧となります。基本的には、この空気中に酸素と同じように存在している魔素というものを取り込んで糧としているのです。
ただ自然に存在している魔素というのは微量ですので普通にお食事をとられたりもしているようですが。——―ここまでのお話、大丈夫でしょうか?」
「な、なんとなく」
「なんとなくでも今のところは結構ですよ。そしてですね、通常魔力は人から貰ったり、与えたりすることは出来ないものなのです。しかし、ハルカ様の供給という特性はこの常識を覆すものです。つまり―――」
ここで私はようやっと理解が追い付いてきた。
通常は貰ったり与えたり出来ない魔力。
それを覆す私の持つ特性。そして先ほどダントンがユーリに話していた“与えられる者”という言葉。
それはつまり――
「私が自分の魔力を他の人にも、そしてユーリ達にも分け与えることが出来る、ということですか?」
「その通りです。しかも聖獣様方が好むということは高濃度の魔力ということです。」
「この特性って珍しいんですか?」
「ええ、とても。私が把握している限りでは数百年前に御一方いただけだったかと」
「す、すうひゃくねん・・・」
なんだかとんでもない物を手に入れてしまったような。もっと、ちょっと魔法使えますみたいな人並みのもので良かったんだけど・・・。
「しかし魔導師長、他の者に魔力を分け与えられるのは良いが、ハルカの魔力量が多くないとそう簡単に与えられるものでもないと思うのだが」
「御心配には及びません。ハルカ様の魔力量はとんでもない量ですので」
ラジアスの問いにダントンはしたり顔で答えた。
「とんでもない量とは?」
「ハルカ様の魔力量は数値で表すと約80,000です」
「・・・は?」
「ですから8万ですよ。ほぼ底無しです」
「は、8万だと?!」
ラジアスが思わず立ち上がって驚きの声を上げた。周りの人たちからも「嘘だろう」「そんな馬鹿な」「素晴らしい」など様々な声が上がっている。
私はというと、何故そんなにみんなが驚いているのかがわからない。わからないので素直に聞くことにした。
「あの、それって多いんですか?少ないんですか?」
「多いに決まっているだろう!」
ダントンが答える前にラジアスが横から声を張った。
「多いというか、とんでもない量ですね。そこの副隊長殿も多い方ですが150程、おそらくこの場で一番多いと思われる私ですら200くらいなものです」
「え?・・・えええ??!!」
思わず叫んでしまった。
400倍ってなんだ。どうなってるんだ私の身体。
「ちなみに、先ほどハルカ様は目を瞑っていたので知らないでしょうが、通常魔力測定で魔力を引き出したからといって、見た目には何もわからないものなのです。しかし、貴女の場合は違いました。一瞬で全身を覆うような魔力で空気が揺れ、白い淡い光がハルカ様を包んでいました。おそらくこれは魔力の多さと濃密さの表れです」
「は、はあ」
「ははは、まあ急にこんな話をされても混乱されるだけだと思いますので今日はここまでにいたしましょう。ただハルカ様は魔力が多い分しっかりと扱い方を身につけられた方が宜しいかと思いますので・・・副隊長殿、そちらの調整は第二部隊の方で行ってくださいね」
「わかりました、では―――」
ダントンがラジアスに声を掛け、今後のことについて相談しているようだが内容を気にする余裕が私にはない。
魔力が多いと言われても何の実感も湧かないし、自分にとってそれが良いのか悪いのかも判断できない。ただでさえ珍しいと言われた流民の自分が、さらに珍しい特性持ちの魔力があって、そのうえ普通じゃあり得ないないほどの魔力量があるときた。
(これから、どうなるのかな・・・。やっと今の生活に慣れてきたのに)
「—――カ、ハルカ?」
呼ばれたことに気が付いていつの間にか俯いていた顔を上げると、ラジアスが私を覗き込んでいた。
「どうした?大丈夫か?」
「あ、大丈夫です、すみません。少しぼーっとしてました」
「そうか。もう戻って良いそうだから行こう。ここじゃハルカも落ち着いて考えられないだろう?」
「そう、ですね。聞きたいこととかもありますし。」
そうだ。呆けている場合じゃない。
まずは状況を整理して今後について確認しないと。
ラジアスと共にダントンに挨拶をし、いまだざわつく周りの人たちを残したまま私たちは部屋を後にした。




