15.魔力測定
大変長らくお待たせして申し訳ありません!
活動報告にも書いたのですが、ぎっくり腰になっておりました。
だいぶ治りましたので、これからまたお付き合いいただければ幸いです。
今日は魔力測定を行う日。
昨日あんなことがあったので何となくラジアスに会うのが気まずかったのだが・・・当の本人はいつも通りだった。
少し緊張していた自分がバカみたいだ。
「おはよう、ハルカ。そんなに緊張しなくとも魔力測定はみんなやることだから大丈夫だ」
「はあ、それなら安心ですね。(緊張してるのはそのことじゃないんですけどね)」
ラジアスと話しながら城へ向かう。
城に着いてから案内されたのは大きな扉の前だった。
どうぞ、と言われて開けられた扉の中には人、人、人・・・人、多すぎない?
部屋の中央にいる深緑色のローブを着ている人たちは、まあ魔導師だろう。その周りにいる人たちは貴族の皆様方、だと思われる。
「・・・副隊長、魔力測定ってこんなに大勢の前で行うんですか?」
私は声を潜めて隣にいるラジアスに話しかけた。
ラジアスは首を軽く横に振る。
「いや、普通は魔導師だけだ。ただハルカは流民だからな。どのような結果が出るのかみんな気になるのだろう。この結果は陛下にも報告が行くだろうからな」
「え?!陛下ってことはこの国の王様ですよね・・・うわぁ大事・・」
「いや、もうハルカがこの世界に来た時点で十分大事だからな?今さらだぞ」
私たちがひそひそ小声で話していると魔導師の一人が私を呼んだ。
「それではハルカ・アリマ様、こちらへ。今回測定を担当させていただく魔導師長のダントン・ルースと申します」
「ハルカ・アリマです。本日はよろしくお願いします」
「そんなに緊張されなくても大丈夫ですよ。では早速ですがここに立って力を抜いて、そうです。そして目を閉じてください」
私は言われた通り目を閉じる。
なんでもないようにしているけど内心かなりドキドキだ。
「今からあなたの額に軽く触れます。わずかに熱を感じると思いますが驚かずじっとしていてくださいね。溢れてきた魔力を私が読み取りますので」
私は目を瞑ったままこくんと頷いた。
「それでは周りの皆様もお静かにお願いします。では・・・始めます」
静まり返った部屋の中でダントンの指が額に触れる感覚。そして何やらブツブツ呟く声が聞こえると、先ほど言われていたように額にぼうっと熱さを感じた。
その熱が次第に身体全体に巡るように感じると、下から風が巻き起こったかのようにぶわっと髪が揺れた。
「これはっ・・・!」
目の前にいるであろうダントンの驚いたような声が聞こえ周りもざわざわし始める。
(なに?どうなってるの?目閉じてるから全く状況がわからないんだけど!)
状況はわからないが、今の自分の感覚としては干したてのお布団に包まれているような、ぬくぬくとしたとても暖かい空気を纏っているような不思議な感覚だった。
ふいにまた額に手が当てられると、体を巡っていた熱が引いていくのがわかった。
「はい、ではもう目を開けていただいて良いですよ」
ダントンの言葉に目を開けるとにこやかに笑うダントンとざわつく周囲が目に入った。
「なかなか面白い魔力をお持ちですね」
「え?」
「あなたの魔力は―――――」
「おい!なんだあれは!」「窓の外に!」「聖獣だ!」
ダントンが言いかけたところで急に周りにいた者たちが騒ぎ出した。
騒ぎの元となっている窓の方へと目を向けると、そこに見えたのはユーリの姿だった。
「ユーリ!」
窓の方へ行こうとしてハッとしてダントンに視線を向けると、「どうぞ」と言われたので遠慮なく窓に駆け寄った。
窓を開けると、そこにはユーリと大小さまざまな動物たちがいた。
「ユーリ!」
『久しいな。この匂い、もしかしてとは思ったが・・・やはりハルカだったか』
「匂いって前に言っていたアレのこと?」
『そうだ。ただ前は僅かに香る程度だったが、先ほど急に辺り一帯まで増幅した。ここにいる者たちはその匂いに引き寄せられてきたようだな。香しく、とても美味そうな香りだ』
「それがハルカ様の魔力ですよ」
ざわつく周囲をよそにユーリと話しているとダントンが近づいてきてそう言った。
「お久しぶりです。月白の銀狼殿。先ほどハルカ様の魔力を強制的に引き出しましたので、その為かと」
『なるほどな。となると、今まではただ漏れ出でていただけと考えると・・・すごい者がこちらに流れてきたものだ』
「ええ。この国にとって、特にあなた様方にとっては喜ばしい存在であられましょう。ハルカ様は“与えられる者”にございますよ」
『そうか』
笑顔で頷きながら会話をするダントンとユーリを横目に、私は話についていけず、それは私だけではなく周りの人たちも同じようだった。
『・・・私がここにいると周りが落ち着かないようだな。ラズ、また後日訪れる』
急に壁際にいたラジアスに声を掛けたかと思うと、窓の外にいた動物たちを引き連れて帰ろうとするユーリに慌てて声を掛ける。
「え?何?ちょっとユーリ?」
『お前がこの世界に流れてきたこと、私たちにとっては僥倖である。詳しい話はそこの者にでも聞くが良い。ではな』
そう言ってあっという間に行ってしまった。
なんだろう。前にもあったな、同じようなこと。ちょっとくらい溜息ついても許されるだろう。
深い溜息をつきながら、窓を閉めて視線を室内に戻すとダントンから部屋の中央に戻るように促された。
そこにはいつの間にかテーブルとソファが用意されていた。本当にいつの間に。
「では、お話の続きをさせていただきたいと思います。上司である副隊長殿もこちらへどうぞ」
周りの――明らかに身分の高そうな人たちが立っているのに私だけ座ってしまっても良いものか。そんなことを考えて座るのを躊躇していると「周りの方々はただの野次馬ですので気にされなくて結構ですよ」と、なんだか黒い笑顔で言われたので大人しく座ることにした。
そしてここから魔力があるのかどうか悩んでいたことすらバカらしくなるような結果を聞くことになるのだった。
いつも読んでいただきありがとうございます!
新たにブクマしていただいたみなさんも感謝です。
今週中にもう1話は上げたいと思います。




