13.免疫ないので
ブクマありがとうございます!
久しぶりに連日投稿することが出来ました。
今回からまた本編に戻ります。
私が執務室を訪ねるとすでにアラン隊長がソファに座って待っていた。
待たせたことを詫びて向かいのソファに座るとアラン隊長が話し始めた。
「ハルカはまだ魔力測定したことなかったよな?」
「魔力測定、ですか?」
「そうだ。バタバタしていてすっかり忘れてしまっていてなー。昨日宮廷魔導師に言われて思い出したんだ」
隊長の話ではこの国では平民でも成人を迎えると必ず魔力測定なるものを行うらしい。ちなみにこの国でいう成人とは16歳を迎えた者を指すそうだ。
王侯貴族や騎士団に所属していたり、王城で働く者はそれよりも前に行っていることの方が多いそうだ。
「でだ、さっそく測定を行うことになったから明日ラジアスと一緒に城に行って来てくれ」
「副隊長とですか? こういうのって普通隊長が付いてくるんじゃ……」
そう言いかけたところでラジアス様が執務室に戻ってきた。
「お、ハルカ。あー明日の話か? いつものように丸投げだ。隊員の訓練以外のこともやってくださいよ隊長」
今来たばかりなのにまるで今までの話を聞いていたかのような話っぷり。
こういった面倒そうなことは今までも全てラジアス様に押し付けてきたということが良くわかる。
「あとのことはラジアスに聞いてくれ。さーて俺は愛する妻の元に帰るとするかな」
言い終わるのが早いか扉が閉まるのが早いかわからないスピードでアラン隊長は部屋を出て行った。
ちらっとラジアス様を見ると深いため息をついて私の向かいのソファに腰を掛けた。
「あの、明日はよろしくお願いします」
「ああ。測定の結果によってはまたハルカへの頼みごとが増えてしまうかもしれないなー」
「それならそれで嬉しいですよ。皆さんのお役に立てますから」
「今でも十分すぎるくらい助けになってるぞ。俺はハルカが来てから徹夜しなくて済むようになったからな」
そう言って笑うラジアスに気持ちが軽くなった。
こちらに来てからというものがむしゃらに頑張ってきたと思う。
みんなに少しずつ教えてもらいながらこの世界の文字や歴史を勉強したり、王立騎士団にいるのだから失礼の無いようにと貴族名鑑を借りてきて覚えたりもしたし、好かれないまでも嫌われないように人との距離感をはかりながら生活してきた。
幸いにも私が日本で通っていたのはまあまあな進学校で頭は悪くなかった。自分で言うなという話だが、実際この世界でも通用するものが多かった。
ここ以外に行くところなんてないし、まだまだこの世界の普通がどんなものなのかもわからない。やるしかなかった。
だからこそラジアスの何気ない言葉が嬉しかった。
頑張ってきたことは無駄じゃなかったとほっとしたし、ここにいても大丈夫なんだと思わせてくれた。
「ありがとう、ございます」
込み上げてくるものを感じながらこの一言を言うのが精いっぱいだった。きっと変な笑顔だったのだろう。ラジアス様がじっとこちらを見ていた。
見られていることに居たたまれなくなってラジアス様に明日のことについて聞いてみる。
「あの、魔力測定ってどのようなものなのでしょうか。そもそも私って魔力あるんですかね?」
これは私が一番気になっていることでもある。
日本では魔法なんてファンタジーな物語の中の話だし、自分に魔力があるかもなんて想像もできない。魔力が無かったら追い出されたりしないだろうかということが一番気になっていたのだ。
「魔力測定は魔導師が対象人物に触れて強制的に魔力を引き出す。一時的なものだから安心して良い。その引き出した魔力を数値で見られるらしいのだが、まあこれは魔導師になれるくらい魔力が高いものにしか出来ないものだから詳しい仕組みは俺にもわからない」
「なるほど」
「あとは、そうだな。ハルカちょっと手を前に出してくれるか?」
私は言われた通りに右手をラジアス様の前に差し出した。するとその手をラジアス様がそっと握った。
えっと思ったのも束の間、握られた手からふわっと暖かい何かが流れてきた。
驚いた私は握られた手とラジアス様を交互に見た。ラジアス様は企みが成功したようにニヤッと笑った。
「驚いたか?何か感じ取れたようならきっとハルカにも魔力はあるんだろう。魔力が無い者にはこの感覚はわからないらしいからな」
「そうなんですか、良かった」
不安だった明日の魔力測定に少し希望が持てた。本当に良かったと胸を撫で下ろしたところではたと気付く。私の手がラジアス様に握られたままだということに。
「副隊長っ……あの、手」
「ん? ああ、悪い。やっぱりハルカは女なんだなと。手が小さいし指も細いしな」
そう言いながらもまだラジアス様は手を握っている。
なんだこれ。恥ずかしいっ……恥ずかしすぎるっ!
絶対に顔が赤くなっている、もう限界だ。副隊長は自分の顔面のすごさを絶対にわかっていない!
そんなこと思っていると勢いよく執務室の扉が開かれた。
「失礼しますよー。副隊長これからみんなで飲みに……ってうわ、もしかして俺お邪魔しちゃいました……?」
入ってきたのはセリアンだった。
目の前にはハルカの手を握るラジアス、そして真っ赤な顔をして俯くハルカ。これは非常にまずい場面に出くわしたのではと思っているとがばっとハルカが立ち上がった。
「邪魔じゃない! 全然邪魔じゃないから! ほんっとに問題無いから!」
「お、おお……?」
「じゃあ副隊長、明日はよろしくお願いします! 失礼します!」
そしてハルカはバタバタと部屋を出ていき自分の部屋へと駆け込んでいった。執務室に残った二人はあまりの勢いに呆けていた。
やっちまったならジアスさんよ……(笑)
ハルカは女子校出身設定です。
それゆえ身近な男性は家族のみ。
兄弟はこんな絡み方してこないし純粋培養されてます。




