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12・閑話 噂のあの方

ブクマありがとうございます!

今回は前話で登場したマリアンヌのお話しです。

 

 わたくしの名前はマリアンヌ・オットー、17歳。

 オットー公爵家の娘ですの。


 あの方を初めてお見かけしたのは今から2週間くらい前のことでしたかしら。

 それまでのお茶会などで流民が来たということが社交界の中では話題になっていましたの。男性のように髪を短くしてらっしゃるとかで、初めは女性なのにはしたないわなど皆申しておりましたのよ。

 けれどいつだったかしら、侯爵家のご夫人とご令嬢が王城でその方とたまたまお会いしたらしいのだけど、わたくしたちとは違った顔立ちの見目麗しい方だったと大変興奮なさっておいででしたわ。

 しかも頭の方も優秀らしく、侯爵夫人なんてあんな息子が欲しいわぁなんておっしゃっていましたの。

 そんなお話を聞いたら、ねえ? 気になりますわよね?

 わたくしお父様にお願いして王城でお仕事をするお父様にお会いする用事を作って、こっそりあの方のお顔を見てみようと思いましたの。


 そして当日、ちょうどわたくしがお父様を訪ねた時にあの方を呼び出してくださいましたの!さすがですわお父様!お顔は厳しいのに娘のわたくしには甘いお方ですのよー。

 わたくしがそわそわしながら待っていると、ついにあの方は現れたのですわ。


 ――コンコン


「第二部隊から参りました、ハルカ・アリマです」

「入りたまえ」

「失礼します」


 そうしてお部屋に入って来られたハルカ様はお噂に違わずなかなかお綺麗な方でしたわ。スラッとしていて女性にしては高身長ですわね。なんといっても特徴的なのは黒い髪と瞳ですわね。我が国では両方揃って黒というのは珍しいですもの。


 本当に髪も短いのねぇ。とてもよくお似合いですけれど。お化粧もほとんどしていないようなのに……これは着飾ったらとんでもないことになるんじゃなくて?


「では、こちらの書類をアラン隊長に必ずお渡し致します」

「ああ頼む。——―ああ、そこにいるのは私の娘だ。いきなりいるから驚いただろう」

「初めまして。マリアンヌ・オットーと申します。お噂の流民にお会いできて嬉しいわ」

「お初にお目にかかります。ハルカ・アリマです。良い噂だと良いのですが」

「おおむね良い噂ですわよ。皆あなたに興味津々ですわ。そうだわ! 今度お茶会にご招待しても良いかしら?!」

「これ、マリアンヌ。アリマ殿が驚いているではないか」


 わたくしついつい興奮してずいずいっとハルカ様に迫ってしまいましたの。そしてドレスの裾を踏んでしまいよろめいてしまったの。淑女として恥ずかしいですわ。

 そんなわたくしをハルカ様はいとも簡単に抱き留めてくださいましたのよ!


「おっと、大丈夫ですか?」

「え、ええ、ごめんなさい。重かったでしょう? もう大丈夫ですわ」


 そうなの。わたくしちょっとふくよかなところがコンプレックスですの。そんなわたくしの体重をかけてしまったなんて恥ずかしくて顔があげられないわ。


「とんでもない。まるで羽のようでしたよ。あなたにお怪我がなくて良かったです」


 そう言ってハルカ様は微笑んでくださったの。





 きゃーーーーーー! 甘いわ、とっても甘いわ! 物語の王子様のようじゃなくて?!

 キュンときたわ! この方は女性のはずなのに……ときめくわ!

 格好良いわーーー!!



「ではオットー公爵失礼いたします。また御用がありましたら何なりと」


 そう言ってハルカ様はわたくしが悶えている間に行ってしまわれたわ。

 わたくしはハルカ様が出て行かれた扉からぐるんとお父様の方に向き直りました。


「お父様!」

「な、何かな?」

「ハルカ様にお礼の品を贈りますわ! 何がよろしいかしら?!」

「今、お礼をするほどの事が起きたようには思えな「何がよろしいかしら?!」……」


 お父様はわたくしの勢いに若干顔を引きつらせながらも、ハルカ様はこちらにその身一つでいらっしゃったからご自分の物を持っていないので、普段ご自分の物として使えるものが良いのではとアドバイスしてくださいましたわ。

 考えた結果よく使っていただけそうなハンカチにしましたの。イニシャルを刺繍したいとお母様に言ったらとても驚かれましたけれど。

 ……刺繍なんて苦手でしたので授業もさぼっていましたけれど、今回は目的がありますもの! わたくしのお手製刺繍入りハンカチを絶対にお渡しするのですわ!






「恋する力はすごいわねぇ、ヘレン。後で旦那様に詳しいお話を聞かなくちゃ」

「はい、奥様。でも流民の方は女性なのでは?」

「そうねぇ。憧れというものじゃないかしら。どちらにしてもマリアンヌが進んで刺繍の授業を受けたいなんて素晴らしいことよ」

「ええ、ええ。いつも理由を付けてはさぼっておりましたのに」



 ひそひそと話す2人をよそに納得のいく出来になるまで頑張るマリアンヌであった。


ハルカは演劇部の友人が演じていた物語の王子様の口調を参考にしているのであながち間違いではないです(笑)


次話から本編に戻ります。

よろしくお願いします。

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挿絵(By みてみん)



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