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11.改めまして

ブクマありがとうございます!

 

 この世界に来て早2ヶ月。

 騎士団預かりの身だった私は騎士団雇われの身となっていた。つまり就職した。


 なぜそんなことになったのかというと、働きたいと言った私に用意されたのは第二部隊の雑用係だった。

 ある時執務室の片づけをしている際に副隊長が落とした紙を拾い上げた。


「副隊長、“警備予算案”の紙落とされましたよ。はいどうぞ」

「ああ、ありがとう。――ってハルカ、これが読めるのか?」

「え? 読めますよ。ってあれ?? 読めちゃってますね……」


 こんな感じでこの世界の文字が読めることが判明した。

見た目は平仮名でも漢字でもカタカナでもないのになぜか読めた。これが異世界補正というやつか。

ちなみに書くことは出来ない。中途半端さが否めない。

 それから計算なども出来るかと聞かれ、もちろんできると答えると計算が必要な書類だけお手伝いをすることになった。

 というのも、本来ならこの手の書類仕事は隊長がメインで行うもののはずなのに「俺には向かん」という言葉を残して、いつも副隊長であるラジアス様に丸投げするらしく煩わされていたらしい。

 他の書類も手伝えるようになるべく文字を書けるように絶賛勉強中である。

 騎士団の書類を正体不明の流民なんぞに任せて良いのか、そもそも雇って大丈夫かという疑問は国王陛下の「ユーリが気に入った娘ならば問題無い」という謎の一言によって全てクリアされた。

 ユーリ……一体何者。



 そして次は洗濯。

 洗濯ものは王城の洗い場に持って行くと水の魔法を使える人が洗ってくれるらしいのだが、騎士団の衣類は泥が付いていたりと頑固な汚れがあり、ただ洗うだけではなかなか綺麗にならない。

 そこで役立つのが私である。洗い場に持って行く前に手洗いするのだ。

 何それ、そんな簡単なこと? と思うだろうが、これが結構重労働。侍女さん方は結構良いところの出が多いそうで汗くさい、汚いと非常に嫌がられるらしい。


 他にもいろいろあるが、私は「これやってくれる人がいたら助かるのになー」という所をまんべんなくこなせる一粒で二度どころか三度も四度も美味しい役立つ人材だった。


 働きだして初めの頃は珍しい流民見たさにいろんな人に声を掛けられたり見られたりして落ち着かなかったが善くしてくれる人が多いし、こうして思いのほか忙しく毎日を過ごしているおかげか気も沈み過ぎずに済んでいる。


 他に変化があったことといえば……そうそう、言葉遣いについても改めた。

 こちらの女性の話し方が「○○なのかしら?」や「思っておりますの」「わたくし」「ですわ」などなど到底自分の口からは出てこないお嬢様~な喋り方だと知り、即諦めた。

 普通の敬語でも良かったんだけどついつい素が出てしまうので日本にいた頃に演劇部の友達が王子様みたいな役をやっていた時の言葉遣いを採用してみた。

 どんな感じかというと……あ、ちょうど人が来たので実践してみよう。


「ハルカ様! あ、あのもし宜しければこちらをっ……!」

「こちらを私に? ……イニシャル入りのハンカチ。私のような者が頂いても宜しいのですか?」

「も、もちろんですわ! あなたの為に刺繍しましたの」

「ではありがたく。大切に使わせていただきます。ありがとうございますマリアンヌ嬢」


 胸に手を当てスッと頭を下げる。


「わたくしの名前覚えてくださっていたの……?」

「もちろんです。このような菫色の可愛らしい瞳をお持ちの方を忘れるはずありませんよ」


 そう言うとマリアンヌ嬢の顔がぼっと赤くなった。

 そして「そんな可愛いだなんて! ま、また来ますわー!!」といって小走りに去っていった。

 まあ話し方はこんな感じで、特に咎められないので問題ないのだろう。


 自分の物を何も持たずにこの世界に来てしまったのでこうした頂き物はとても助かる。手の中にあるハンカチをほくほくした気持ちで見ていると後ろからセリアン様に声を掛けられた。


「お前はタラシか。女が女口説いてどうすんだよ……」

「はあ? 口説いてなんてないですよ。真実を述べたまでです。それに皆さん私が女だってことはご存じなんですからそんな誤解は失礼です。流民だから気を遣って善くしてくださっているだけですよ」


 たしかに女性方からこの喋り方は受けが良いらしく、様々な物をもらったりはする。

 服もスカートだと動き辛いし隊の中で支給されている服ならタダだからズボンしかはかない、髪もまだ短いし身長も高いから男っぽさは消えていない。

 “男装の麗人”とか言われたりしているらしいし。最初は受け入れがたかったけどそのおかげでみんな善くしてくれているならラッキーじゃないか。この見た目に産んでくれてありがとうお母さん。


「それで? セリアン様こっちのほうまで来るの珍しいですけど私に何か御用でした?」

「あー、そうだった。隊長が執務室に来てくれってさ。お前何かしたのか?」

「え? 何もしてないと思いますけど……」

「ふーん、まあ伝えたからな。んじゃ俺は戻るから」

「あ、はい。わざわざありがとうございます」


 おーと手を挙げてセリアン様は戻って行った。

 私何かしただろうか。何もやらかしてはない、と思う。でもこの2ヶ月で隊長に呼び出されたことって本当に少ないのだ。事務的な呼び出しはほとんどラジアス様からだし……なんか緊張してきた。


 私はドキドキしながら執務室に向かった。


ハルカはタラシ(笑)


ノロノロ投稿ですみません(-_-;)

評価&感想などいただけましたら小躍りします。

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挿絵(By みてみん)



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