飛ばない
「ねぇ、こっちに戻ってきて」
「先輩は、ボクと一緒に飛んでくれないんですか?」
「正直なところ、あなたにそう誘われると、私も揺らいじゃう」
「先輩だってわかってるんですよね。飛んでしまった方が幸せだっていう事」
「ええ、多分、実際そうね。でも、『今』飛ぶかというと、私にはまだ迷いがあるの」
「ということは、先輩は多分ずっと飛べませんよ。多分、それならそれでいいとも思います」
「そうかもしれない。でも、あなたも一旦そこから戻ってきて」
「この柵を越えてしまうか、そこがボクとは違ったんでしょう。それでは」