魅了されてみよう
ドラクエビルダーの2をクリアしました。
涙腺が貧弱な私は、薬草作るシーンでガチ泣きしてしまうのです。
尊い
ルーシーはおもむろにニーソを脱ぎ出した。
1日履いていてムレムレ……だったのは、先程の洗浄消毒で綺麗になってしまったが。
上級・中級・下級・最下級の4種類の中から、この世界の人はどれが1番効果が出るのかのクイズである。
正解すればご褒美と言ってから、ルーシーは徐々に脱ぎ出している。
一体ご褒美とは何なのか、トレバーは緊張で喉を鳴らす。
「で、センパイは分かりましたか?」
「あ、あぁ……。上級から下級までは割合回復で、最下級だけは固定値回復だったな……。これは上級か、最下級の2択だよな?」
「んふふ〜、どうでしょうかね?」
「1番HPを回復……ん?待てよ、ルーシー、1番効果が出るものなんだな?」
「あ、気がついちゃいましたか?」
「傷を治すのか?なら、上級ポーションか」
トレバーは先程の話の中で、自分達がリアルになった事で、HP制の世界から外れているのでは?と考えた。
実際、ルーシーの実験ではダメージはHPが減るでは無く、実際の傷として表われていた。
薄々と感じていた考えが、トレバーの武器破壊によって立証されてしまったのだ。
「ふふ♪正解ですよ……そして、とっても残念なお話になります」
「傷……か、Wider worldの時は無かったもんな」
Wider worldでの傷の表現は、状態異常の出血や、ポリゴンの流出となっている。
全年齢対象のゲームである為、破廉恥とグロには厳しい運営なのだ。
「HPがどれほど有ろうが、首を落とされれば死ぬって事か?」
「ですね、世界の理ってやつです。ポーションの効果も、どうやら変わっている様で、上級に上がるに連れて傷の治る速度と、効果が上昇していました。逆に、最下級は血を止める程度の効果しか見込めなかったですね」
「上級に上がるに連れて効果も上がるって、意外とこの世界の住人はHPが多いのかもしれないぞ。最下級は、僅かにしか回復しないからな」
「で、有れば良いのですけれど。この世界の普通の人達は、ステータスなんて見る事は出来ないそうですよ」
「あん?ならどうやって、自分の使えるスキルを把握するんだ?」
くるくると、ルーシーの人差し指は回る。
話をする時に、自分の中で整理する時の癖である事を、トレバーは長い付き合いで把握している。
「何となく、解るそうです。まぁ、使える魔法……魔術?は、実際に発動してみないと解るないそうですけれど」
「ふぅん、何となく……ね。それと、さっきの言い方、普通じゃない奴も中には、いるんだな?」
パチンと両手を叩くと、ルーシーはにっこりと微笑んで続ける。
「ええ、とっても不測事態の危険分子、生物兵器として各国では異世界勇者を召喚しているそうです」
「異世界から呼ばれた奴らは、自分のステータスを観れるのか……まるで、ゲームだな」
「何を今更、センパイにとっても、この世界はゲームと一緒でしょう?」
確信を突いたルーシーの言葉に、トレバーはドキリとした。
廃人プレイヤーのトレバーにとっては、Wider worldの世界こそがリアルである。
命のやり取りへの恐怖も、種族による差別も、ゲームだから、何処か他人事な面があった。
「センパイだって、日本の論理感に無理矢理当てはめようとしていますか、実際のところは、試したいんでしょう?楽しみたいんでしょう?遊びたいのでしょう?」
嗚呼、だからか。
トレバーはそっとため息を吐いた。
冒険者ギルドでマルチダと敵対した時。
命を奪いかねない状況に、ワクワクしてしまった。
スリルへのドキドキなのか、自分の力が何処まで通じるのか確かめてみたかったのか。
どちらにしろ、普通では無い。
「そうだな、俺は何処か浮かれているのかも知れないな。大好きな、Wider worldの世界に来れたと」
「えぇ、ですから自己防衛なんて拘らないで……」
「だからこそ、俺は、命に敬意を払おうと思う」
ルーシーは口を閉じた。
相手に敬意を払って闘い、お互い認め合って命を奪う。
理解は出来るが、共感は出来ない。
けれど、トレバーのやろうとしている事は、例え茨の道だとしても。
「それは……それは、とっても正しく在ろうとする、素敵な考えだと思います。けれど、僕には出来そうもありません」
「良いさ、これは俺のエゴさ。でも、エゴはエゴなりに、覚悟を決めなくちゃならないだろ?」
「僕は、そんな所がセンパイの不器用で、ダサくて、モテない要因で……」
貶す後輩の言葉に、トレバーのライフはガリガリと削られていく。
だが、ルーシーは顔を上げて、ニッコリと微笑んだ。
「でも、とっても格好良いと思いますよ」
「ふっ、照れる」
ルーシーの生足を見て、トレバーはご褒美の事を思い出した。
ベッドに脱ぎ散らかされたニーソを、チラリと見て思い悩む。
「ところで、ご褒美って何だ?」
「あぁ、はいどうぞ。今日市場で買った、アポロの実……まぁ、リンゴですね」
「あ、どうも。リンゴか……」
「あれ?えっちな事が良かったんですかぁ?」
「ち、違う……。というか、何でニーソ脱いだんだ?」
トレバーの質問を聞いて、ルーシーはちょっとぴり困った様な顔をする。
「いえ、部屋に着いたので……僕は、室内とかリラックスする時に、靴下履いているの何か嫌なんですよね」
「あ、そうなのかー。へーっ!」
取りあえず誤魔化す事にしたトレバーを、ルーシーは訝しげに眺める。
何処となく挙動不審であるが、骨が挙動不審なのは何時もの事かと納得した。
「それより、聞けルーシーよ。俺は絶景スポットについての情報を仕入れたんだぜ」
「絶景スポット?あぁ、僕もお姉さん方から街の名所は聞きましたので、明日のお仕事が早めに終わったら、向かいましょう。それに今日買い物していて、センパイが好きそうな場所をみつけたので」
「いいなっ!あ、でも、俺の仕入れた場所は門の外だから、依頼のついでにいけると思うぜ」
「へぇ……」
マルチダとお茶をしながらさりげなく聞いた、冒険者達の人気の場所である。
名前は無垢なる泉と名付けられており、透明度がかなり高いが、泉の底は見えないほど深い。
それ故に、青く見えるのだそうだ。
幼馴染同士の新米冒険者のカップルは、この無垢なる泉でデートするのが第1の目標となるのだ。
東の森の中区にある為、ピッチピチの新米冒険者卒業の目安とも言われている。
将来を誓うカップルには、まず最初の目標となる。
景色へのデートと、実力を図る事を同時に行える優れたスポットと言えるだろう。




