お買い物をしよう
通貨の設定がうろ覚えなので、確認の末に後日手直しします。
(`・ω・´)町の名前なんだっけ
修正中に3回勝手にリログされ、修正箇所が戻る。
・:*+.\(( °ω° ))/.:+
マルシャン達から金貨を10枚受け取ったトレバー達は、頭の上まで太陽が昇った街を歩く。
広場は何処からも美味そうな匂いが漂っていた。
この世界の詳しい時刻を知る術が無いトレバーであったが、昼過ぎだという事は腹時計で分かった。
骨しかないのだが。
考えてみれば、この世界の時間に対する知識も持っていない。
その内、常識的な事を知る必要があるな。
トレバーはそう考えてから、何処で調べるべきだろうかと思い悩む。
やはり、冒険者ギルドだろう。
登録時の説明を思い出す限り、教養が無く職に困った人間もギルドに登録する事ができる。
更に他国から来たと話せば、ある程度の常識を尋ねても怪しまれる事はないだろう。
そんな事に珍しく頭を働かせて歩くトレバーは、Wider worldのメニューウィンドを出す為に、空中に指を彷徨わせる。
開いたメニューから、ログアウトボタンを探すが、相変わらず失われたままであった。
「ふーむ、やはりメニューが開けるのは便利だな。時間が解るし、イベントリに何が入ってるのかリストで見る楽しみが出来る」
「そーですね、収集癖を持っている人にとって、ズラリと並んだアイテムリストを眺めるのは、とっても楽しいですからね」
既に焼いた兎肉の串を両手に持ち、頬にタレを付けたルーシーが頷いた。
ウサギのヌイグルミは汚れるからとの理由で、イベントリのアバターは首から掛かるデフォルメされたクマちゃんのガマ口財布へと変わっている。
兎肉を食べながら、ウサギのヌイグルミを持つ幼女は、軽いホラーだとトレバー思って止めたのは内緒だ。
イベトリのアバター変更は、メニューのウィンドから設定出来る。
ウサギのヌイグルミと、クマちゃんの財布はあくまでイベトリの入り口であり、中のイベトリは共有されている。
「センパイ!お好み焼きらしき物が有ります!!」
「ちょ、タレが付いた手で引っ張らないで!このアロハシャツめちゃ高かったの!!」
グイグイと新たな屋台を目指すルーシー達。
この街は先人達の努力の賜物で、かなりの食文化が進んでいる様だ。
それが勇者と呼ばれる者達の入れ知恵なのか、自分達の様にWider worldからやって来たプレイヤーの影響なのか、この世界の住人から生まれた発想なのかは解らないし、興味も無い。
ルーシーにとって大事なのは、目の前の料理の材料と味付けと、料理の材料が手に入るかだけだ。
「タレを見る限り、この世界は醤油に近い物があるみたいだな〜」
「Wider worldでは、錬金術の初期レシピの1つでしたしね。ボクらより前に、この世界に来たプレイヤーの功績の可能性もありますけれど、これはとっても素敵な事です」
「あぁそういえば、錬金術のレシピでは、豆と魚2つ分けてレシピがあったな。如何にもご意見が大量に届いたせいらしいが」
「ええ、ただ発酵食品は菌や素材、手順といったあらゆる先人達の知識と努力の結晶であり、芸術の1つです。発酵や熟成の時間が無くても、同じ成分と味を短時間で作る錬金術とは、全くの別物だとボクは思いますよ」
肩を竦めたルーシーを見て、現実で発酵食品関係の職業に就いているフレンドが、頭を抱えていた事をトレバーは思い出した。
Wider worldでは現実から味データを取り込んでおり、時間を掛けずとも造られた瞬間に、まるで長期間発酵や熟成されたかの様に仕上がる。
更に、何度造っても味の変化が全く無く、均一の味となる。
勿論、味覚と嗅覚は実際されていないので、あくまでも設定上は、の話しである。
現実で料理関係の仕事に就いているフレンド達も、頭を抱えていた。
あくまでもゲームなので、誇りを傷付けられた云々では無いらしいが。
彼等にも、彼等の悩みが有るのだろう。
生産物作業を趣味として嗜んでいる程度のプレイヤーには、失敗がし難くて良いという評価であっただけに本職も複雑な心境なのだ。
運営はこの本職のご意見に心を射たれ(文字通り)、品質を分ける事で対応した。
錬金術等とは異なり、適切な手順を踏み造られた素材は高い品質となる。
更に、高品質の素材を使った料理や武器、アイテムは性能が高まる様にする事で住み分けを図ったのだ。
「味噌屋や酒蔵を、プレイヤーの開拓組が始めたのは笑ったな」
「ふふ、何故かNPCが彼等に弟子入り志願していましたからね」
ルーシーにアロハシャツを汚されながら連れてこられたのは、鉄板焼きの屋台であった。
火魔法を使っているのだろうか?
他の店とは違い目の前の店からは、あまり煙が立ち上っていない。
熱された鉄板に刻んだ野菜を混ぜた生地を乗せ、ジュウジュウと音を立てている。
ひっくり返した生地に、茶色ソースを垂らすとジュワーっとソースが跳ねて芳ばしい香りが立ち上る。
「おじさん3枚くださいな」
「あいよお嬢ちゃん、銅貨6枚だ」
鮮やかな緑色の大きな葉に、屋台の男は3枚のお好み焼きらしき物を1枚づつ乗せて手渡しする。
代金を払い、両手に手のひらサイズのお好み焼きを持ったルーシーは笑顔満点である。
「ところでおじさん、この料理の生地には小麦粉が使われているのですか?」
「おや?お嬢ちゃんは料理に興味があるのか!」
「ええ、とっても」
「その歳で偉いもんだなぁ」
「ふふ、ありがとうございます」
丁寧な言葉とお淑やかに微笑む姿に、店主はルーシーをお忍びの貴族辺りかと推測した。
最も、その気品は顔に塗られたソースによって、殆ど残っていないのだが。
チラリと連れの真っ白な骸骨を見てみるが、冒険者達の様なある種の凄味は全く感じない。
とはいえ、魔族に分類される知能ある魔物達は、大抵は恐ろしい力を秘めているのは有名である。
彼も何か取り柄が有るのだろう、そう軽く考えていた店主。
「ルーシー、1つくれ」
「ええ、ええ。最初からそのつもりですよ、センパイ」
しかし、この街で商売を始めて10数年、店主は遂に魔族の恐ろしい力を目の当たりにしたのであった。
「うん、美味いなコレ!!」
食べているのだ。
骸骨が物を、スケルトン(実際は違うが)が物を食べている。
骨しか無いのに隙間から溢れる事も無く、咀嚼している口の中は謎の闇に包まれている。
元冒険の店主は結婚を期にこの店を始めた。
10年以上冒険者として戦い、10年以上この店を構えて来た、歴戦の戦士である店主さえも驚きと興奮の余り、息をする事も忘れてしまっていた。
だが、真に驚くのはこの後であった。
「……ゴクッ」
飲み込んだ。
喉仏も何も無いというのに。
魔族は凄すぎる!!
店主は驚きで手が震え、道具を取り落としてしまう。
金属の落ちる音が周囲に響き、静寂が続く。
辺りには灼熱の鉄板から鳴る音のみ。
あまりの静寂に、トレバーが不安になり始めた頃、ようやく店主は重い口を開いた。
「あ、アンタ名前は何だい?」
「む?オレか?オレはトレバーと言う者だ」
「ま、魔族って凄いな。失礼だが、俺はてっきりアンタは物が食べれないと思っていたぜ。今まで生きて来て1番驚いたぜ」
「…あ、あぁ、魔族パワーだ」
「そうか、魔族パワーか…っ!俺は魔族は初めて見るけどよ、やっぱり凄い力を秘めてるんだな!!」
店主がウンウンと頷くのに適当に合わせるトレバーは、この世界の魔族って意外と大した事が無いかもなーって感想を抱いていた。
店主から小麦粉の話等仕入れたトレバー達は、取り敢えず宿を取って自由行動をする事にする。
小麦粉は食材等で賑わう町通りに有るらしく、武器屋等は外へと続く門の近くであり、別れた方が効率的という結論に達したのだ。
ぼっちは怖いので、離れたく無いと思ったトレバーであったが、先輩の威厳を損なうのは良くないと考え、ルーシーが離れたく無いと言うのを待つ事にした。
しかし、血も涙も無い後輩は食材を目指しさっさと宿の前から歩きだしてしまい、1人寂しく街中を歩く羽目になる。
トレバーと別れたルーシーは、賑やかな市場にやって来ていた。
日本の商店街と呼ばれる物の黄金期の様な風景が広がり、思わず圧倒されてしまうルーシー。
最も、ルーシー達が産まれた時代は、商店街等が既に過去の物となってしまっていたのだが。
それでも、人々の熱気に時代や世界は関係無く、来るもの達はそれに当てられついつい買い過ぎてしまうのだ。
ルーシーの所持金は金貨4枚と銀貨7枚、そして銅貨5枚分であり、使い切る勢いで買えば相当な量が買える事だろう。
後の事は考えない、買わぬ後悔より買う後悔、ルーシーに貯金しておくという発想は無いのだ。
勿論読者の麗しい皆様方は、堅実な貯蓄をしているだろう。
しかし、財布にお金が有れば使いたくなるのも事実、それも食材となれば目の前の物を片っ端から深く考えずに購入してしまうのも致しかねあるまい。
漫画やフィギュア、書籍にグッズ、車に自転車、バックに洋服、スポーツ用品etc...他人の収集癖に口を出すのは野暮というものである。
「おば様、此方の野菜の名前は何と言うのでしょうか?」
「これはポプリカさ!赤や黄色色取り取りあって綺麗だろ!ヘタと中の種を取ってやれば食べれるよ!」
どう見てもパプリカの野菜は、じっくりと火を通せば甘味が増して美味しくなるだろう。
付け合わせにも十分な綺麗な色と、新鮮な水々しい艶のある野菜。
「それぞれ2籠程購入したいのですが、幾らほどですか?」
「お嬢ちゃん太っ腹だね!全部で銀貨9枚分にまけてやるよ!」
恰幅の良いおばさん店主は笑って答える、冗談だと受け取ったのか、ルーシーの外見から世間知らずな子供の言葉と判断したのかは解らないが。
相場が幾らほどなのか解らなず、値切るのは食材と関わった人に失礼だろうと考えたルーシーは、言われるがままに金貨を1枚手渡した。
目をパチクリとさせていた店主だが、数日分の稼ぎが目の前にあるのだ、すぐ様我に返り銀貨1枚のお釣りを返して商品の用意をする。
ルーシーは買い物に相応しい格好として、イベントリの入り口のアイテムを小さなうさちゃんリュックに変えている。
淡いピンクの生地に、デフォルメされた白い兎や人参のアプリケが縫われているのだ。
トレバーは基本的にポケットか、腰のウェストポーチにしかイベントリを移さないのだが、外見を楽しむルーシーは様々なイベントリアイテムを頻繁に変更している。
最も、本気の戦闘時は定位置が決まっているだが。
何処とは記載するまい、彼女の手札の1つであり、ピンチの時にご都合主義の1つになり得るからだ。
あら?読者の皆様、変な所を想像したら……メッ!ですわよ。
ふふ、状態ですわ。
理想的な淑女や紳士の皆様は、そんなふしだらな場所、想像なんてしないものね。
さて、ルーシーは目の前に積まれた山盛りのポプリカを、小さなリュックにどんどん詰め込まれて行く。
最初は微笑ましく見ていたおばさん店主の顔は、次第に驚愕に変わって行った。
見た目以上に物が入る魔道具は存在するのだが、よっぽど運に恵まれた冒険者か、金に糸目をつけない大貴族にしか、手に入れる事が不可能な希少度合いである。
間違っても、目の前の年端も行かぬ少女が持つ様な物で無い。
驚くのも当たり前だろうが、そういった要因から市場の人間から、ルーシーは貴族のお嬢様と判断されて行った。
基本的に、少ない種類の商品をそれぞれの店が売る様であり、ルーシーは店を後にした。
そのままぶらぶらと、市場を彷徨う。
森に面している事もあり、魚は見当たらなかったが、果物や野菜、バレルの言う通り兎肉の店が多かった。
手頃な食材をあらかた買い込んだルーシーは、すっかり減ってしまったお金を見てため息を吐いた。
「んー、やっぱりお買い物って買いすぎてしまうなぁ。センパイが武器屋で無駄遣い(食料は無駄遣いではない)していたら、明日から路頭に迷いかねないよ」
やれやれと肩を竦めるルーシー、最もWider worldでプレイヤー同士の取引は、最低価格が金貨によるものだ。
その為、2人は天満文学的な金貨を所持している。
といっても、下手な金貨の流出は、無用な経済の混乱に成りかねないので殆ど使わないつもりらしいが。
1人でうんうん唸っているルーシーは、辺りが人もまばらな寂れた風景になっている事に気がついた。
いつの間にか市場の端に来た様で、この先は難民等によるスラムがある事をバレルは忠告してくれていた。
この街で、路頭に迷った者達の末路なのだ。
冒険者になれば立ち直る事も可能だろう。
最も、彼等はその選択が出来ないのだが。
ルーシーが、少し後ろ髪を引かれながら踵を返すと、目深に帽子を被った少年が立っていた。
年は現在子供の容姿であるルーシーよりも、少し上の10歳前後だろうか?
「ねぇ、俺と一緒に遊ばない?」
「遊び?何をするのですか?」
「探検さ、きっと楽しいぜ!」
探検、男心が擽ぐられると、トレバーなら浪漫を求め2つ返事で着いて行っただろう。
しかし、ルーシーはジッと少年の顔を見ていた。
見る者の目を惹く白銀の髪に、真っ赤な相貌が合わさり、年とはかけ離れた妖艶さを漂わせる。
その整った顔がグニャリと歪んだ様に見えたが、少年が瞬いた後には年相応の微笑みを浮が浮かんでいた。
「ふふ、それはとっても素敵なお誘いですね」
「おう、行こうぜ!」
「ええ、ええ」
ルーシーが差し出された手を握ると、スラムの奥へ奥へと進み出す。
右へ、左へ、日が陰る薄暗い街少年に手を引かれ、奥へ奥へと進んでいく。
そして、少し開けた袋小路に出る。
木箱やよく分からない残骸が散らばり、ガラクタ置き場となっていた。
この景色をルーシーは、少し面白いと感じた。
人々の作り出した生産物の終着点、一種の世界の終わりだから。
ほんの僅かに少年に感謝したから、手を離し駆けていくその後ろ姿を見逃したのだ。
だって、トレバーが喜びそうな景色だから。
きっと、ここを秘密基地とするなんて叫ぶに違いない。
そんな想像をして、優しく微笑む姿は年相応そのものであった。
ゆっくりと振り返ったこの袋小路の入り口、無精髭を生やした厳つい男達が嫌らしい笑みを浮かべていた。
手には麻袋や荒縄の様なもの、街に入る事に金がかからない理由が広がっていた。
そう、元は取れているのだ。
入った人を高く売れば利益しかない、しかも旅人は居なくなっても誰も関心を持たない。
「お嬢ちゃん、良い鞄を持ってるなぁ」
「お嬢ちゃん自身も高く売れそうだし、ツイているぜ」
俯き肩を震わせるルーシーに近づく男達は、ゆっくりと上げられた表情に足を止めた。
そこには、美しい顔が歪むほどの狂気の入り混じった笑顔が浮かんでいた。
「キヒッ!キヒヒヒッ!!」
ルーシーは不意打ちが好きだ。
ルーシーは弱い者苛めが好きだ。
ルーシーは気持ち良い勝利が好きだ。
ルーシーは自分の考えた罠に相手が嵌るのが好きだ。
この世界に来て、ずっと我慢していたのだ。
だって、トレバーと約束したから。
「“闇に誘う小さな手”」
ルーシーが影魔法3段位の闇に誘う小さな手を発動すると、彼女を中心に影が素早く地を這う。
咄嗟に反応出来ず、男達は足元から飛び出した実態を持つ影に捕らえられた。
闇に誘う小さな手は影魔法3段位という低位の魔法だが、発動の速さと低コストにより、牽制や妨害の為に使われる。
自動で敵を追尾し捕獲するので、近接戦闘中でも相手に使う事ができ、捕らえられるのはほんの一瞬ではあるものの、その一瞬は決定打を生むのには十分な時間となる。
攻撃判定を持たない魔法なので、影魔法を無効する装備やスキルを使わない限り、影魔法耐性を持っていても隙を作る事ができる。
範囲や射程の広がる上位の魔法は存在するが、発動までに差がある為、大抵のプレイヤーは使う事が無い悲しき魔法となっているのは余談である。
村人が低位の毒魔法を抵抗出来なかったのと同様に、低位の影魔法に捕まった彼等は喚く事しか出来ない。
最も、暗殺や奇襲が主体の影魔法は、その声すら包んでしまうのだが。
袋小路が真っ黒な闇に包まれると、スラムには再び静寂が戻ってきた。




