最終話
陽介が好き。
その感情に偽りはない。
今日が18歳の誕生日。
葵は陽介を選ぶことにした。
病室に入り、陽介に声をかけた。
幸いここは一人部屋だ。
会話が外に漏れることはないだろう。
「陽介今日が、私の18歳の誕生日なの」
「ああ、知っている」
「本当に良いの?」
「覚悟はできている。そのために来たんだろう」
そう言われごくりと葵の喉が鳴る。
そっと彼の首筋に唇をつけ牙を突き立てた。
「!」
彼の血はとても甘かった。
暫く吸っていると陽介にも変化が表れ始めた。
彼の瞳が琥珀色に変わり、牙が映え始めた。
愛し愛される者の血は本当に陽介の血だったのだ。
二人はお互いに抱きしめ合った。
そうしてキスを交わしあった。
「何とかぎりぎり間に合ったわ」
「俺の気持ちにもっと早く気付いてくれていればよかったのに」
「そんなこと言われても・・・」
陽介は拗ねたようにそう言った。
「私にも色々な悩みがあったのよ。今も解決していないけど・・・」
「あの後あいつはどうなった?」
「分からない。学校にはもう来ていないの」
「それだけの事をしたんだ。仕方ないだろう」
陽介は自分のわき腹を撫でながらそう言った。
「あれ?痛くない?」
「ああ、もう治ったのね。良かったわ」
(もっと早く血を吸って吸血鬼にしてしまえばよかったのだろうか。そうすればこんなに怪我が長引くこともなかったはずだわ。でも、私も臆病者だからなかなか行動に起こせなかったのよ)
これからもっと大変なことがある。
弱肉強食のあの世界で陽介がやっていけるかどうかだ。
その話を陽介にしてみたが何故か自信があるらしい。
とりあえず陽介のおかげで灰になり消滅せずにすんだ。
「陽介、本当にありがとう」
そう言い、初めて葵からキスをした。
陽介は慌てていた。
「陽介、行こう。もうここにもいられないわ」
「わかった」
そうして二人は吸血鬼の世界へと旅立っていった。