やっちゃった。(幼年期5)
俺ももうじき2歳になる。
今の俺のお気に入りは『あんまんマン』だ。かわいい絵に騙されがちだが、いたずらとは名ばかりの凶悪犯罪(主に強盗)をするウイルスマンを得意のアンマン字固めでおしおきする絵本原作のアニメだ。
いろいろツッコミ所満載なアニメだが、主題歌が良くて俺のお気に入りだ。キャッチーな歌詞に耳に残るメロディーで、ついつい口ずさんでしまう。勿論、他の歌もうたっているけどな。
相変わらず俺は甘やかされているが、聞き分けの良い幼児なんだから当たり前かと思うようになってきた。歌うのも注意されたら止めているし、TPOは弁えているからな。
そんな感じに毎日楽しく過ごしていると、2歳の誕生日になった。もっとも俺は、いつもより豪華な夕飯のおかずで気づいたんだがな。
誕生日といえばプレゼント、もちろん用意されていた。俺は我が家のアイドルなんだから。
じいちゃんとばあちゃんが玩具のギターをくれた。チャチなつくりだが、6弦あるしチューニングもできる。弦を弾きながら、音を合わせていく。大体しか合わせられないが、仕方がない。何だか興奮してきた。
弾いちゃおっかなあ。弾いちゃおっ!
俺の感覚では2年ぶりのギター、興奮のなかに緊張もあって、テンション爆アゲだ。やるぜっ!俺のロック魂を思い知れっ!
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アンマンマンの主題歌を「オリジナル」「ロック」「バラード」「ボサノバ」「ブルース」等あらゆるアレンジで弾いてやった。いつもそばにいるトラがギターに合わせてニャーニャー鳴いている。
合わせて鳴いている?
マジかっ!思わずトラを見る。
「天才だ・・・」父ちゃんがつぶやく。まさにその通り。トラは天才猫だ。今までも賢いと思っていたが、音楽も理解するとは。俺も、家族みんなもうなずいていたが、父ちゃん達は俺の方を見ている。
「しまった!」俺はまだ2歳だった。2歳児は普通、初めてさわったギターを弾けない。というか何歳でも初めてでは弾けない。
やっちまったぜ・・・