中学教師の呼び出し
警察から帰るときに飯島さんが、今回のことは事務所の弁護士に間に入ってもらうから、相手側が何か言ってきても弁護士を通すように言われた。そして事務所の顧問弁護士を教えてもらったが、前世での知り合いの弁護士だった。かなりのやり手だった記憶がある。
そして翌日、すっかり元の表情に戻った平嶋くんが俺のところに来た。
「昨日はありがとう。助かったし、とても楽しかったよ。」
「お金が返ってきたわけじゃないでしょう?大丈夫?」
「もう脅されないだけでも嬉しいし、昨日の食事会の事はお金に換えられないよ。」
実際、獲られた金額は小中学生にはかなりの大金だったが、平嶋くんが後は大人に任せるつもりなら俺が言うことは何もない。
「それより哲ちゃん会の事は皆に秘密だよね。」
平嶋くんがはなしを変えて聞いてくる。
「騒がれても困るから黙っといてくれる。」
特に秘密にしているわけではないが、家に芸能人目当てで来られても嫌だから口止めする。
「昨日の集合写真を自慢したいけど我慢するよ。」
なんだか平嶋くんが楽しそうなので、そのかわり何時でもセッションしに来てよと誘うととても嬉しそうにしていた。
それから2,3日は何事もなく過ぎていった。本当に何事も、加害者側からの平嶋くんへの謝罪もなく。
俺自身はあり得ないと思っていたが、平嶋くんが、もう関わりたくないらしい。弁護士に任せて結果はどうでもいいと言っていた。これ以上は俺の口出しすることではないので何も言わない。
週末の放課後になって明日の休日は俺の部屋でセッションしないかと平嶋くんを誘ってみた。平嶋くんは哲ちゃん会のことを知っているので家に誘いやすい。平嶋くんも楽しみにしていてくれるようだ。
「マリちゃんがベースの練習を始めたから、平嶋くんも付き合ってよ。」
「木崎さんも楽器を始めるんだぁ。」
「食事会のセッションみたいな事が今度あったら、ベースで参加したいらしいよ。」
俺たちが楽しそうなのに、参加できないのが嫌らしい。
そんな風に雑談しながら下校していると、担任の城田せんせーが俺たちに声をかけてきた。
「中学校の先生がお前たちに用があると言って来てるけど、あの件だよなぁ・・・」
勿論、事件のことは警察沙汰にもなっているので、学校に報告してある。こちらは被害者なので小学校としては、平嶋くんの保護者からの要請がない限り静観すると聞いていた。
「今、来ている先生は俺の大学時代の先輩なんだが、面倒くさい人なんだよな。お前ら大丈夫か?」
城田せんせ―は俺を目の仇にしているバカだけど、基本的には善人なので俺たちの心配もする。こいつの欠点は何度も言うが「人間の器が小さい」だけで、それ以外は常識も良識もある人間だ。
面倒くさい中学校の体育教師、嫌な予感しかしないのでスマホで弁護士に連絡をいれて、大至急こちらへ来てくれるように依頼した。
「平嶋くん、今回の事はもう弁護士が入っているんだから、直接じゃなくて弁護士を通してもらうように言うだけで何も答えちゃいけないよ。」
「それで大丈夫かなぁ。」
「俺たちには、もう決定権がないって言えばいいよ。後は弁護士の先生のどうぞってね。」
平嶋くんは落ち着かない様子だったが城田せんせーの一言で安心したようだ。
「山下くらい生意気なら大丈夫だろう。平嶋は黙って任せておけ。俺も応接室へ連れて行くだけだ。」
平嶋くんが落ち着いたから良いけど、担任なんだから俺の心配もしろよな!




