警察で
俺の事情聴取はすぐに終わった。なにせカツアゲされている友達を助けただけなんだから。
警察のロビーには父ちゃん母ちゃんが待っていてくれた。それと飯島さんの連絡を受けた哲ちゃん会のメンバーも揃っている。
「哲ちゃん!ひどい事されなかった?」
マリちゃんが俺に駆け寄ってくる。機先を制せられた母ちゃんたちは怖い顔をしているが、何も言わなかった。勿論、トラもマリちゃんと一緒に俺に抱き着いてきた。
俺の事情聴取をしたお巡りさんも人聞きの悪いことを言うなと思っているだろうが、俺を取り巻く有名人たちに気付いて黙っていた。
さすがに平嶋くんの方はまだ終わってなくて待っているときに、平嶋くんのお母さんが警察に到着した。
飯島さんがお母さんを確認して、自分たちの知っていることを報告している。さすが「できる女」だ。簡潔にわかりやすく説明している。同じ大人でも下山さんだと、こうは行かないきがする。イメージだけど。
皆が飯島さん達の方に注目しているときに母ちゃんが近づいてきて俺を叱ろうとしたが、丁度平嶋くんのお母さんが俺に礼を言いに来たので叱られずに済んだ。よかったー。
事情が分かって平嶋くんも怪我が無いと聞いて落ち着いたのだろう、ようやく周りの有名人達に気付いたようで驚き慌てている。哲ちゃん会の事を俺の母ちゃんに説明されて理解はしたようだが先とは違う緊張をしている。これは仕方がない。何か言ってあげたいが、俺はマリちゃんに確保されているので出来ない。
ようやく平嶋くんも解放されて皆がロビーにそろった。
平嶋くんは哲ちゃん会のメンバーがそろっているのにすごく驚いていたが、哲ちゃん会の方は普通に平嶋くんの無事を喜んでいるので、食事会でのような笑顔がもどってきた。
ここで詳しい経緯を平嶋くんから聞くことができた。
なんでも今日と同じようにお母さんが残業の日に晩御飯を食べに繁華街に出た帰り、近道をしようとゲームセンターに入ったところを例の小物中学生に咎められ黙ってて欲しければと金を脅し獲られていたようだ。
使わずに残しておいたお年玉から金を渡していたのだが、それもなくなり今日は晩ご飯代として渡されていた金を獲られたらしい。だからお腹を空かせて歩いていたのか。
平嶋くんはこの先、渡すお金も無くなりかなり思いつめていたようだ。本当に今日偶然会えて良かったと思う。
大人には「そんな事で」と思う事態でも、子供には死にたくなるほどの悩みになることがある。まして相手が中学生だと本当に怖かったと思う。
平嶋くんはお母さんに誤っていたし、お母さんも自分たち親の事情で子供に不自由をさせていたことを謝っていた。
謝罪し合うより最悪の事態になる前に、助けられたことを喜ぼう。
いつまでも警察署のロビーを大人数で占拠するのは迷惑だと俺たちは追い出され、今日のところは解散することになった。
結局、俺は人助けをしていたので怒られなかったし、マリちゃんは褒めてくれた。トラも褒めてくれるのか、俺の頭をずっと優しくテシテシしていた。




