こんな感じの毎日です。(幼年期1)
そういえば、スルーしてたけど俺って「哲夫」らしい。前世の「律夫」と音だけ比べれば一音ちがうだけだ。やっぱり突然いなくなった家族というのは皆の心に傷を残したのだろう。その後に増えた子供に、似た名前をつけたのだろう。生まれ変わりとでも思ってしまうのだろう。事実、生まれ変わりだけど・・・
そういう背景も有るので、俺は家族から猫っ可愛がりされている。具体的には、移動は基本抱っこ。お世話も現父ちゃん、爺ちゃんをさておいて、母ちゃんとばあちゃんが付きっきりだ。父ちゃん爺ちゃんが侘しくカップめんで夕食を済ませているのを見たときは、心が痛んだもんだ。
今の俺は、お座りもハイハイもできるんだが、背後には常に誰かいる。主にばあちゃん。
息子を亡くした悲しみから、孫に執着しているのだろう。家族もそれを知っているから何も言わないが、母ちゃんは負けずに俺に構う。俺を取られるとでも思っているのだろうか?
おかげで二世帯住宅に改造された家にもかかわらず、家族みんなが一階のリビングに集合している。
リビングの中央にソファーセットがあり、一番いい場所に俺と俺を構う母ちゃん、ばあちゃんがいる。父ちゃんとじいちゃんは、それを微笑ましく見ながら寛いでいる。
やはり精神は肉体に引っ張られるのか、35歳の意識があるのに周りに誰もいないと不安になる。それに大人になると辛いことがあっても母親に甘えたりできないけど、赤ちゃんなら甘えほうだいだ。
俺だけデビューできなかったうえに殺されたりした記憶をもつ今は、母ちゃんとばあちゃんに甘えまくっている。勿論、じいちゃんにも愛想を振りまいているが、父ちゃんだけは微妙な感じだ。
なんといっても父ちゃんは前世の弟だから、急に目上になられてもピンとこない。むしろイラつく。
しかし、父ちゃんに距離をとっていたせいか、父ちゃんが最近落ち込んでいる。
元々、兄弟仲が悪かった訳ではないので、ここは俺が大人になるべきだろう。時々、笑いかけたり座っている父ちゃんの膝に登ったりしていたらすぐに機嫌が直ったが、今度は父ちゃんまで俺を構おうとするので正直ウザい。距離感が難しい。でも俺は赤ちゃんだから、気分次第で無視をしても、ご機嫌ナナメでおしまいだ。簡単でいい。