「ただいま!」生まれ変わったら実家だった。
「ものごごろがつく」とかよく言うけど普通はどの時点を指すのだろう。今の俺のように前世の意識を明確に持っているケースは珍しいのではないかと思う。なんせ一歳になったある日突然すべてを思い出したんだから。
昼寝から覚めた俺を見ている中年女性の事を母ちゃんだと気付いて、軽くパニックを起こしてしまった。
「オンギャッーオンギャッー(あれどういう事、何で母ちゃんがいるの?」
「オンギャッーオンギャッー(何で俺泣いてるのっ、てか俺赤ちゃんじゃん!」
「いったいどうしたんだい、私の顔を見たとたん急に泣き出したよ。大丈夫ですよ、おばあちゃんですよ。」
泣いていると、母ちゃん(現祖母)が少し悲しそうな顔をした。確かに孫が自分を見てギャン泣きしたら、凹むだろう。少し冷静になった。罪悪感が湧いたので、サービスしておくか。
「ばあば?」
「!!そうだよっ!ばあちゃんだよっ!幸枝さんっ!哲夫ちゃんが喋ったわよ!」
凄く興奮しはじめた。母ちゃん(現祖母)が俺を抱き上げて頬ずりをはじめる。どうも俺は初めて喋ったらしい。
キッチンに居たらしい今世の母ちゃん(ややこしい)が俺の元にやって来た。テンション爆上げのばあちゃん(ややこしいのでこうする)の脇から俺に話しかける。
「ママよ、哲ちゃんママよー」
バカっぽいけど必死なので今世の母ちゃん(今後、母ちゃんとする。)にもサービスする。
「マ、マ。」
「きゃー!お義母さん聞きました?ママって。」
収集がつかない程、興奮している二人は放っておいて現状確認をしよう。再度、喋らせようとしているがサックリと無視しておく。
抱き上げられることで、周囲を見渡すことができた。懐かしの我が実家だ。前世で死ぬ少し前に健(前世で弟)が結婚するというから、一人暮らしをして以来だ。
二世帯用に改造されているようだが、今いるリビングは覚えているままだ。
あれ?て事は母ちゃんが健(弟)の嫁になんの?弟が今世の父ちゃんになんの?違和感バリバリだな!
弟を見たら吹き出すかもしれんな。まあとにかく、おかしな死に方をしたのに、もう一度家族と暮らせるんだ。ありがたい。
俺はばあちゃんと母ちゃんに聞こえないように呟いた。
「たらいみゃ。」