その後の幼児期(幼年期LAST )
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レコーディングでは予定外に俺の新曲が採用された。歌詞を後日、下山さんが作ってから録音したので、俺は立ち会わなかった。
かわりに下山さんの事務所から「THEできる女」って感じの飯島さんが契約書を持ってきた。
前世で弁護士事務所の手伝いもしていたので、契約書の確認をしたかったが誰も幼児に見せようとは思わないらしい。
「哲夫ちゃん、ダメよ。これは大事なものなの。」
横から覗こうとしても、汚すと思われて契約書を遠ざけられてしまう。まぁ、話を聞く限りおかしいところは無さそうだ。
著作権の管理や印税のことばかり気にしていたから聞き漏らしていたけど、俺自身も事務所に所属するらしい。
2才児の体力ではスタジオミュージシャンは無理だろう。けれども自分の事務所の所属タレントに無茶はしないだろう。
父ちゃんと母ちゃんも一所懸命、契約書を読んで飯島さんに確認して納得してから契約をしたようだ。大事な息子のことだからね。
事務所に所属してもギターを演奏するような仕事は入ってこなかった。かわりに田所さんや最近プロデュース業も始めた下山さんから、作曲の仕事が入るようになった。2才児に無理させないように、事務所が調整していてくれるようだ。
田所さんの仕事には、前世でも関わった男性スーパーアイドルグループ「スパーク」もあった。
仕事だろうと遊びだろうと、俺が毎日ギターを弾いてトラが歌っているのは変わらないので、半年ぐらいは家庭内に変化は無かった。
だけど下山さんとスパークの印税が入ってきて、父ちゃんとじいちゃんが落ち込んだ。
数百万円単位のお金が夫々に支払われたからだ。収入で2才児に負けるとは思わなかったんだろう。ごめんなさい。
母ちゃんは事務所から確定申告のことを聞かされ、父ちゃんたちも目に入らないくらい不安になっている。
混乱する家族を見て、ばあちゃんはため息をついた。
けれど父ちゃんたちが落ち込む必要はない。売れている理由は下山さんとスパークの力だ。彼らの人気ありきの売上だから、浮かれることもない。幼児じゃ使えないしね。
結局この年は一千万円には届かなかったけど、かなりの収入があった。2才児の俺にはただの数字なので、あまり気にならない。母ちゃんも使うつもりはないようだけど、お金に余裕があると心にも余裕ができるようできげんが良い。
父ちゃん達も今は俺に敵わないまでも負けないようにと、仕事を頑張っている。心配しなくても印税なんて運みたいなもんだから。
ばあちゃんが俺に護身術のために合気道を習わせた。大金を稼ぐ俺を狙うやつがいないとも限らないので心配したのだ。
我が家の変化はこのくらいで、時間はゆっくり流れている。仕事も順調だ。(もう父ちゃんには収入を教えていない。)
そして俺は、10才になった。




