プロローグ 夢叶わずに死んでしまいました。
書き溜めも無いので、続きが遅くなりますがよかったら見てください。
俺の名前は山下律夫、ロックスターを目ざす35歳だ。今日、俺の所属しているバンドがメジャーデビューすることが決まった。俺以外のメンバーで・・・
確かにビジュアル系と言われるほどのメンバーの中で、太って地味顔の俺は浮いていたかもしれない。
しかし、楽曲のほとんどは俺が作っているし、ギターの腕前の評価も高い。つまりバンドの音楽性は俺が中心なんだ。なのに・・・
バンドのリーダーでボーカルのKYOから説明を受ける事になった。近所のファミレスで待ち合わせているので訪れると、KYOUは既に待っていた。脚を組んでスマホをいじっている姿だけで絵になっている。周りの女性たちもチラチラとKYOUの様子を伺っている。俺が来たことに気づいても目だけで合図を送ってくる。このあたりが俺と違うのかと思う。俺なら手を挙げて「こっちこっち。」と騒いでるところだ。
「悪いな、こんな事になって。」
そう話すKYOUは俺よりも苦しそうだ。こいつの性格からして、簡単に仲間を切り捨てたりしない。随分と事務所と交渉もしたのだろう。そんなKYOUの姿を見て、俺の中でモヤモヤしていたものがストンと落ちた気がした。
「気にするな。これからは趣味じゃない、仕事だ。売れる為には必要なんだろう。」
「すまない・・・」
KYOUの目には涙が滲んでいる。もし、俺がごねたらこいつはデビューを取り止めるだろう。プロになったら楽しいとか仲が良いとかだけではやっていけない。大人が生活をかけて係わってくる。甘い事は言っていられない。
そこからは、昔ばなしをしたり音楽の話をしたりして友人として会話を楽しんだ。いつの間にか夜もふけて、店の客も俺たちだけになっていた。
今後も俺からバンドに楽曲提供することを約束して、俺は店を出た。
実は俺の記憶はこのあと、大通りから路地に入ったところで途切れている。誰かに後ろから後頭部を殴られたんだ。俺が最後に感じたのは、自分の体から体温が失われていく感覚だった。やばい。父ちゃん母ちゃん、健(弟の事)。家族の姿が頭に浮かぶ。しかし、もう何も見えないし、聞こえない。
どうやら俺は死んだようだ。